チーノ君の依頼3
「え、ギフトが無い?ってことはもしかして、チーノ君が掛けられたのは禁忌の類ですか?」
アレイはチーノから聞こえた予想外の言葉に、呪詛者自身に強い負の代償を求める「禁忌」をチーノは受けているのではないのかと推測する。しかし、その推測はチーノによって間髪入れずに否定される
「いや、僕が受けたのは呪いだよ」
「ならどうして、呪いの代償であるギフトを受け取っていな、、、あ、」
アレイはチーノに説明要求をしている途中で、どうしてチーノにギフトが与えられていないのか気が付く
「もしかしてですが、お父さんが受け取ったのですか?」
「うん。そうなんだ。一応、お父さんが掛けられた呪いだからね。でも、僕にギフトが無いっていうのも含めて呪いっぽいんだよね。お父さんそれで苦しんでるし」
(あぁ、なるほど。ガルシュは相当な親ばかなんだろうな。でももし私とナーシャの間に子供が出来ていたら、絶対私も親ばかになっていただろうな、、、)
やはり、何かとナーシャ関連の空想をしてしまい、悲愴に胸を突かれるが、今はアレイの心をある好奇心が占めていたため、何とか防ぎ、切り替えることに成功する
「そういうことですか。質問攻めで申し訳ないのですが、ちなみにお父さんはどんなギフトを受け取ったのですか?」
呪いに苦しんでいる親子の住まいで、好奇心に駆られることにアレイは若干の罪悪感を抱くが、質問せずにはいられない
「気にしないで。どんどん質問してくれていいよ! でも、お父さんが受け取ったギフトは内緒にしてくれって言われてるんだ。ごめんね」
「いえいえ、普通そうですよね。こちらこそ、遠慮もなくそんなことを聞いてしまって申し訳ありませんでした」
アレイは内心非常に落胆したが、先程の挨拶の時とは違い、今度はそんな表情を見せることなく謝罪する
そして、アレイはまだ一口も口を付けていない、目の前に置かれた薄紅色のジュースを飲み、「そろそろ再開しますか?」と、チーノに話の再開を提案する
「うん!整理できたし、続きをお願いするよ」
「では、かび臭いベッドで寝た後の話から始めます。私が目を覚ますと、私の寝ているベッドの横にあるもう一つのベッドに私を助けてくれた老女が眠っているのが見えました。体を起こすと、まだ頭痛や倦怠感はあるものの、私の状態はかなり良くなっているのが分かりました。そして一晩寝て、かなりまともな思考ができるようになった私は、何事もなく翌朝を迎えられた幸運を奇跡に思いました。ただこの時の私は、助けてくれた老夫婦のことを疑っていました。もしかしたら、老夫婦が私がこの家にいることを言いふらし、家を出たら昨日の様に囲まれている、なんてことがあるかもしれないと本気で考えていました。だから、私は早急に家を出ていくことに決めました。怠い体を動かし、おばあさんを起こさないように静かに寝室を抜けだしました。そして、そのままこの家を出ようとしたのですが、すっかり忘れていた老女の旦那さんと寝室のドアを開けた時に、ばっちり目が合いました。村を抜け出して初めの日で人間に捕縛されそうになったりして、その時の私は色々と疑心暗鬼に陥っており、錯乱していたため、私は重たい体に力を入れ、急いで家から出ようとしました。しかし、そんな私にお爺さんは「そんなに怖がらないで大丈夫じゃ」と声を掛けてきました。もちろん、その当時の私はそんな言葉を信じるはずもないので、無視して家を出ようとしました。一瞬で出入り口のドアの前に移動し、押し開けようとしましたが、そこで私は絶望しました。ドアが開かなかったのです。それは単に、私の村には無かった文化である「施錠」がされていただけだったのですが、当時の私はそんなことを知るはずもなかったのです。私はそこで、村の考えは正しかったのだと思ってしまいました。ドアを壊して出てやろうという考えももちろんありましたが、これは村の考えに背いた私に対する罰だと感じ、お爺さんの方を向き、口を手で塞ぐ降伏の合図をしました。そんな私を見てお爺さんは慌てた顔をして、「トイレに行け」と言ってきました。私は、狭いトイレで私の身動きを取れなくさせるんだ、という妄想を抱きながらお爺さんが指差す先の扉の先に、体が昨日よりは良いとは言え、怠かったのでゆっくりと進みました。そんな私を見てお爺さんの顔には緊張の表情が浮かんでいました。そして私は扉を開け、その先がトイレであったことに一縷の希望も打ち砕かれた私は、その中で立ちすくみ、お爺さんの次の指示を待ちました。しかし、お爺さんは私から目を逸らすだけで何も、言ってきません。不安と恐怖、悔恨でいよいよ待ちきれなくなり、お爺さんに私はこれから何をすれば良いか聞きました。お爺さんは私の質問に対して、目を逸らしたまま言いました。「いや、あんた吐きそうなんじゃろ?」。私はお爺さんから出てきた言葉の意味が本当に分かりませんでした。しかし、必死に理解しようとしていると、先ほど、村独自の降伏の合図として口を手で塞いでいたことを思い出しました。それで私は、この後の展開が一切読めず、行動の道標をお爺さんに求めるためにも、それから誤解を解くためにも、私のあの時考えていたこと、そして今考えていることをすべて話しました」




