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【火山転生】目覚めたら火山そのものだった〜マグマの力で最強の聖地を作ったら、麓に国ができていました〜  作者: 尾の長い虎(てぃが)
第一章:建国編

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35.名無し村の卒業

「私たちの村に、名前をいただけませんか?」


 夢の大地で、ヒナノがまっすぐ俺を見上げている。


 そう頼まれても、俺はすぐには答えられなかった。


 ヒナノに俺の名前を決めてもらった時は、本人が呼びやすければそれでいいと思っていた。だが、村の名前となれば話は別だ。


 そこで暮らす者だけではなく、これから訪れる者も口にする。下手をすれば、何十年どころか何百年も残るかもしれない。


(さすがに、思いつきでは決められないな)


「カザン様?」


『俺が一人で決めていいのかと思ってな』


「ですが、私たちはカザン様にいただきたいのです」


『なら、みんなにも聞いてみよう』


 ヒナノが小さく首を傾げる。


『そこで暮らすのは、村のみんなだ。呼びたい名前がないか、聞いてきてくれ』


「皆で考えた名前を、カザン様に選んでいただくのですか?」


『選ぶというより、一緒に考えたい』


 神が授ける名前としては、少し格好がつかないかもしれない。


 それでも、村人たちがこれから何と名乗りたいのかを無視して、俺だけで決める気にはなれなかった。


「分かりました。明日、皆さんにお伝えします」


『頼んだ。それと、もう一つ伝えてほしいことがある』


「はい」


『この山には、まだ村のみんなに話していない俺の眷属が二体いる』


 ヒナノが目を丸くした。


「眷属様が、ほかにもいらっしゃるのですか?」


『ああ。一体はコロ。赤橙色をした、手のひらくらいの小さなスライムだ』


「手のひらくらい……」


『地面の下を調べたり、余分な熱を吸収したりしてくれている。温泉のもとになった地下水を見つけられたのも、コロが地下を探ってくれたおかげだ』


 実際には俺と一緒に見つけたのだが、コロがいなければ、あれほど早く地下の空洞まで意識を伸ばすことはできなかった。


「コロ様ですね。覚えました」


『様はつけなくてもいいぞ』


「カザン様の眷属様を、呼び捨てにはできません」


(もう様が二つついてるんだけどな)


 訂正しても増えそうなので、諦めてもう一体の説明へ移る。


『もう一体はヴァル。黒曜石のような鱗と金色の目を持つ、火竜の幼体だ。今は山道や領域の外側を見回ってくれている』


「火竜……」


 ヒナノの声へ、驚きと畏れが混じる。


『まだ子どもだ。真面目で、勝手に人を襲ったりはしない。小さな翼がある黒い竜を見ても、槍を向けないように伝えてくれ』


「分かりました。ですが、どうして今まで教えてくださらなかったのですか?」


『魔物と間違われないよう、会わせる時期を見ていたんだ』


「そうだったのですね」


『……という理由もあるんだが、伝えるのを忘れていた』


「そちらが本当なのですね」


『村のみんなには、もう少し柔らかく伝えてくれると助かる』


「ありのまま、お伝えします」


(変なところで正直なんだよな、ヒナノは)


 夢から去っていくヒナノを見送りながら、明日の村人たちの反応を考える。


 怒りはしないだろうが、呆れられる可能性はある。


「かしこみかしこみ、村名の選定であれば、私めにも案がございます」


 いつから待っていたのか、フランが恭しく一礼した。


 その両脇では、コロが期待するように弾み、ヴァルが小さな胸を張っている。


(聞こうか)


「神火大霊峰カザン大神御鎮座、万民守護、永代繁栄第一聖都、という名はいかがでしょう」


(村の名前を考えてるんだぞ)


「将来の発展を見越しております」


(見越しすぎだ。今は家が何軒か集まってるだけだぞ)


「では、現状に合わせ、末尾を第一聖村へ改めます」


(そこだけ直しても長い)


 フランの背後で、赤い炎の花が一輪咲いた。どうやら、かなり自信のある案だったらしい。


「日常においては、略称を用いれば問題ございません」


(略すことを前提に名前をつけるな)


「ぷる」


 コロが一度、大きく弾んだ。


「コロ殿より、コロ村との案が提出されました」


(本当にそう言ったのか?)


