疑問
「というか、昨日ちょうどディーのうんちを取りに行ったってことは、父さんは今日、僕の体が痛くなることを知っていたってこと?」
俺は昨日のマッシュの行動が確信的だったため、それについて問い詰める
「まあな、俺が生命魔法を使えるようになった時もそうだったからな」
マッシュはニヤリとして言う
「じゃあなんで教えてくれなかったの?」
マッシュのこの状況を楽しんでそうな態度に腹が立ち、とげとげしく疑問をぶつける
「それは父さんも悪かったと思っている」
マッシュは、本当に申し訳ない、という顔で謝罪をする
「でも、もし昨日、「明日激痛が来るかもしれないから覚悟しとけよ」って言ってたら、夜怖くて眠れないだろ?」
「たしかに、、、」
俺はマッシュの主張にぐうの音も出ずに、弱弱しく納得の意を示す
確かに、基本的に痛みが予定されていると怖いもんだ。注射だってそうだろう。あんなチクってした痛みなんて、日常の中に溢れているはずなのだ
それなのに、「明日注射だからね」という言葉を聞いただけで明日が嫌になる。まあ流石に、それを聞いて寝れなかった日はないのだが
「だろ~。今回はちゃんと眠るってのがとても大事なことだったんだ」
「そうなの?」
「あぁ。シュンは昨日、自分が今まで走ったことのない速さで走っただろ?」
「うん、そうだね」
「それによってシュンの体は傷ついてしまったんだ。傷ついた体を治して、更にパワーアップさせるためにはよく眠ることが必要なんだ」
「へぇ~そうなんだ。父さんはやっぱり物知りだね!」
確かに、似たようなことを筋肉ムキムキ黒光りの保健体育の先生が言っていたような気がする。前世で得た知識と照らし合わせても今回、十分な睡眠が必要だったことも納得がいく
けれど、マッシュってどこからそんな情報を得ているのだろう?まあ多分、大部分は外部とのつながりがある村長からだろうな。誰も村長の姿を見たことは無いが、村長との会話はそこそこ行われている
村長は村の真ん中に鎮座する、こじんまりとした家に普段はいるらしく、そこに行けば実体は見えないが声は聞こえるらしい。つくづく変な村長だ。そしてそれが通常運転のこの村はもっと変だ。まあだいぶ慣れてしまったが
「そうだろう~」
俺の賞賛にマッシュは照れ臭いのか鼻の下をこすりながら答える
「まあ村長の受け売りなんだけどな」
俺の心を覗いたかのようにマッシュは答え合わせをしてくれた。
やはりマッシュの情報の仕入れ先は村長だったか
「受け売りって何?」
こういうのもちょくちょく取り入れていかないとな
「受け売りっていうのは、人から聞いた話を話すことだな」
少し意味合いが違うような気がするが、どうでもいい。俺は普通の4歳のフリができればよいのだ
「そういうことね。村長って色んな事を知ってるんだね。僕も村長と話してみたいな」
家にある本から得られる知識はある程度覚えてしまったし、二週目だから驚きや面白みがない。だから、村長と話してもっとたくさんの魔法や魔物などの知識を頭に入れたいし、なによりこの村の外のことが知りたい。
「俺も話させてやりたいんだけどな。村の掟がな、、、」
マッシュは歯切れの悪い返答をする
「掟?」
「掟っていうのは決まりのことだ。」
違う!今回の疑問に関しては言葉の意味が知りたいのではない。その内容が知りたいのだ
「どういう決まりなの?」
「それは、村長とは7歳になるまで話せない、という決まりだ」
「どうして?」
ほんとにどうして??
通ってた高校の男子トイレの中が、女子トイレの中より見られやすいことに気がつき、男子の方がトイレの中は見られてはいけないのでは?(その理由としては女子は個室に籠るけれど男子はあけっぴろんだからだ)、という疑問を抱いた時よりも今は疑問を抱いている。
(あ、さては村長は大の子供嫌いだな?)
流石に違うか。
「シュン。村の掟に疑問を持ってはいけないよ」
マッシュは俺の疑問に突然目の光を失い、声質を堅くして、忠告を含む注意をする
「え、あぁ、ごめんなさい」
「おんぎゃー!!」
まさか村の掟に疑問を持つだけで注意されると思っていなかった俺は、驚きと強烈な違和感を背中のあたりにぞわりと感じる。そして、フランも何かを感じたのか再び泣き出してしまう
やっぱりこの村は何かがおかしい。普通、掟に疑問を持っただけでそんなに堅くなるか?
シュンの心の中とは打って変わって、マッシュはシュンの謝罪に優しく微笑む。相変わらず目の光は戻っていないが
「わかればいいんだよ」
「じゃ、じゃあ俺は7歳までは村長と喋れないんだね?」
マッシュもこの村の違和感の一部だということに動揺してしまって、ただ確認するだけの意味のない質問をしてしまう。そして、ついつい「俺」と言ってしまう
「ん?あぁそういうことだ」
いつの間にかマッシュの目には光が戻り、声はいつもの調子だ
そしていつの間にかフランはすやすやと眠っている。
マッシュの変化に少しの恐怖に近い感情を心に宿した俺は、話を変えることにする
「そ、そういえばさ、母さんって風の魔法が使えるの?」
マッシュは驚いた顔をする
「あぁ、そうだ!母さんは風の魔法が使えるぞ。どうしてわかったんだ?」
「僕の髪を乾かすときに、何もないところから風を吹かせていたから、、、」
「お前の推察力はすごいな!」
あぁ、またやってしまった。動揺は良い結果を生まないということがしみじみと感じられた
まあいいや、この際だから気になっていた「あれのことも」も聞いてしまおう。また「天才」だと思われても、そうでいられるように努力すれば良いだけだしね
「どうして、風魔法はぶつぶつと何かを言った後にしか発動しないのに、生命魔法は何も言わなくても発動するの?」
マッシュはまたしても驚いた顔をする
「よく気が付いたな。でも、父さんもそれは知らん!」
マッシュは笑いながら自分の無知をシュンに告げる
(流石にわからないか~まあ、うちにあるどの本にも載ってなかったもんな)
うちにある本には、基本的に魔法には詠唱が必要である、ということしか書かれていなかった。でも確かに今思うと、火や水などの詠唱は書かれているのに生命魔法の詠唱は書かれていなかった
もう!ますます村長に会いたくなってきてしまったではないか
(あ、てか石鹸どうしよう)




