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平凡転生者と寡夫のエルフ   作者: たこ足配線
ありがたい不自由
10/25

突然のアイデア

過程が目的に代わってしまうことは、人間良くあることである。だからよく言われるのだ「目的を見失わないように」と。もし今、そういう教訓が書かれた自己啓発本を読んだとしたら(たとえ薄っぺらな内容であったとしても)俺は星5評価をするだろう。もちろん星5中星5だ。

それで、俺はマッシュに狩りごっこで勝利することにすっかり気を取られて、そしてそれに加え、狩りごっこから色々なことが立て続けに起きたせいで、本来の目的を忘れてしまっていた。

そう、俺は石鹸が作りたかったのだ。

大体の人は、うんこをした後に「石鹸」で手を洗うだろう。それは、そもそもトイレがあまり清潔な場所ではないということと、肛門に付いているうんこに紙一枚の薄さまで接近することに起因するだろう。

そして今俺は、紙一枚を挟むことなく直でうんこを握っている。フランのうんこを触ってしまったときもこんなにガッツリはいっていない。だから、ディー糞がいくら害が無いとはいえ、半端なく手が洗いたい


「多分、また痛くなってくると思うからその時はそれをかじれよ」


マッシュは俺に地獄の囁きを残して再び雑草取りに戻っていく


(おいおい、またかじらないといけないのかよ、、、これが何か聞かなきゃよかった、、、)


マッシュの置いていった言葉は俺を絶望の淵へと立たせる

だから、俺がディーの糞を再びかじる勇気を出すためにも、お守り的な感じで、石鹸が欲しい。

でも、外に出られないようではどうすることもできないか。


「諦めかけていたその時、ある一つのアイデアが浮かんだ」

とかあればいいのにな~


その日は何もできずに一日が終わった。「意外にも」というべきか「やはり」というべきか、俺を不快の絶頂へと押しやっていたディーの糞だが、痛みがぶり返すとただの薬にしか見えなくなり、いずれは俺の「お守り」となっていた。



そして数日が経過した。

俺の全身の痛みはすっかり無くなり、一旦狩りごっこは中止し(マッシュは少し残念そうだったが)、生命魔法の修行に励むようになっていた。初めはマッシュに教えを乞いていたが、マッシュの教えが「ビューンと力を入れろ」とか、「どーんとやれ」などのように、あまりにも感覚論過ぎたので自分一人で(マッシュの目は常にあるが)修行するようにした。

それで石鹸のことだが、俺の頭脳では数日で解決するはずがなかった。まず、俺の持っている石鹸に関する知識はアルカリ性というようなことだけだ。(俺は理系だったので高校の授業で詳しく習ったはずだが、入試の都合上記憶から消去していた)


それだけの知識からどう解決しろと?


なんなら、最近では体調を崩すというようなことも、めっぽう少なくなってきたため「石鹸、要らないのでは?」という思考に切り替わりつつある。

石鹸のことはひとまず置いといて、今日も生命魔法の修行に励もうと思う


「俺は服を干しながら見てるから、あとは自由に特訓してくれ」


どこか哀愁漂うマッシュは「見ている」ということだけ伝え、俺たちが普段着ているメアリが作ってくれた麻系の質素な服を洗濯竿に干しに行く。意外とマッシュはイクメンなのだ


「はーい」


俺は4歳児らしく元気いっぱいに返事をし修行を始める

修行と言っても、いきなり身体強化をし、全力疾走や超ヘビー級の丸太を持ったりするのではなく、座禅を組むときの体勢となり、深呼吸をし、ひたすらに体内のマナの巡りと、俺の周りにあるマナとのつながりを感じ取る

なぜなら、生命魔法が使えるようになったばかりの俺はまず、スムーズに生命魔法を使えるようにならなくてはいけないからだ。身体強化を行うのに、今はまだ1分以上かかってしまう

しかし、マッシュのように使い慣れていると、一瞬で身体強化が行えるようになる。最終的な目標がそれだ

一応、身体強化の修行の最後は少し走ってみたり、近くに落ちている少し角ばった大きめの岩を持ち上げてみたりする。体を徐々に慣らしておく作戦だ。俺がもし、今の自分をラノベで見ていたら、「もっとハードな修行をしろよ」と思うかもしれないが、とてもじゃないが怖くて無理だ。ディーの糞をかじれば痛みは和らぐが、無理をしたことで体に致命的なダメージを負い、動けなくなるかもしれないリスクを俺には取る勇気がない



なんだかんだで、今日も修行を終えた俺は、隣の家の(とは言っても60mほど離れているが)メアリの親友で髪は赤髪ベリーショートで目つきが鋭い男勝りなミュラーさんが、俺と同い年でやはり赤髪でこれまたやはり目つきの鋭い(違うところは髪が腰まで伸びている事くらいだろうか)娘のクラリーを連れて(残念なことに、どちらも大して美人というわけではない)、昼食を作るときに出たであろう「灰」を、庭で育てているサクランボに似た果実をつけるテキラの木に撒いているのが見えた。灰を肥料としているおかげか、毎年豊作のようで、うちにもおすそ分けしてくれる

俺は挨拶として大きく手を振る。

それに気づいたミュラーさんは笑顔で手を振り返してくれるが、クラリーの方は不機嫌そうにそっぽを向き、手を振り返すそぶりを見せない。

そう、俺はクラリーに嫌われているのだ。その理由は、3歳の時まで遡る。先ほども言ったが、メアリとミュラーさんは親友で、良くしゃべっているのだが、俺とクラリーは顔を合わせる事が3歳の時まで一度しか無かった(それもお互い赤子の時なのでクラリーは間違いなく記憶していない)。その原因は、クラリーは気が強そうな見た目をしているが、超がつく人見知りであるからだ。一応、顔を合わせる機会が無かっただけで、クラリーの姿は何度か見たことはあった

それで、クラリーの人見知りにしびれを切らしたミュラーさんが、俺の家にクラリーを無理矢理連れてきたのだが、序盤の序盤、「挨拶をする」という何というわけもない行為で問題が起こった。何度も言うがクラリーは人見知りなので、俺から挨拶をした。クラリーは俺からの挨拶を受けしばらく黙っていたが、ミュラーさんの無言の圧力にビビッてカミッカミの挨拶をした。それで俺は「波風立てないように」と過ごした高校3年間で培った、必殺「”愛想笑い”」をそこで繰り出したわけだが、それが良くなかったようだ。クラリーは俺の愛想笑いを「馬鹿にされた」と勘違いし、ギャン泣きし始めたのだ。愛想笑いが通用するのはもっと大人になってからだ、ということを身に染みて思い知った。それから収拾がつかなくなって、ミュラーさんとクラリーは帰っていったのだが、それからどうにかしてコミュニケーションを取ろうとしても、今日のように無視されてしまうのだ。

俺も隣人とは仲良くしておきたい。しかし今俺は、そんな問題がさほど重要じゃないと思えている。

なぜなら、、、


(「灰」って石鹸になることないか?)


そんなアイデアが唐突に頭に浮かんだからだ








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