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【完結】貴方が要らないとおっしゃった馬鹿な女はもう居ませんのでご安心ください  作者: にがりの少なかった豆腐


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13/27

お優しい方のようです

 本日2話目になります。

 まだ本日の朝の更新分を読んでいない方はご注意ください。

 

 試験結果が張り出された翌日。

 ベラはこれまで通っていた教室とは別の場所へ向かっていた。これは試験後にヤタ教諭に言われていたクラスの移籍によるものだ。

 すでに移籍先のクラスに所属されている生徒には通知がされていると聞いているベラは、緊張した面持ちで目的の教室の前に到着した。


 ゆっくり教室の扉を開け、ベラは中に入って行った。

 最初、ベラが入って来たことで視線が集中したが、すぐその視線は元の位置に戻って行った。

 ただ戻ったと言っても完全に気にされていないというわけではないため、ちらちらとベラの様子を窺う気配は無くなってはいない。


 教室内で使う席は決められていないため、一番生徒が少ない場所にベラは座ることにした。


(露骨に見られるようなことがないのはよかったですが、やはり警戒はされていますね)


 他の生徒たちがベラのことを警戒しているわけではないのだが、ベラにとって注目されているという状況は警戒されていることとさほど変わりはなかった。


 全く知り合いの居ない教室内。完全に孤立していたベラはどうするべきか悩んだ。

 今後はこの教室で講義を受けることになる。その中で話せる相手が居ないというのは少々都合が悪い。


(少しでも話しやすい方がいるといいのですが)


 上位クラスになれば成績がいい者しか居なくなる。そして、その生徒たちの多くは上位貴族であることが多い。

 上位貴族の令息や令嬢は学園に通う前から教師を付けられて勉強していることが多く、結果上位クラスになればなるほどベラのような下位貴族出身の生徒はほとんど見られなくなる。

 そのような中で他の生徒とまともに会話ができるのかベラは不安だった。


「あのちょっとよろしいでしょうか」

「あ、はい」


 どうしてよいか悩んでいるところに話しかけられ、ベラは緊張から背筋を正した。


「あなたがベラ・アルコットさんでよろしいでしょうか」

「はい」

「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。こちらは仲良くしたいだけですから」


 明らかに緊張しているベラの反応を見て、その生徒は小さく笑いながら柔らかい笑みを浮かべた。


 ベラに話しかけてきたのはルカ・セケットという生徒だ。このクラスの中でも社交性が高く、別のクラスに所属している生徒にも友人が複数いる交友関係が広いタイプの生徒である。

 そしてこのクラスの中心的人物でもある。


「その、声を掛けていただきありがとうございます」

「感謝されるようなことはしていませんよ」


 最初に声を掛けて来たルカに対しベラは感謝を述べる。ルカはそこまでする必要はないとベラを優しく諭すが、ベラにとってはルカから接触を図ってくれたことが助けになったことに間違いなかった。

 

「そんなことはないと思いますが、わかりました」


 これ以上同じことを繰り返すのは迷惑になってしまうと判断したベラは、自身が折れることを選んだ。


「よかったです。それでアルコットさん」

「はい」

「ああ、ごめんなさい。話をする前に自己紹介をしないといけませんね。私はルカ・セケット。名からわかる通り、公爵家の出ではありますが、学園内ではそれは考えずに接していただけると嬉しいです」


 名前を聞いてベラは完全に意識を飛ばしかけた。

 クラスを移籍して初めて声を掛けてきてくれた相手が公爵家の令嬢だと一切想定していなかったのだ。


 それではなぜエリオットの場合はこのようなことにならなかったのかと言えば、エリオットの存在は有名なのだ。それにエリオットは最初から王子だと理解したうえで会話をしていたが、ルカの場合は話していた相手が実は公爵令嬢だったという流れだ。この差は小さいようで大きい。


 普通の生活をしていればまず会うことのない相手。それが自分に声を掛けてきた上に少しやり取りをしたという事実。

 先ほどのやり取りを思い出して、ベラはすぐに頭を下げようとした。しかし、それに気づいたルカがすぐにベラを止めた。


「大丈夫ですよ。あのくらいでしたら気にすることはありません。むしろ、立場を気にして避けられてしまうと悲しくなってしまいます」

「は、はい」


 見目麗しいルカの見た目で本当に悲しそうな表情をされたことで、ベラは短く返事をして頷くことしかできなかった。


 初対面でこのような対応をされると裏があるように感じるかもしれないが、ルカの言葉に嘘は一切ない。


 ルカにとって学園に通っている間は公爵令嬢としての立ち振る舞いを強制されない数少ない場なのだ。その中で周囲がルカのことを公爵令嬢として扱い続けるということは、結局ルカはそれに合わせて公爵令嬢として振る舞い続けなければならなくなる。

 それはルカにとって本意ではなく、できれば避けたいことだった。そのため、ベラに対しても他の生徒と変わりなく、できるだけ圧を掛けないように接してきているのだ。

 

「そう言ってもらえてよかったです。これからよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いします」


 そう言ってお互いに軽く頭を下げた。


 同時に頭を下げたことに何か面白いと感じたのかルカが小さく笑う。それにつられてベラも同じように笑みを浮かべた。


(優しい方、なのでしょうね)


 ただ自分の都合のいいようにするために行動したとしても、人としての根幹が優しくなければここまですることはできない。

 自分に話し掛けて来た際の対応や言葉使いから、ベラはルカのことをそういう人物だと判断した。


「ああ、言い忘れるところでした。あの、これは私個人の用事になるのですが、放課後に少し時間をいただいてもよろしいでしょうか」

「はい、大丈夫ですよ」

「よかった。ありがとうございます」


 ルカのお願いに反射的に返事をしてしまったベラだったが、放課後に決まった予定はない。ルカの用事がなければ図書室へ行くつもりだったため、特に問題ないとベラは判断した。

 

 明日の更新は朝9時ごろと夜の2話更新になります。

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