マッシュの速さ
正直、勝てると思う。
それが昨日までの感想でした。
「シュン!全然追いつけてないぞ~」
遊び開始から15分経過したが俺はマッシュを狩ることができていない。マッシュは俺を煽ってくるぐらい余裕だ
俺はマッシュに単純に走って勝つことは諦めていた。なぜなら、ずっと単純に走って勝ことを目標に狩りごっこをしてきたが、3日前も一切追いつくことができなかったし、今回は何でもいいから勝つことが目的だからだ
だから昨日、俺は今まで遊んできた中で見つけたマッシュの逃走コースの傾向やどういったタイミングでマッシュが減速するかなどを元にイメージトレーニングをし、勝負をかけるタイミングを練った。
しかし今回、マッシュは俺が勝負するというタイミングで何故か加速した。例えば、マッシュは右に曲がるときは大して減速しないのだが、左に曲がるときは少しだけ減速する(昔左足を怪我したのだろう)。俺はマッシュが常に左曲がりになるように追いかけるコースを取り、マッシュの速度が常に落ちるようにしようとしていたのだが、いつもなら減速するところが今日は一切減速しないし、むしろ加速しているのだ
「ギブアップするか~?」
「まだまだ!」
と、マッシュの挑発に乗っかり、続けて5分くらい追いかけ続けるが一切追いつかない
もうこうなったら仕方がない、あの手を使うか
「あ~もう限界!」
俺は大の字になって寝そべる
「お~いシュン。やっぱりギブアップか?」
俺はその問いに対し返事をしない。マッシュは俺の様子を見にニヤニヤしながら近づいてくる
10m 9m 8m 7m 6m 5m 4m 3m 2m 1m
マッシュは俺をのぞき込む
「やっぱり無、、、」
よし、今だ!
俺は体を素早くねじりマッシュに当てようと右手に持った棒を振る。
「うおぉ!」
俺のスポーツマンシップのかけらもない一撃をマッシュは間一髪避ける。
くそ!でもまだだ!
俺はマッシュめがけて精一杯の力を込めて棒を投げる
その棒は、俺の攻撃を避けたせいで体制を崩したマッシュめがけて飛んでいくが、マッシュは敢えて倒れることによって回避する
「危ない、危ない。悪くない作戦だったぞ~」
マッシュは俺の卑怯すぎる作戦を称賛してくれる
「父さんいつにも増して速くなかった?」
「おぉ、やっぱ気づいたか」
「うん。さすがにいつもと違いすぎて気づくよ」
「なんでか知りたいか?」
「教えて!」
「それはズバリ、、、」
「それはズバリ?」
「魔法だ!」
「魔法!?父さん。魔法って何?」
おそらく魔法だろうという予想はしてはいたがやはり魔法だったか。でも、俺はUFOでも発見したかのようなリアクションを取り、4歳でろくに字も読めない年齢なので魔法のことを知らないということにして、頭脳は大人な小さな名探偵をイメージしてすっとぼけておく。
「魔法ってのはな火や水を出したり、風を吹かせたり、自分や仲間をパワーアップすることができるんだ。父さんは自分をパワーアップすることができるんだ。生命魔法ってやつだな。だから、普通無理なタイミングでスピードアップすることができたんだ」
「父さん、スゲー!」
相変わらず大人げないなと思いながら割と心の底からのリアクションをする。メアリが風魔法を使えることは知っていたが(よく俺の髪を乾かすときに使っていたからだ)、マッシュが生命魔法を間もなしに自由に使えることは知らなかった。
「どうやったら俺も使えるの?」
「う~ん。まだシュンには難しいよな。でも、もしかしたら」
マッシュは息子の期待に満ちた眼差しを受け、そして自分の息子の才能に期待し、普段自分がやっていることを試してみてもらうことにする
「周りに力があることを感じることはできるか?」
いつもやろうとしてるんだって!けど、今回も、、、
「全然感じないよ」
「そうか~、、、気にす」
淡い期待が儚く散った事に対する、ほんの少しの落胆を感じるが、シュンが一番残念に思っているということを察し、慰めの言葉をかけようと思ったところで、自分が魔法を使えるようになった時のことを思い出す。
「す、、、なら、じゃあ次は血が回るのをよく集中して感じるんだ」
「わかった。やってみる」
俺は目を閉じ深く呼吸し全身を血が巡るのを感じ取ろうとする
ダメだ。全然感じ取れない。前世では血が巡るのを感じれる瞬間なんて無かった。その影響か俺は、「血が巡るのを感じることなんて不可能だ」という固定観念を持ってしまっている。固定観念を持ってしまうとそれに囚われてしまうのが人間だ。しかし、そういうときに助けてくれるものは知識と経験、思考力だ。俺は大して賢い方では無いが、考えることは好きだ
(よく考えろ、俊。血の巡りを感じる方法は絶対にあるはずだ
、、、、
、、、
、、
、!)
俺の頭の中にある一つの考えが浮かんだ。
気管を通って肺に送られた酸素は肺胞にまとわりつく毛細血管により血液へと取り込まれ全身を巡る。その酸素の旅をイメージすればいけるかもしれない。待てよ。この世界で俺が呼吸しているものは酸素なのか?ダメだダメだ。雑念よどっかいけーどっかいけー
酸素だと仮定して進めよう。
もう一度大きく呼吸し、「酸素」の旅を想像する。
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「おぉ!!」
血液が違和感と温かさを持ち俺の体を巡るのを感じる
「感じたか!?シュン!」
「うん!感じた!何か温かくて変なものが体の中をぐるぐるしてる」
「いいぞ!それは血とお前の体の中にある「マナ」っていう物の流れだ。じゃあ、そのままその感覚を外に溶け込ませることはできるか?」
「やってみる!」
俺は再び目を閉じ全神経を使って血液とマナの流れを感じる。そして、次は二酸化炭素の循環をイメージし、肺に達した二酸化炭素を単に呼吸として外に吐き出すのではなく、外に混ぜ込むよう吐き出す
それを何回か繰り返すうちに体が暖かくなっていくのを感じた
「父さん。なんか体が暖かくなってきたよ」
「よくやったぞマッシュ!すごいな!」
「ありがとう。でもこれで終わり?」
「あぁ終わりだ」
マッシュが俺を褒めてくれたため成功したことは分かる。てっきり火でも出てくるのかと思っていた俺は体が暖かくなるだけだったことに少し落胆してしまう。
「マッシュ。少し走ってみろ」
「うん、、、分かった」
海で泳いでて見えた大きな魚を追いかけ続け、やっと捕まえたのに外で見るととても小さく、何とも言えない虚無感で動きたくないという状態に近い状態の俺は、マッシュの命令に渋々応じ、走り出す
ビュン
「え?」
そんな虚無感を一撃で吹き飛ばす速度で俺は走り出す