「ぷる」


(同じ音しかしてないぞ)


 今度はヴァルが一歩前へ出て、翼を広げた。金色の目は真剣そのものだ。


「ヴァル殿からは、ヴァル村との対案が提出されております」


(お前たち、村人はまだ名前すら知らないからな)


 コロの身体がしぼみ、ヴァルの翼が静かに下がった。


(そんなに露骨に落ち込むな。明日、ちゃんと紹介してもらうから)


 コロの身体がぱっと膨らみ、ヴァルが勢いよく顔を上げる。


 その横で、フランまで期待に満ちた目を向けてきた。


(フラン村も候補に入れないぞ)


「まだ何も申し上げておりません」


(顔に書いてあった)


 フランの背後に咲いていた炎の花が、少しだけ傾いた。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。


 村の中央へ、大人も子どもも集まっていた。


 村長の手には、来訪者の記録をつけるための木の板がある。誰が、どこから来て、何日滞在したのか。その一番上だけは、村の名を書くために空けられていた。


「始める前に、ヒナノから神託がある」


 村長に促され、ヒナノが一歩前へ出る。


「昨夜、カザン様へ村の名前をいただきたいとお願いしました」


 村人たちが静かに続きを待つ。


「カザン様は、ここで暮らす皆さんと一緒に考えたいと仰っています。ですから、まずは皆さんがどんな名を望むのか、聞かせてほしいそうです」


「お山が、わしらの考えも聞いてくださるのか」


「はい。それから、名前を考える前に、もう一つお伝えすることがあります」


 ヒナノは一度、山の方角へ顔を向けた。


「この山には、カザン様の眷属であるコロ様とヴァル様がいらっしゃいます」


 しばらく、誰も声を発しなかった。


「……どちら様じゃ?」


 ガンゾウが、皆の疑問をそのまま口にした。


「今から説明します」


 ヒナノは、コロとヴァルの姿や役目を、昨夜聞いたとおりに伝えていく。


 小さなスライムが地面の下を調べ、山の熱を整えていたこと。黒い鱗を持つ火竜の幼体が、人知れず山を見回っていたこと。


「つまり、わしらは知らぬ間に、その御二方にも守られていたということか」


「はい」


「なぜ、今までお姿を見せられなかったのじゃ?」


 ガンゾウが尋ねると、ヒナノは迷うことなく答えた。


「魔物と間違われないよう時期を見ていたことと、カザン様が皆さんにお伝えするのを忘れていたためです」


(柔らかく伝えてくれって言ったよな?)


 村人たちの間に、何とも言えない沈黙が落ちる。


「神にも、うっかりはあるらしいな」


 村長が静かに呟いた。


「日々、火山であられるのだから、お忙しいのじゃろう」


「火山であることの、どの辺りが忙しいんだ」


「噴煙を出したり、止めたり……」


「今、考えただろう」


「火山神様の御心を、人が決めつけてはならん」


「便利な言葉で逃げるな」


(俺を挟んで言い争わないでくれ)


 ヒナノは口元を押さえて笑いを堪えた後、話を戻した。


「お二方とも、人を襲うことはありません。近いうちに姿を見せてくださるそうですので、驚いて武器を向けないようにとのことでした」


「コロ様は、触ってもいいの?」


 子どもの一人が手を挙げた。


「コロ様がよいと仰れば」


「どうやって聞くの?」


「『ぷる』というお声で、お返事をされるそうです」


「嫌な時は?」


「……おそらく、違う『ぷる』です」


(そこは俺にも、はっきりとは分からない)


