8.戦闘開始
改行迷走におちいってます。
洞窟の中を、十三人の男たちが慎重に進んでいた。
先頭はガレス。その後ろに剣士が三人、さらに斧持ちと弓持ちが続く。隊列は崩れていない。思っていた以上に統率が取れていた。
(うわ、ちゃんとしてる)
前の二人とは明らかに違う。
素人の集まりじゃない。少なくとも、場数は踏んでいる連中だ。
ガレスは洞窟の壁に埋まる赤い鉱石を見た。淡く発光している鉱石が、暗い洞窟をぼんやり照らしている。
「団長、これ見ろ」
一人が岩壁に触れる。
「熱い……」
顔色が変わった。
「やっぱ普通の洞窟じゃねぇ」
ガレスは黙ったまま周囲を見渡していた。床、壁、天井。すべてを確認している。その目が、ただ者ではないことを物語っていた。
(あの団長、いかにも歴戦の猛者って感じだな)
勘が鋭い。
こういうタイプは厄介だ。
コロも俺のコアの前で小さくなっていた。炎が不安そうに揺れている。
「ぷ……」
(大丈夫。お前は下がってろ)
コロに戦わせる気はない。
マスコットを戦地にやってたまるか。
俺がやる。
ここで止める。
盗賊たちはさらに奥へ進んでいく。距離が縮まる。コアまでのルートが、少しずつ削られていく感覚があった。
(まずは数を減らしたい)
正面からぶつかるのは無理だ。
なら、使うのは地形。
この山は俺の領域だ。
洞窟全体の構造が感覚として頭に入ってくる。熱で脆くなった岩盤、ひび割れた壁、崩れかけた天井。
使える場所はある。
(ここだ)
隊列の中央付近。
天井に細かい亀裂が入っている。
俺は意識を集中した。ほんの少しだけ熱を流し込む。
ぱきっ。
小さな音。
だがガレスが反応した。
「止まれ!!」
鋭い声が響く。
(っ!?)
次の瞬間、洞窟が揺れた。
どごぉぉん!!
轟音とともに天井が崩落する。巨大な岩塊が雨のように降り注いだ。
「うわぁぁっ!!」
「伏せろ!!」
悲鳴が響く。
隊列が乱れた。
二人が直撃を受け、地面へ叩き潰される。
《侵入者の生命反応消失:二》
(……っ)
胸が重くなる。
だが止まれない。
「後ろへ下がれ!」
ガレスが叫ぶ。
その声で部下たちが動く。混乱の中でも統率が崩れない。
やはり厄介だった。
「団長! これは罠だ!」
「分かってる!」
ガレスが天井を睨む。
「この山、何かおかしい!」
(正解…だから噂とか広められると困るんだよ!)
だがまだ気づいていない。
山そのものが相手だとは。
土煙が舞う中、ガレスは低く言った。
「全員、生きて帰るぞ」
その声に部下たちの顔が引き締まる。
誰一人、仲間を見捨てようとしていなかった。
(……なんだこいつら)
盗賊だろ。
もっとこう、自分勝手な連中かと思っていた。
でも違う。
少なくとも、この団長は仲間を大事にしている。
ガレスが静かに周囲を見渡した。
その目が細くなる。
「見られてる」
洞窟に緊張が走った。
「誰かいるぞ」
部下たちが武器を構える。
ガレスは剣を抜いた。
巨大な大剣だった。使い込まれているが、丁寧に手入れされているのが分かる。
「気を抜くな」
剣先を前へ向ける。
「敵は、俺たちを見ている」
空気が張り詰めた。
コロが震える。
「ぷ……」
(まずいな)
思った以上に早い。
この団長、もう核心に近づいている。
さらに厄介なのは、恐怖で崩れないことだ。むしろ冷静になっている。
(どうする)
考えろ。
止めろ。
コアまで行かせるな。
その時だった。
コロが急に顔を上げた。
「ぷるっ!」
炎が大きく揺れる。
(どうした?)
コロは洞窟の左壁を見ていた。
そこには細い亀裂が走っている。
その奥に、熱の流れを感じた。
(これは……)
マグマ。
しかも圧縮された高熱の流れ。
使い方次第では。
(いけるか)
俺は意識を左壁へ集中した。
ガレスたちが、さらに一歩踏み込む。
次の迎撃が始まろうとしていた。
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