↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】貴方が要らないとおっしゃった馬鹿な女はもう居ませんのでご安心ください  作者: にがりの少なかった豆腐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/27

貴方が要らないと言った女はもう居ません

 本日2話目になります。

 まだ本日の朝の更新分を読んでいない方はご注意ください。

 

 セケット公爵家が養子を取った。

 その噂話は普段から情報収集に力を入れている家の間で最近よく耳にする情報だった。公爵家が養子をとること自体稀なことだが、それ以上に王族と繋がりを強化するために養子を取ったという信憑性が不明な情報も流れてきていた。


 その話を実家から重要な情報として伝えられていたイシュカは、今公爵家が養子を取ったという噂が本当だったことを理解した。

 ここまでざっくりとしかベラの姿を見ていなかったイシュカだったが、名前を聞いてからよく見てみるとドレスの胸元にセケット公爵家の者しか身に着けることが許されていない装飾品が付いていたのだ。


 イシュカは内心非常に焦った。それを表情には出さないように努めはしたが、さすがの事態に隠しきれずベラがすぐ気づく程度に顔色が悪くなっていた。


(これはまずいわね。よく考えてみればこの席は上位貴族が使う予定と言われていた場所じゃない。まさか、あの噂の相手がゴードンの元婚約者だったとは想像していなかった。いやできるわけがない)


 元子爵家の者が公爵家の養子として受け入れられ、さらに王族と婚約するなど誰が想像できるのか。しかも、イシュカにとって現婚約者のゴードンから一方的に婚約破棄された者がその噂の人物だと想像するのは難しいだろう。


(すぐにここから離れたほうがいいわ。幸い相手は私たちの言葉を無視してくれていたようだし、今ならまだどうにかなるはずよ)


 今すぐにこの場を切り抜け離れよう。先ほどの発言から相手も今までの話を聞いていないことにしてくれていると理解したイシュカはすぐそう判断を下した。


 ゴードンもセケット公爵家のことは知っている。しかし、ゴードンはベラに初めましてと言われた衝撃で、ベラがセケットと名乗った部分を聞き逃してしまっていた。

 おそらくしっかりベラの言葉を聞いていればセケットという名前に反応することはできたはずだ。


「いや、初めましてのわけがないだろう」

「いいえ、初めまして、ですよ」

 

 自分のことをなかったことにしようとしている、そう感じたゴードンの怒気の孕んだ言葉にベラはやんわりとした笑みを浮かべ静かにそう返事をした。


「ゴードン」


 イシュカはベラに対し喧嘩気味に話しかけ始めたゴードンを止めに入る。しかし、その制止ではゴードンを止めるには至らず、さらに言葉を続けてしまった。


「ああ、そう言うことか。新しい婚約者を見つけたから昔の婚約者のことはなかったことにしたいのか。もしやお前の新しい婚約者は潔癖か何かか?」

「ゴードン!」

「…なんだ?」


 止められなかったゴードンの言葉を少しでも遮ろうとイシュカが大き目の声で名前を呼んだが間に合わず、むなしくもイシュカの声は周囲から視線を集めるという逆効果を生んでしまった。


「貴方はもう!」

「本当にどうしたんだ?」


 思った通りに行かずイシュカはゴードンに対して怒りをぶつけるが、突然イシュカに怒鳴られたことで困惑しているゴードンを見てイシュカは内心頭を抱えた。


 口に出してしまった言葉を元に戻すことはできない。

 言い切ってしまった。しかも、目の前にいる公爵家令嬢の婚約者をけなすような発言だ。


(本当に最悪)


 最初はちょっと揶揄うくらいならいいだろうと軽い気持ちでベラに話しかけていたイシュカだったが、それが最悪の選択をしてしまったことを自覚した。ゴードンの嫌味に乗ったのはイシュカだったが自己紹介をした後、時間もないからとこの場を離れるのが正解だった。


(ゴードンのことは後で考えないと駄目ね。ようやく見つけた婚約者だったけど、これは損切りも考えておかないと)


 イシュカは未だに目の前の女が公爵家の者だと理解していない婚約者を切り捨てることを検討し始めた。


 自分がしっかり名乗っているのにも関わらず、これまでと同じような反応を返してくるゴードンにベラは内心首を傾げていたが、ここまで来るとゴードンがセケットの名に反応していないことに気づいた。


 どのような反応を返すのが正解なのか、考えた結果ベラはそのままゴードンに対して、初めましての説明も踏まえ、もう1度名乗ることにした。


「気づいていないのか、それとも気づいていないことにしたいのかはわかりませんが、貴方が過去、要らないと言ったベラ・アルコットという女はもう居ない、そういうことです。

 今の私はベラ・アルコットではなく、ベラ・セケットという名の女なのですから」

「は? え、セケット?」


 ここでようやくベラがセケットと名乗っていたことに気づいたゴードンが事の重大さに気づき顔色を悪くする。

 

「そろそろ時間ですね。このまま話していると周りの方にも迷惑になってしまいますし、お二人もそろそろ着席した方が良いでしょう」


 さすがにこれ以上長引くと卒業式が始まってしまうため、ベラは強制的にこの話を終わらせた。

 ゴードンもイシュカもそれに便乗し、話を終わらせこの場から立ち去ろうとベラに対し別れの挨拶をした。


「え、ええ。そうですね。お話ありがとうございます。セケット様。行きましょうゴードン」

「ああ。そ、そうだな」


 ゴードンとイシュカはそう言うとホール内の席に移動はせず、ホールの外に向かって移動しようとした。

 

 卒業生が卒業式に出るのは絶対の強制というわけではない。参加が難しい場合などは参加が免除されるため、これまでも卒業式に出席していない卒業生は居た。

 イシュカの場合は参加が難しいとは少し言い難いが、周囲から悪い意味で注目されてしまっている現状を見れば、自業自得とはいえ、おそらく2人の行動は学園側から許可は出るだろう。


「ああ、そうです。先ほどの貴方の発言ですが、さすがに見過ごすことはできませんので、私の婚約者へ報告させていただきますね」


 この場から逃げ出そうとしていた2人にベラはそう伝えた。

 そのベラの発言を聞いた2人の表情からさっと完全に血の気が引いたことが分かった。

 

 そうしてベラの発言を聞いた2人は言葉を返すこともなく、ホールの外へ逃げるように出て行った。

 

 これで最後の締めに入ります。

 後数話ですが最後までお付き合いしていただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。