「分からないうちは、勝手に触るな」


 村長が子どもたちへ言い聞かせると、何人かが残念そうに頷いた。


「話は分かった。まず、村の名を決める」


 村長が木の板を掲げる。


「思いついたものがあれば言え」


「火神大鼓村」


 誰よりも早く、ガンゾウが答えた。


「大鼓を外せ」


「では、火神村じゃな」


「外す決断だけは早いな」


「湯けむり村はどうだい?」


 湯場へ通うようになった老婆が言う。


「温かい湯が湧く村だと、外の者にも分かりやすいよ」


「なら、黒岩村はどうだ。これから鉱石を掘るなら、その方が――」


「コロ村!」


 大人の声を遮って、子どもが元気よく叫んだ。


「まだ会ってもおらんだろう」


「でも、丸くて小さいんでしょ。きっとかわいいよ」


「ヴァル村の方が強そうだ!」


 別の子どもが対抗する。


「火竜だぞ!」


「コロの方が言いやすい!」


「強い方がいい!」


「名前は戦わせて決めるものではない」


 村長が止めても、コロ派とヴァル派に分かれた子どもたちの声は収まらない。


 やがてガンゾウが、すべてを解決する名案を思いついたように手を叩いた。


「では、コロヴァル神火湯けむり黒岩大鼓村でどうじゃ」


「どうして、全部入れた」


「皆の意見を大切にした結果じゃ」


「村の名を言い終える前に日が暮れる」


「急いで言えばよかろう」


「毎回急がなければならん名前は却下だ」


 その後も、山村、赤花村、火の里と、いくつもの名前が挙がった。


「カザン村でよいのではないか?」


 誰かがそう口にした瞬間、ヒナノの胸元にある神器へ熱が宿る。


 短い神託を受け取ったヒナノが、目を瞬いた。


「今、カザン様より『却下』と」


「返事が早いのう」


「それだけは、どうしても嫌らしいな」


(自分の名前を、毎日あちこちから呼ばれる村なんて落ち着かないだろ)


「神託によって最初に退けられた案として、記録しておこう」


「余計な記録を残すな」


 村長がガンゾウの手から木炭を取り上げる。


 笑いは起きたが、肝心の名前は決まらない。


 皆が考え込む中、村長は少し離れた場所へ顔を向けた。


 昨日運び込まれた男が、毛布を肩へ掛けたまま座っている。そのそばには、妻と幼い娘もいた。


「外から見れば、この村はどう見えた?」


 突然意見を求められ、男が慌てて姿勢を正す。


「昨日来たばかりの私どもが、口を出してよいことでは……」


「中にいる者には、見えないものもある。何でもいい」


 男は困ったように妻と顔を見合わせた。


 その隣で、娘が小さく手を挙げる。


「火のお山が、みんなを守ってくれる村」


 少女の声に、村人たちが静かになった。


「大地が動いて、魔物から助けてくれたの。お山の温かいお湯も、お父さんを温めてくれた」


「では、火山に守られた村ということか」


 村長が尋ねると、娘は少し考えてから首を横へ振る。


「でも、お山だけじゃないよ」


 少女は、レンや槍を持って戦った大人たちを見る。


「村のみんなも、お父さんとお母さんを守ってくれた。お山の火を怖がらないで、一緒に守ってるの」


 誰も、すぐには言葉を返さなかった。


 半年前ならば、同じ言葉は出なかっただろう。


 村人たちは、山が動くのを待つだけではなくなった。


 武器を作り、訓練し、浅層ダンジョンで魔物との戦い方を学んだ。そして昨日は、俺が少し手を貸しただけで、自分たちの判断によって一家を守り切った。


(火に守られながら、火と共に誰かを守る村、か)


