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【完結】貴方が要らないとおっしゃった馬鹿な女はもう居ませんのでご安心ください  作者: にがりの少なかった豆腐


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この噂はまずいです

 

 数日続いた試験期間も終わり、気を張っていた学生たちも結果が出るまでの間、しばし緊張から解放されてすがすがしい雰囲気を醸し出していた。


 教室の中には試験の手ごたえが悪く落ち込んでいる生徒もいるが、最低限の成績を取っていれば学園を卒業することはできるため、学力面での成績を諦めている学生も少なからず存在している。


 そもそも学園自体、貴族として最低限の知恵と教養を身に着けるために設立されたもので、試験はあくまで優秀な人材を探し出すためのものだ。


 しかし、試験にあまり力を入れていない生徒は、嫁ぎ先が決まっていたり、領地内で就く職がすでに決まっていたりする卒業後の進路があらかじめ決まっている者たちだ。

 そして、それ以外の者たちにとってこの試験は、少しでもいい未来を掴むための重要なものだ。


 この試験でいい結果を残せばよい嫁ぎ先や王宮内などの仕事を斡旋してもらえることがあるため、必死に試験に臨む者が多い。 

 

 ベラは今回初めて全力で試験に臨み、自身で感じた手ごたえは上々だった。

 これならエリオットの期待にも応えられたのではと、晴れやかな気持ちでベラは数日後に出る試験結果を楽しみにしていた。


「あのアルコットさん、今よろしいでしょうか」

「はい、大丈夫ですよ。タニアスさん、何か用事ですか?」


 普段使っている席が近いため話すことの多い女生徒、コニア・タニアスがベラの元へ訪れ声を掛けて来た。


「聞きたいことがありまして」

「なんでしょう」


 試験も終わったため、試験内容の答え合わせでもしたいのだろうか、と考えながらベラはコニアの質問を待つ。


「試験4日前の放課後、図書室に居ましたか?」

「はい。そこで勉強をしていましたので」


 少し神妙な表情でかつ、小声でそう聞いてきたコニアにベラはそのまま、素直にそう答えた。


 試験内容であれば自信をもって答えられたのにと、想定していた質問とは違う内容に少し落ち込みながらも、どうしてそのようなことを聞いてくるのか、理由が分からずベラは小さく首を傾げた。


「……そうですか」

「何かあったのでしょうか」


 やはりいつもと様子の違うコニアが気になり、ベラはそう質問を返す。


「えっとですね、あの。…アルコットさんが図書室でエリオット王子に詰め寄られていたという噂を耳にしまして」


 周囲に聞かれたくないのか、コニアはベラとの距離を少し詰め、さらに小声でそう問いかけてくる。それを聞いたベラは眼を見開き、近くに居るコニアにも聞こえないほど小さく息を飲んだ。


「え、え?」


 今まで一切そのような噂を聞くことがなかったベラにとって、この質問は寝耳に水だった。

 今までの晴れやかな気持ちは吹き飛び、ベラは表に出すことはなかったが焦燥感に駆られていた。

 試験前の図書室、確かに利用していた生徒の数はいつもよりも多かった。閉室直前だったとはいえ、いつもとは違う生徒が居る状況で、エリオットと話している生徒がベラであることに気づいたのだ。


(あの時、誰かに見られていたということですよね。人が少なくなっていたので大丈夫だと思っていましたが、いつもと違う方が増える状況でエリオット様と会えば、私のことを知っている方がその場に居てもおかしくはないですね)


 気づいたのは1回生の時にベラと同じ授業を受けていた男子生徒であったが、噂として流れてしまっていればそんなものはもう関係ない。

 それと噂の内容では、おそらくその場をよく見ていなかったのか、噂が流れて行く過程で内容が変質したのか、ベラがエリオットに詰め寄られていたと良くない雰囲気に捉えられているのも、今のベラにとってあまりいいことではなかった。


 エリオットの関係している噂で自分の名前が出てしまっている。しかもエリオットが悪く捉えられるような噂だ。それがベラにとって最悪と言える部分だった。


「アルコットさん、実際のところはどうなのでしょうか」


 噂が気になっているが、知り合いであるベラのことを心配している様子でコニアは静かにそう聞いた。


(とりあえず否定はしませんと、エリオット様に迷惑をかけるわけにもいきません)


 この噂のせいでエリオットに迷惑をかけるのは避けたいと考えたベラは、返事を曖昧にぼかしつつ、事実と異なる部分はしっかり否定することにした。


「私が図書室でエリオット王子に詰め寄られていたという事実はありませんので、おそらく別の何かの噂が人づてに伝わっていく中で、内容が変わってしまったのかもしれませんね」

「そ、そうですよね!」


 そう答えたベラの様子に少し違和感を覚えながらもコニアはそう返事をし、ベラの元から離れて行った。


 コニアが離れて行ったことでベラは安堵で息を吐いたが、その際周囲の目がこちらに向いていることに気が付いた。

 今コニアに聞いた噂が周囲に広まっていると気づいたベラは平静を保ちながらも、これからどうするべきか、どう動くべきかを考える。


(これはまずいですね。下手にこの場から去ると先ほどタニアスさんに否定した内容がさらに歪んで伝わってしまうかもしれません。これは一旦、反応しないのが正解でしょうか)


 このまま教室を出て行けば、さらに変な勘繰りをされてしまうと判断したベラは、次の授業が始まるまで教室内で静かに待機することにした。

 

 明日の更新から1日1話 朝の更新になります。

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