生命魔法
「え?」
俺の体は一瞬のうちに加速し、いつもの30倍のスピードを出し、駆ける
「うわあ~!」
隣人(と、言ってもだいぶ離れているが)の家にぶつかりそうになるが、ブレーキをかけギリギリのところで止まり、息を整えてからニコニコしているマッシュのもとへ歩いて戻る
「スゲ~!!これが魔法か~!!」
「すごいだろ~。ちなみに、シュンの魔法も生命魔法だな。」
生命魔法か~。正直火や水などを出してみたかったが、そんな我儘言ってられない。魔法が使えるようになっただけで十分だ。もしかしたら今後使えるようになるかもしれないしね
あぁそういえば、生命魔法のことを知らないふりを忘れずにしないとな。もちろんイメージは小さな名探偵だ
「さっきも言ってけど、、、生命魔法?」
「そう生命魔法。身体能力、自分の体の持ってる運動のしやすさのことな、を上げたり、今シュンが少しだけ走る速さが上がったみたいな感じだな。他にも体を回復させたり、自分だけじゃなく他の人にそれらを行うこともできる魔法のことだよ。でも、生命魔法が使える人でも、自分の身体能力を上げることしかできない人と回復も行える人、他の人にも影響できる人に分けられるんだ。父さんは自分の力を上げることしかできないけどな」
補足だが生命魔法は人だけに適応しているものではない。あらゆる生物に適応している魔法なのだ。父さんは4歳の俺にもわかるように説明するために省いたのだろう。でも、
(俺の速度上昇は「少し」だったか?、、、まあいいや。ちょっと納得いかないけど)
「どうして人によって出来たり出来なかったりするの?」
これは純粋な疑問だ
父さんが言っていたように、人によってどの程度自分または自分以外の生物に影響を与えられるかが違うことは知っていたが、どうしてそのような違いが生まれるのかは本に載っていなかった。
「詳しくは父さんも知らないが、自分の体や相手の体をどれだけ理解できるか、に関係があるらしい。あぁ、あとは自分の周りのマナとどのくらい仲良くできるかにもよってくるらしい。これは完全に体質だな」
そういう理由があったのか。これは俺に有利なんじゃないか?なんせ俺には前世で学んだ体や植物の知識がある。あ、でも知識だけじゃだめなのか~確かに前世にも、勝手に周りに人が集まってくるような奴がいたもんな~それに似たような感じか
「へぇ~。父さんは物知りなんだね!」
「ふん!すごいだろ~でもシュン。お前の方がもっとすごいぞ。4歳で魔法を使えるようになったんだ。」
マッシュは息子に褒められたことと、なにより自分の息子の才能に誇らしさを感じながら、どや顔で返答する
「そういえば僕ってどのくらい早くなってたの?」
やっぱり納得がいかないのでさっきは保留にしたが聞いてみる
あと、この世界での第一人称は「僕」にした。なぜなら「僕」と言う方が「俺」というよりかっこいいということを前世で感じていたからだ。あとなんか俺の好きな清楚系にモテそう
「いつもがコップ1杯の速さだとすると、コップ1杯ともう半分の速さになってたぞ」
俺が1.5倍というのを理解できないだろうという推測でマッシュは説明するが、普通に知っている俺にとっては余計に分かりにくくなっている気がしてしまう
でも1.5倍速くなっただけか~。体感では30倍だったんだけどな。まあこれから努力して30倍以上のスピードを出せるようにしよう
「ありがとう父さん。明日も狩りごっこしようね」
「もちろん」
マッシュは含みを込めた笑みを浮かべて同意する
「父さんは少し森へ行ってくるよ。先に帰っておいてくれ」
ん?どうしてだろう、、、まあいっか
「分かった。気を付けてね」
「うん。気を付けるよ」
俺が家に帰ってからおよそ5分後にマッシュは帰ってきた
家に帰るとマッシュは一目散に、フランを寝かしつけたメアリに、俺が生命魔法を使えるようになったことを報告した
「メアリ、シュンが生命魔法を使えるようになったぞ!」
「シュン本当なの!?」
「うん!僕、生命魔法?が使えたよ」
俺は白々しく、いかにも魔法というものが良くわかっていないという感じで答える
「4歳で魔法が使えるなんてシュンは天才ね」
「あぁ、天才だ。流石は俺たちの息子だな」
「あなた、「流石は俺たちの息子だな」って、私たち大して魔法の才能ないでしょう」
「はっはっは、そうだったな。息子が天才だと自分まで天才だって勘違いしてしまうな」
「ありがとう父さん、母さん。でも僕は天才じゃないよ」
「まあ!この子ったら謙遜しちゃって。もっと自分を誇っていいのよ」
「そうだぞシュン。たとえおまえが天才で無いと言い張っても、4歳で魔法を使えることはすごいことなんだ」
やっぱそうなるよな~。今回の件は少し失敗したなと思う。俺には前世で一度だけ「天才だ」と言われていた時期があったのだが、その時の経験で「天才だ」と周りに思われない方が生きやすい、という考えに至ったのだ。凡人の俺がそんなおこがましい考えを持つことに至った、その経緯を少しお話ししよう
そう、あれは中学一年生の初め、算数から数学になり「正と負の数」に関するテストで、テスト内容が簡単だったという事もあったし、背格好は小さく、くりくり頭で坊主、そして丸眼鏡のいかにも天才という感じの本物の天才、富永君が「テストなんてしょうもない」と言って受験しなかったというのもあり、俺は学年で唯一の100点を取った
もちろん、みんなに自慢したくて仕方がなかったが、中学生特有の「小学生じゃあるまいし」というマインドが活躍し、親や友達にさらっと伝えた。そうしたら(算数から数学へと名称が変更した直後のテストで100点を取ったというが大きいと思うが)友達やクラスメイト(友達が誰かに話したのだろう)、親に「すごいな」とか「天才だ」と称賛された。
次の数学のテストもある程度良い点数を取り「数学の天才」というポジションをとれるようになった。今となってあの程度で「数学の天才」というのは極めて図々しいと思っいるがが、地方の公立中学校クオリティというやつだ。もっとも当時の俺はそのポジションを誇りに思い、そして酔いしれていた。数学のことなら俺に聞けみたいな雰囲気も出していて、その影響も少しはあり、友達や周りの子達が俺にわからないところを聞きに来ていた。
ところが、俺が数学を大して得意でない事がまずは自分で感じるようになり、そして徐々に周りに露呈していった。