 意識の奥へ、一つの名前が浮かぶ。


 だが、その名前に込めるものを、短い神託だけで伝えるのは難しい。


「今夜、カザン様へ皆さんの案をお伝えします」


 ヒナノの言葉に、村長が頷いた。


「では、続きは明日だ。それまで、ほかの案も考えておけ」


「コロヴァル神火湯けむり黒岩大鼓村も、もう一度よく――」


「考えなくていい」


 ◇ ◇ ◇


 その夜、夢の大地へ現れたヒナノは、村で出た名前を一つずつ俺へ伝えた。


 ガンゾウの長すぎる案まで律儀に読み上げようとしたので、それだけは途中で止めた。


「どの名前がよいと思われますか?」


『あの子が言ったことを、名前にしたい』


「火山に守られ、村の人々も共に守る、という言葉ですか?」


『ああ』


 この村は、俺が一方的に守るだけの場所ではない。


 村人たちは、俺が与えた熱や水、鉱石を使い、自分たちの暮らしを作り始めている。危険が迫れば武器を取り、俺の力が届かない場所にいる誰かへも手を伸ばす。


 なら、その両方を込めればいい。


『火守』


「ひもり……ですか?」


『火に守られる。それだけじゃない。火を守り、火と共に誰かを守る』


 俺がいなくても生きていけるように、とまでは言わなかった。


 けれど、いつかそうなってほしいとも思っている。


『火守村。みんながよければ、この名前にしたい』


 ヒナノは何度か、確かめるようにその名を繰り返した。


「火守村……」


 やがて、その顔へ柔らかな笑みが浮かぶ。


「はい。とても、私たちらしい名前だと思います」


『それと、明日はコロとヴァルを村へ向かわせる』


「お二方に、お会いできるのですね」


『先に説明してもらったから、いきなり槍を向けられることもないだろ』


「皆さん、楽しみにされていました」


『コロには、触られすぎそうなら逃げていいと言っておく』


「違う『ぷる』を聞き分けられるよう、私も努めます」


(そこは無理しなくていいぞ)


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。


 再び村人たちが集まったところで、ヒナノは山から授かった名を告げた。


「火守村です」


 火に守られるだけではなく、火を守り、火と共に人を守る村。


 ヒナノがその意味まで伝えると、村人たちは静かに山を見上げた。


「火守村……」


 村長が、最初にその名を口にする。


「俺たちも、守る側に入っているんだな」


 レンがどこか嬉しそうに呟いた。


「入っているだけではない。そうあり続けろということだ」


 父親に言われ、レンが背筋を伸ばす。


「分かってるよ」


「返事は?」


「はい!」


「最初からそう言え」


「昨日も同じこと言われたよ」


「なら覚えろ」


 周囲から、小さな笑い声が上がった。


「火守大鼓村ではいかんか?」


 ガンゾウが最後の抵抗を試みる。


「いかん」


「まだ一度しか提案しておらんぞ」


「昨日から数えれば六度目だ」


「数えておったのか」


「止めるためにな」


 ほかに異を唱える者はいなかった。


 村長は空白だった木の板の一番上へ、ゆっくりと三文字を書き入れる。


 ――火守村。


「今日より、ここを火守村とする」


 その名が、集まった村人たちの口から何度も繰り返される。


「私たちが来た村は、火守村なんだね」


 最初に村の名を尋ねた娘も、母親の手を握りながら嬉しそうに口にした。


 この村の名を、最初に外の者として呼んだのは彼女だった。


 その時、意識の中へ新たな文字が浮かぶ。


《聖域内における固有集落の成立を確認》


《集落名:火守村》


《集落管理機能が解放されました》


 これまで熱や振動として捉えていた村へ、別の輪郭が重なる。


 定住者。


 一時滞在者。


 住居。


 食料備蓄。


 そして、村として認められた範囲。


 それぞれの情報が、これまでとは違う形で意識へ伝わってくる。


 火守村へ逃れてきた一家は、きちんと一時滞在者として数えられていた。


(名前が決まったことで、一つの集落として認められたのか)


