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【完結】貴方が要らないとおっしゃった馬鹿な女はもう居ませんのでご安心ください  作者: にがりの少なかった豆腐


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養子縁組の説明です

 本日2話目になります。

 まだ本日の朝の更新分を読んでいない方はご注意ください。

  

 ベラがエリオットの申し出を受け入れてから少し。2人はまだ談話室の中に残っていた。


「エリオット様は予定の方は大丈夫なのですか? 朝約束を取り付けに行った際、何かありそうな反応をしていましたが」

「よく見ていたな。だがそれは大丈夫だ。入っていた予定は動かせるものしかない。むしろここ数日分は何があってもいいようにそういった予定の物しか入れていないからな」


 早めに返事をして欲しいと自ら言った手前、予定の影響でベラからの返事を聞くことが出来ないという事態を避けるために、エリオットは事前に動かしにくい予定の物を優先して処理していた。


「それならよいのですが、無理に付き合っていただかなくてもいいのですよ」


 2人が談話室に残っているのはこの後来るルカを待っているからだ。

 ベラがエリオットの婚約の申し出を受け入れた以上、いずれセケット家へ養子として向かうことになる。

 その前段階の話し合いをするためにルカを呼び出していた。


「いや、君の養子縁組については私にも関係していることだ。私も内容を知っていた方がいいだろう」

「そうかもしれませんけれど」


 これまでベラと図書室で会っていたエリオットだが、学生でありながら王族としての職務が存在しているため、本来は多忙な存在のはずなのだ。

 図書室へ来ていたのも短い自由時間を使っていただけで、暇だからベラの元へ来ていたわけではない。


「入ってもよろしいでしょうか」


 ルカが談話室の前に到着したらしくドアの向こうから入室の許可を取る声が聞こえて来た。


「入っていいぞ」

「今開けますね」

「ああすまない。そういえば鍵をかけていたな」


 誰かが入ってこられないように鍵をかけていたドアを開け、ベラは外で待っていたルカを招き入れる。


「アルコットさん、ありがとうございます」


 ルカは談話室の中に入ってくると迷うことなく先日使っていた椅子に座った。


「アルコットさんとエリオット王子の婚約、婚姻のためにわが家へアルコットさんが養子に来るというもので合っていますか?」

「はい」

「ああ」


 ベラとエリオットはルカの話を聞いて、同意するように小さく頷いた。


「私も家から直接話を聞いたわけではないので、エリオット王子の持っている情報と齟齬がありましたらご指摘ください」

「わかった」


 ルカもセケット家に戻って直接話を聞いたわけではないため、詳しい情報のやり取りはできていない。

 とはいえ、親であるセケット公爵からできる限りベラのことを助けるように言われているため、ルカは伝えられた情報をしっかり読み込み、準備をしたうえでこの場に来ている。


「アルコットさん、いえ、ここはベラさんとお呼びした方がいいですね。ベラさんとセケット家が正式に養子縁組を結ぶのは今年度の最終試験が終わった後になります」

「はい」


 今は今年度もようやく折り返しに入ったくらいの時期だ。ここから最後の試験が終わるまでとなると半年近く時間が空く。

 ベラがエリオットの申し出を受け入れたのであればすぐにでも養子縁組の話を進めて問題はないはずだ。

 しかし、そうしないのはセケット家側の条件が絡んでいた。


「ベラさんがセケット家の養子になる条件として、セケット家から2つほど条件が出されています。その内の1つは今後の試験で高順位を収めることというものがあります。これは総合順位が5位以内であればよいと私は聞き及んでいますので、この前の試験の様に点数が取れていれば問題はないでしょう。

 もう一つが学園内で問題行動をしないこと。ベラさんの性格なら心配はありませんが、何かに巻き込まれる可能性は否定できません。これは気を付けてくださいとしか言えませんが、何が起こるかわかりませんからね」


 セケット公爵からベラに提示された条件は易しいものだった。

 この条件、要は公爵家の養子になる以上、公爵家の娘としてふさわしい成績を取りなさい、そして変な問題を起こさないようにしなさい。というだけのものだ。


「他に条件などは」

「そうですね。条件というわけではありませんが、公爵家の令嬢としての所作などは覚えてもらう必要はあると思います。これは私から教えることが出来ますので、いつか時間がある時にでもやりましょうね」

