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転生者と寡夫のエルフ   作者: たこ足配線
中年エルフの旅
41/42

確固

アレイの解説を聞いたチーノは自分の可能性に期待すると同時に、その理論の矛盾点を見つけてしまい失望する


「なるほどね!、、、でも空間魔法を使うのには詠唱がいるよね?僕の魔法は詠唱が必要ないんだ。だからやっぱり空間魔法じゃないんじゃない?」


チーノは自分の考えを否定してもらうことをアレイに期待して話す。そして、アレイにはその期待に応える確固たる自信があった


「チーノ君、魔法というのは詠唱が無くても発動可能なのです」


その言葉を聞いたチーノは顔全体の筋肉を動かし、「え!!??」と性転換したような声を出す


「いいですか、勘違いしている人が多いですが、詠唱というのはマナに干渉するためのものであると考えられていますが、それは違います。詠唱の本当の意味は、」


そこまで話したところで、ドアがトントントントンと叩かれた。チーノは高揚した表情に陰りを落とし、不機嫌を表明するように「いいよ」と低い声で答える

すると、先ほどの執事がドアを開けて姿を見せる


「チーノ様、ご夕食の準備が整いました」


「もう少し後にできないかい?」


チーノは執事の方に頭だけを向けて、駄々をこねるように言う


「普段ならば可能ですが、どうやら明日、ガルシュ様が普段とは少し違った遠征に向かわれるようで、そのため、お食事のお時間は今が良いとのことです。ですのでチーノ様、本日は申し訳ありませんがそのお願いをお聞きすることはできません」


「分かったよ、、、アレイさん、必ずまた今度、、」


アレイに向き直ったチーノはそこまで言って顔を輝かせる


「あ、そうだ!アレイさんも一緒に食べればいいじゃん」


「え、ちょ」


アレイは慌ててチーノを制止しようとするが、それは間に合わない


「ねえルド、ダメかな?」


チーノは年老いて可愛げを無くした眼に必死に愛嬌を持たせて、相変わらず美しい佇まいの執事にお願いする

しかし、執事としてはどうしてもチーノの願望に主観的意見で同意することは出来かねるため、困り果てた顔をし、処遇の対象となっているアレイの方を見る。それはもちろん、対象の口から断って貰うためだ

アレイとしても見知らぬ人と食事を共にするのは気が引けるし、もしその場で明日の遠征について一冒険者として同伴をお願いされるのも避けたいので、断りたいと思っていたのでその視線は丁度良い


「チーノ君、どうやら明日はお父さんが特別な遠征に行くみたいですよ。そういう普段とは違う状況では何が起きるのか分かりません。もしかしたら、お父さんに万が一の事が起きるかもしれません。今日は家族での夕食を楽しむのが良いと思いますよ」


アレイの話を聞いたチーノは、唇を軽く嚙み、悔しそうな表情で「分かった」と呟く


「確かにアレイさんの言う通りだね。今日は家族だけで晩御飯を食べるよ。でもアレイさん、絶対また話そうね。あれの続きが気になるし」


チーノはしわだらけの顔に天真爛漫な笑みを浮かべ言う

事情をほとんど知らないであろう執事は完全に置き去りにされているが、そんなことは執事含め誰も気に留めない


「それではチーノ様、わたくしが冒険者様をお見送りいたしますのでご夕食に向かわれて下さい」


「ありがとうルド、でも僕にも見送らせてよ」


「かしこまりました」


アレイは依頼達成証明書を受け取ると、ルドとチーノに見送られてクラストロ家の邸宅を後にした。そして、今後自分の拠点となっていくであろう宿を探しながら、アレイはチーノとの会話を振り返り、多少の後悔を感じていた


(やっぱりチーノ君のお願い聞いておくべきだったかな、、、)


アレイは魔法の実力についてかなりの自信があった。故に今回の遠征に帯同すれば、例え二十魔族相手でも、チーノの父親が最悪の事態になることは防ぐことが出来ると考えていた。それから、魔領域への遠征はかなりの大冒険であり、その過程で死ねば流石にナーシャに説教されることも無いということも考えていた

しかし、後悔はあれどアレイの意思は強固であった。それはアレイの持つ全ての生に対する思想のせいである


(そういえば、私が冒険者ギルドで見たあの異様な説明会は明日の遠征の事だったのか)


結局、アレイが明日の魔領域侵略について考えたのはその発見が最後となった。そのあと、古めかしいレンガ造りの安宿を見つけるまでの間に考えたのはチーノの魔法の事であった


(また今度チーノ君に魔法を見せてもらいたいな)


その日はそんなことを呑気に考えていたアレイだったが、無事ホーンラビット魔物個体の無傷狩猟を終え、その他の依頼もこなした次の日から三日経った日の夜、その願いが叶えられそうもないということを噛み締めることになる

アレイがクラストロ家を訪れた日から四日後、アーチャの街には喜び、悲しみに打ちひしがれる各地の冒険者、浮かない顔の騎士(その中には王家直属の騎士もいたようだ)、それから、200人ほどの困惑した様子の人々が帰還した。ただ、その中にガルシュの姿は無かった、、、

それとこんな噂が立った。どうやら一人の少年が魔領域の奥へと姿を消したらしい








二十魔族の討伐は次の日にしました

それからこれで二章は終わりなので確認作業に入ります。そのため、また三週間ほど投稿をお休みします。すみません

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