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第二十三話・小冷孔の戦い・中編

俺達は冷たい大気の戦場を駆け抜ける。

「これで……!残りはボスだけだ!!」

俺は大上段に振りかぶった大剣を

思い切り力を込めて振り下ろす。

大芋虫の怪物ガルは胴を半ばから切断される。

程なくして死んだ怪物の体液も組織も赤茶けた砂に変わる。

残るのは小さな薄黄色の核だけだ。

皆の活躍もあって取り巻きは大体片付けた。

「しかし……あれが相手かよ……」

取り巻きの怪物がやられてると言うのに

小冷孔に陣取って動かないそれは……

一言で言うなら大型トラックくらいはありそうなクワガタムシだった。

俺の持つ大剣が小さく見える凶悪な二本の大顎。

しかも磨いた刃物の様に鋭利さを備え

異形のはさみの様に交差して閉じたり開いたりしている。

挟まれたら鎧を着けていようが関係ない。

間違いなく上半身と下半身が泣き別れる。

それどころか電柱だろうが家屋だろうが真っ二つにしそうだ。

「で、どーすんだよ?」

「正面は俺が行こう。

ドミンの大アギトは非常に広い前方攻撃範囲を持つが死角が無い事はない」

躊躇い無くヴァイスは一番危険な場所を選択した。

「俺はマリウスの時と同じで脚を叩き切ればいいんだな?」

「そうだ、ミルクは雪平とは逆側の足を魔法で狙え」

「任せといて!」

「機動力さえ奪ってしまえばドミンも

マリウスと同じでそう怖い相手ではない……

……では、始めるぞ!散れ!!」

ヴァイスの合図で俺は右に駆け出し、ミルクは左に散る。

「雷刃!」

ヴァイスの魔法が戦闘を開始する狼煙となった。

ヴァイスの剣先から迸る雷撃を受けても大クワガタムシの怪物

ドミンは僅かに仰け反っただけでそう大したダメージを

受けているようには見えない。

ヴァイスの魔法はあくまで敵を引きつける為のものだろう。

ミルクが飛翔しながら俺とは逆方向

左右三本、計六本の怪物の足に狙いをつけた。

「速き風よ、我が神の名の下に集いて敵を討つ刃となせ!風刃!!」

ミルクの唱えた風の魔法は狙い違わず怪物の左側の中足に当たる。

だが傷つきはしたが切断するまでには至らない。

「かったいわねー!!」

「俺も負けてられねえな!!」

ヴァイスが正面で敵を引き付けてくれている。

大アギトが物凄い速さで彼を両断しようと閉じられるが……

ヴァイスは引くのでも左右に交わすのでも飛ぶのでもなく

姿勢を低くして怪物の口元の直下に滑り込んでいた。

ドミンの大アギトは空しく宙を斬った。

「あそこが死角かよ!!」

体が大きすぎて大アギトの死角が出来る事は

理屈では分かるがあえて前に飛び込むには

とんでもない度胸が居る。

アニキだけに負担を掛けるわけにはいかねえ!!

俺は怪物の右側中足目掛けて走りこみ……

「おおおおおおおおおおおっ!!」

全力で大剣を横に振り抜く。

甲高い、金属と金属がぶつかる音が辺りに鳴り響く。

――っ!!

手ごたえがおかしい!!

「叩き切れてねえだと!?」

ドミンの中足に剣は三分の一ほど食い込んではいるものの

叩き斬るには至って居ない。

俺の切り込みに不備が有ったとかそういうわけじゃない。

単純にこの怪物が硬いのだ。

振りの速度を重視した横切りとはいえこの大剣だぞ!?

なんて硬さの外骨格だよ!!

「なら振り降ろしを……!!」

食い込んだ大剣を乱暴に抜き払い……

大剣を担いで……!!

くそっ、この時間が酷くもどかしい!!

「ぶった斬れろぉぉおおおおぉぉぉぉ!!」

全力のタメを含んだ唐竹割りを放つ。

狙うのはさっき三分の一斬り込んだ部分に向けて!

バキッ!!と音を立てて奴の中足が圧し折れる。

「やったぜ!!」

「雪平――!!踏み込みすぎだ!!」

ヴァイスの大声がこちらにも聞こえた。

「なっ……!!」

怪物の巨大な体躯には似合わぬ棒のような足が横から迫っている。

防御を……剣を構えないと!!

「がっ――!!」

腹部に物凄い衝撃が走る。

俺は、大剣ごと吹っ飛ばされて宙を舞った。

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