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【完結】貴方が要らないとおっしゃった馬鹿な女はもう居ませんのでご安心ください  作者: にがりの少なかった豆腐


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12/27

見られていたようです

 

 大講堂から出て行ったゴードンを見送った後、周囲の視線が自分へ向いたことを知覚したことでベラもその場から離れることにした。


(少し、緊張しました)


 突然試験結果が貼りだされている場にゴードンが現れ、不正云々の話に発展したことでベラは内心非常に緊張していた。

 表面上はそれを見せないよう、難癖をつけてくるゴードンに対し少し強気に出たことが思いのほか上手くいったと、ベラは少しだけ達成感を覚えていた。

 

(意外とすっきりしましたね)


 ゴードンがこの場から離れようとした時に言い返したことで、ベラの中にあった小さなしこりが解消された。

 本人は気づいていなかったが、ゴードンに馬鹿と言われたことを無自覚ながらベラは気にしており、それが今回の騒動で発散することが出来ていた。


 ベラは黒板からある程度離れてから周囲に聞かれないよう小さくため息を吐いた。

 ゴードンとあのようなやり取りをしたことで必要以上に周囲から注目されていたため、その慣れていない視線から解放されたことでようやく気を抜くことが出来たのだ。


「寮は今戻るのもどうかと思いますし、図書室へ行きましょうか」


 すでに放課後。このまま寮へ帰ることも考えたベラだったが、自室へ帰るよりも図書室へ向かった方が余計なことを考えないでよいと判断し、いつものように図書室で勉強をすることにした。


 図書室へ到着すると試験期間が終わりその結果も公表され、勉強をするために詰めかけていた生徒たちの姿はなく、図書室に居る生徒の数は数日前と打って変わって片手で数えられる程度になっていた。

 試験直前の図書室の光景を思い出しつつ、やはり図書室は静かな方がいいと思いながら、いつものようにベラは奥の席で勉強を始めた。


 一度勉強を始めてしまえばベラは集中してそれに取り組むことが出来た。

 ベラが今取り組んでいる内容は次に習う範囲の予習の復習。ベラに限らず、上位の成績を常に取っている生徒は年始めの段階でその年に習う範囲の予習を終わらせていることが多い。そこから常に復習を繰り返し、自分の中にしっかりその内容を定着させていくのだ。


 ベラがすらすらと本の内容をノートに書き写しているところに、いつかと同じように後ろから影が差した。

 それに気づいたベラは振り返り、その影を作っている相手を確認した。


「やっぱりエリオット様でしたか」

「ああ、君と最初に会った時と同じようにしてみたのだが、さすがに気づくか」

「そうですね。それほど前のこと、というわけでもありませんし」


 ベラに気づかれたエリオットはこれまで通りその隣に座った。


「試験結果だが、おめでとう」

「ありがとうございます。エリオット様も1位おめでとうございます」

「ありがとう」


 椅子に座ってすぐエリオットはそうベラを祝福する。エリオットもベラと同じように3回生が受けた試験で1位の成績を収めていたため、ベラはお返しと同じようにエリオットを祝福した。

 ただエリオットの場合、ベラとは違い、学園に入ってから常に1位を取り続けているため、本人からすれば特別感はないが、ベラの言葉に柔らかな笑みを浮かべて短く感謝した。

 

「勉学が出来ると思っていたが、まさかこれほどとは想定していなかった」

「私もまさか僅差とはいえ1位になれるとは思っていませんでした」


 ベラと2位の生徒との差は1問だった。2位の生徒がもう1問正解していれば同率で1位。もしくはベラが1つ問題を落としていれば同様の結果になっていた。

 

「しかし、ふっ」

「なんでしょうか?」


 突然笑い出したエリオットにベラは首を傾げながら聞く。


「なに、先ほどあった君と君の元婚約者のやり取りはなかなか見ていて面白かったなと思ってな」

「え、あ。あれを見られていたのですか!?」


 まさか、あの場をエリオットに見られているとは思っていなかったベラは少し焦った声を上げた。

 ゴードンとの突然の邂逅であまり周囲に気を向ける余裕がなかったため、ベラは周囲に居た生徒の中にエリオットが居たことに気付くことが出来なかった。

 実際のところ、エリオットはベラとゴードンとのやり取りの邪魔にならないよう、ベラたちの視界に入らない場所でそのやり取りを聞いていたため、ベラが周囲に気を配っていてもエリオットの姿を見つけることはできなかっただろう。


「申し訳ありません。気づきませんでした」

「いや、あの状況であれば気づかなくても仕方がないだろうし、私も邪魔にならないようにしていたからな。しかし、最後の一言は特によかった。あれだけ言えるのであれば、こちらとしてもうれしい誤算と言える」

「誤算、ですか?」


 エリオットの口から突然出て来た誤算という言葉にベラは首を傾げる。


「まだ言うことは難しいが、近いうちに話せるようになるはずだ」

「そうですか」


 不正の疑惑を晴らすために再試験を受けた際にもエリオットは気になることを言っていた。それを覚えていたベラは今の発言と、その発言は何かつながりがあるかもしれないと考える。

 しかし、エリオット相手に追及するわけにもいかず、ベラはそれ以上聞くことはしなかった。


 そしていつも通り少しの間ベラとエリオットは軽くたわいもない話をしたのち、エリオットは図書室を後にし、ベラは図書室が閉まるまで勉強を続けた。

 

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