 まだ詳しい使い方は分からない。だが、これから人が増えるなら、誰がどこで暮らし、何が足りないのかを把握できるこの機能は役に立つ。


「ヒナノお姉ちゃん、あれ!」


 子どもの声が響いた。


 山道を、小さな熱が二つ近づいてくる。


 一つは、弾むたびに軽い振動を地面へ伝えながら。


 もう一つは、規則正しい足取りで土を踏みしめながら。


 コロとヴァルだ。


 昨日の説明がなければ、槍へ手を伸ばす者もいただろう。実際、レンが槍の柄へ手を掛けかけたが、その腕を父親に叩かれて止まった。


「神託を聞いていただろう」


「分かってる。癖だよ」


「直せ」


「簡単に言うなあ」


 二体は村人たちの前まで来ると、足を止めた。


 コロが元気よく身体を震わせる。


「ぷる!」


 ヴァルは背筋を伸ばし、小さな翼を広げた。挨拶まで対照的だ。


「こちらがコロ様。そして、こちらがヴァル様です」


 ヒナノが皆へ紹介する。


「お二方も、これまで人知れず、この山と村を守ってくださいました」


 村人たちが揃って頭を下げた。


 コロは困ったように左右へ揺れ、ヴァルは当然の礼を受けるように深く頷く。


「コロ様、本当に丸いね」


 子どもの一人が言った。


「丸いのに『様』をつけても、敬っているように聞こえんな」


「じゃあ、丸くて立派です」


「無理に褒めなくていい」


 別の子どもは、ヴァルを見て首を傾げた。


「火竜って、もっと大きいと思ってた」


「ヴァル様だ」


「ヴァル様って、もっと大きいと思ってました」


 言い直しても、内容は変わっていない。


 ヴァルの喉元へ熱が集まり、空へ向けて小さな炎が吐き出された。


 驚いた子どもが一歩下がった後、目を輝かせる。


「これから大きくなるんだね!」


 ヴァルは満足そうに翼を畳んだ。


(あれで納得するんだな)


 一方、コロは村人の間を跳ねながら、ガンゾウの前で止まっていた。


 初めて見る鼓が気になるらしい。


「コロ様、これは神へ感謝を捧げるための――」


 説明の途中で、コロが鼓の上へ飛び乗った。


 ぽん、と軽い音が鳴る。


「ぷる」


 もう一度跳ねる。


 ぽん。


 ガンゾウの顔が、見る見るうちに輝いていく。


「村長、見たか。コロ様が祝えと仰っておる」


「遊んでいるだけだ」


「二度も打たれたぞ」


「回数を重ねても神託にはならん」


「かしこみかしこみ、コロ殿による火守村成立の祝奏と拝察いたします」


(フランまでガンゾウ側につくな)


「ぷる!」


 コロが三度目の音を鳴らすと、とうとう子どもたちが笑い出した。


 緊張していた大人たちの間にも笑いが広がる。


 昨日来た娘も、母親の隣で声を上げて笑っていた。


「かしこみかしこみ、火守村の成立を祝い、炎花を一輪咲かせるお許しを賜りたく存じます」


(一輪だけだぞ。それと、誰も驚かせないよう、高いところでだ)


「畏まりました」


 村の上空へ、赤い光が昇る。


 人々が見上げた先で、その光は大きく開いた。


 幾重もの炎が花びらとなり、青い空へ真紅の大輪を描く。火の粉も熱も地上へ落ちず、ただ朝の空を鮮やかに染めていた。


 昨日まで火山神を畏れていた一家も、身をすくませることなく、その花を見上げている。


 娘は母親の手を握ったまま、小さく呟いた。


「きれい……」


(一輪とは言ったけど、大きさを決めるのを忘れてたな)


「最大の敬意を、一輪に込めました」


(次からは大きさも先に決めよう)


「続きまして、村域の策定、住居の増築、来訪者名簿、迎賓所、そして神殿の建立を進言いたします」


(最後にしれっと神殿を入れるな)


「しれっと、ではございません。最も重要であるため、結びに置きました」


(言い方を変えても後回しだ)


「では、建立予定地の選定だけでも――」


(気が早い)


 村に名前がついただけのはずなのに、やるべきことは一気に増えたらしい。


「国の始まりとは、そのようなものでございます」


(まだ村だろ……)

読んでいただきありがとうございます。


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