「お願いします」


 それからいくつか養子縁組についての話をし、養子縁組に関係するこれからの段取り、エリオットの婚約者として必要となる技能の習得など、ベラはルカに質問をし、ルカはそれに丁寧に答えて行った。

 


 ルカから養子縁組の説明が一通り済んだところで、3人は一息ついていた。


 エリオットは今日本来あった予定をすべて翌日以降に調整していたためこの後の予定はなく、ルカはこの後の予定まで時間を潰すため、そしてベラはただ単純に立場を考え自分が先にここから離れるべきではないと考えた結果だった。


 婚約の申し出を受け入れたとはいえ、王族であるエリオットと公爵家の令嬢であるルカの間に挟まれる形で座らせられているベラは少し落ち着かない気持ちになっていた。


「受け入れてもらえてよかったですね」

「本当にな。今朝、アルコットが教室まで来たときは最悪の展開が頭をよぎった」

「そ、そうなのですか」

 

 思っても見なかったエリオットの言葉にベラは驚く。しかし、ベラの普段の様子を知っている者が今朝のベラの様子を見れば、そう感じてしまうのも無理はなかった。


「今まで見たことのない真剣な表情だった。アルコットとの付き合いはまだ短いが、あのような表情を見たのは初めてだったのだ」

「確かに今朝のベラさんの様子は覚悟が決まっている感じでしたね」


 エリオットの教室から戻って来たベラの表情を見た、エリオット以上に付き合いの浅いルカからしても、今朝のベラは様子はおかしく見えたようだ。


「そうでしたか」


 なるべく表に出さないように意識していたベラだったがルカにも気づかれていたと知り、少し恥ずかしそうに顔を伏せ、頬を赤らめた。


「私はそろそろ時間ですね。とりあえず、養子縁組の関係でやらなくてはならないことはその都度こちらから連絡を致しますので、よろしくお願いします」

「はい、わかりました。セケット様もありがとうございました」

「いえ」


 この後に入っていた予定の時間が近づいてきたため、ルカは2人より先に談話室から出て行った。


「私たちもそろそろ出るか」

「そうですね」


 ルカが出て行き、少し2人で話をした後エリオットがそう切り出した。ベラもそれに同意し席から立ったところで、ベラはエリオットに伝えるべき情報が有ることを思い出した。


「そういえば、エリオット様。少々伝えたいことがありまして」

「なんだ?」

「先日、アルコット家にサラー伯爵が訪れていたようで、私はお会いすることはありませんでしたが、お父様によるとどうにもよくないことが起きる可能性があるらしく――」


 ベラはデルクから聞いた内容をそのままエリオットに伝えた。


「なるほど。報告してくれて助かる。こちらでもサラー伯爵、サラー家の者の動きは注視しておこう」

「ありがとうございます」


 エリオットがしっかり動いてくれることを確認してベラは頭を下げた。


「君も何かあったら私に言いなさい」

「私では対処が難しいものがあった場合報告いたします」

「いや、できれば対処する前にすべて報告してもらえると助かる。今君が何かをされて、公爵家への養子縁組の話が流れてしまうと一番困るのは私だ」


 貴族の当主ともなればそう簡単に動けるものではない。一番サラー家から狙われる可能性が高いのはアルコット家ではなく学園に通っているベラだ。ゴードンからだけではなくサラー家の者からの接触も考えられる。


 サラー家側はベラとセケット公爵家が養子縁組を組もうとしているのを把握していない。しかし、結果的にそれを阻止するような行動をしてくる可能性は否定できない。


「わかりました。些事でもあちらに関わることがありましたら報告いたします」

 

 ベラは自分で対処できるものはするつもりだったが、養子縁組の話が立ち消えてしまうと困るのはベラも同じだ。自力で対処できるものであってもその前にエリオットへ報告することを約束した。


「よろしい。それに君の父親であるアルコット子爵にも約束しているのだ」

「え?」

「何があっても君を守る。そう約束したのだ」


 デルクがエリオットとベラの婚約を認めるための条件の1つとして、ベラをしっかり守るよう託していた。

 それは近いうち、自分たちの手の中から巣立っていく娘のため、そしてエリオットの覚悟を見るためだった。


「私に君を守らせてほしい」

「はい」


 柔らかな笑みを浮かべながらも真剣な表情のエリオットにそう伝えられ、ベラはその突然の宣言に戸惑いながらも嬉しさをにじませた表情でその言葉を受け入れた。

 

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