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第三十話・魔法修行・前編

ヴァイスとミルクと協力して小冷孔を開放したことで

俺も晴れてブロンズバスターからシルバーバスターになることが出来た。

そして俺達のチーム名が【オープンドシール】に決まった。

大いなる目標に一歩近づいたという感じだ。

俺達は小冷孔の核とそれに伴うアカウントの

売却手続きをしたのだが……

ギルドのおじいさんの話では小冷孔の権利と核に

見合うだけの代金は今この支部の金庫には無いので

お金をバスターズギルド本部から引き出さなければならないらしい。

そのため、また日を改めて一週間後に来て欲しいと言われた。

日本でも似たようなことがあったような気がするなあ……何だっけ。

あ、そうだ思い出した。

日本の銀行でも高額の引き落としの時は事前連絡が必要と聞いたことがある。

それと同じケースで、俺達が一気にお金を引き出すと

一旦このギルドの金庫が空になると他のバスターの換金業務が滞るもんな。

そういうわけで俺達はバスターズギルドを後にした。

「で、これからどうするの?」

ミルクにそんな事を尋ねられる。

「時間に余裕があるのなら俺は魔法の訓練がやってみたいな」

俺はそんな事を口にしていた。

「魔法の訓練か……そうだな、それも良いかもしれん。

雪平の魔力も上がった事だしな」

「怪物狩りも良いけれどこういう訓練も必要よね。

お金が入らない事には装備の新調も難しいし……

あ、そうそう、私も個人的に練習したい魔法があるのよ」

「それじゃ、決まりだな」

そういうわけで、俺達はタジンの町外れの空き地に移動した。


 ††††††††††††


タジンの町外れにはちょっとした訓練場っぽい所がある。

城壁に程近い空き地には

剣で傷だらけになった丸太や

枯れ草を太い束にして弓矢を射込める的のような物も散乱している。

初めて町に着た直ぐの頃は

俺も此処でヴァイスに訓練をつけてもらった事を思い出す。

「さて、魔法か……非常に多岐に渡るが

何処から説明したものかな……」

ヴァイスが腕組をしながら少し考え始めたところでミルクから質問された。

「あ、そういえば雪平」

「おう」

「属性って覚えてる?」

「えーと、火、水、風、土、雷、木、光の七つだったかな。

それぞれの属性を持った神様が居るって聞いた気がする」

ミルクはにっこりした。

「よくできました。それぞれの種族を守護する神様が司っている属性は

魔法を覚えようとする時は無視できない要素だからね」

「ふむふむ……」

「他の属性の魔法も頑張れば覚えられない事もないんだけど

初心者はやっぱりその種族を守護する神様の属性に合わせていった方が覚えやすいわ」

そのミルクの言葉にヴァイスが付け加えた。

「確かにな。俺は鬼人族では無いが雷の魔法を主に使っているが……

他の属性に手を出すには一通り魔力の操作に慣れてからの方が良いだろう」

アニキは何時も雷の魔法使ってるもんな……

「えーと……人間族を加護してるのは火のファジーンだな……

ということは俺は火の魔法の練習から始めた方が良いのか」

「そうだな。火の属性の魔法が一番人間に向いているとされている」

「属性だけじゃなくて各種族ごとに七大魔法体系ってのがあるんだけど……

それの説明はとりあえず後回しにした方がよさそうね。

一辺に詰め込んでも覚えられないだろうし……」

属性だけじゃなくてそういう種族ごとの魔法もあるのか……

思っていた以上に覚える事は多そうだ。

「それじゃ、私は向こうの方でちょっと詩歌魔法の練習をするわね。

実戦で使える魔法を増やしておきたいし」

「おう、一緒に頑張ろうぜ」

「あんたの方がおそらく大変だろうから気合入れなさいよ」

ミルクは暫く離れたところで歌うような旋律を乗せた魔法を練習し始める。

俺はヴァイスに魔法を教えてもらう続きだ。

「それでは雪平には火の初歩攻撃魔法【炎弾】あたりを

覚えてもらうことにするか……火炎の弾を相手にぶつける魔法だ。

まずは見本を見せよう」

そういってヴァイスは空き地の端にある大岩の方を向いた。

「あの岩に炎弾を当てる事が目標だ。

まずは極一般的な詠唱を覚えて実践してもらう事にする」

ヴァイスは掌を大岩に向けると、ゆっくりと詠唱し始めた。

「……熱き炎よ、我が内外に満ちる魔力よ……」

本来ならヴァイスはもっと早く魔法を唱える事が

出来るはずなんだけど態々ゆっくりやって見せているのは

俺に分かりやすく手本を見せるためだろう。

ヴァイスの手元におぼろげながら力のうねりが集まっていく事を感じる。

力、魔力のうねりがヴァイスの掌の前の大気を熱し始め……

やがて陽炎を生み、それは掌に収まるほどの小さな炎の玉へと姿を変える。

「集いて敵を討つ矢と成せ……炎弾」

詠唱を終えた瞬間炎の玉が矢のように大岩に向かい……

着弾の瞬間に爆ぜて炎の柱を上げる。

火が収まった時には大岩は見事に黒焦げになり

岩の鋭い端の一部は微かにだが赤熱した溶岩のように溶けているようだ。

「すげえな……」

この魔法が覚えられれば遠距離でも戦えるようになる。

さらにヴァイスの説明は続いた。

「ちなみに詠唱や技の名前を叫ぶのは集中の一助と味方の巻き込み防止の利点がある。

対人だとどんな技を使うか分かってしまうから隙だらけになるが

怪物はこちらの言葉など分からない」

あー。良く漫画とかアニメとかでキャラが技の名前を大きく叫んでいる事があるけど……

此処の世界ではそういうのが格好つけ以外の利点が存在するんだ……

自分に暗示をかけたり味方に注意を促して巻き込みを避けたり……

これは目から鱗だぜ……

「また、詠唱の文節にはそれぞれ意味があり、術式には流れがある。

一般的には魔力収束、属性指定、対象指定、形状指定、発動。

魔力を集め、属性を決め、対象を指定して

攻撃魔法なら刃状や球のなどの形状や術の方向性を決め……

最後に術の名前を呼ぶ事で発動する。

詠唱を簡略化、省略する方法もあるが今の段階ではまだ早いな」

「なるほど……」

「……やってみろ。しっかりと結果をイメージするのがコツだ」

「お、おう……熱き炎よ、わ、わが内外に満ちる魔力よ集いて敵を討つ矢と成せ……炎弾!!」

どうにもこの詠唱って奴が俺には合わないなあ……

なんと言うか鯱張った長台詞が小難しいし恥ずかしい。

それに舌をかみそうだ。

「あっ!!」

俺の手から煙が出ただけで終わった……

失敗か……最初から上手く良くとは思っていなかったが……

「あ、あれ……?」

何だ!?急に体力がごっそり引き抜かれたような……

凄い疲労感と倦怠感に包まれた……

体がだるい……なんでいきなり疲れてるんだ俺……!?

「な、なあヴァイスのアニキ……魔法って重労働なんだけど……」

「……生命力と精神力と魔力が分離できていないな……

此処は開かれた冷孔だから普通に大気に魔力が漂っているはずだ

神経を研ぎ澄ませて集中すれば体内の生命力と魔力は分離できる。

もっと外にある魔力と内側にある魔力に注意を払え。

外の魔力と同じ物を体内に見つけて、体の中の力を選り分けるんだ」

ええと……外側に漂っているのが魔力で……

まずは俺の内側にある力からこれと同じ奴を探さなきゃ……

思っていた以上に大変だぞこれは……

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