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転生者と寡夫のエルフ   作者: たこ足配線
中年エルフの旅
33/42

チーノ君の依頼1

1ポライト→1.5メートル

(良かった。2年前と何も変わらないみたいだ。これなら早く終われそうだ。あ、しかし今日はもうこの依頼以外できそうに無いから、早く終わってもあんまり意味はないか)


2年前と依頼内容が変化していない事と、そもそもこの依頼があった事という二つの自分の幸運が、然程意味を持たないことに気が付き、アレイは微妙な気持ちになる


「そんないきなり言われても困りますよね。少し考えてもらって結構です」


アレイが微妙な様子であることを、違う意味で捉えたチーノは慌てた様子で、アレイに声を掛ける

その言葉を聞いたアレイは、既に決めていた話す内容をすぐに語ろうと考えるが、依頼内容が楽であることを知って来た奴だと思われたくないという変なプライドが邪魔をして、チーノの言葉に甘え、考えているフリをし少し間を置くことにする

、、、、

間を置くことにしたは良いが、こういう時間が自分は苦手であることを思い出したアレイは、結局ほとんど間を置くことができずに語り始める


「私の冒険者になる前の一番の冒険は、、、」


ほとんど考える時間を取らずに話し始めたアレイに、チーノは「この人も知ってたか」と無邪気に考えるが、そんなことを考えたのは一瞬で、イケメン中年男性がどんな話をするのか、わくわくが抑えられないといった様子で体を揺らし始める


「私が大人に成りたての頃でした。私はある村で育ったのですが、幼いころからその村の人達と意見が合いませんでした。例えば、村の外の人達は劣っているから関わらない方が良いという考え方や、その村の村長の意見に必ず従う必要があるという村の決まりなどです。それで私は成人の儀を終えてすぐに、その村を抜け出しました。少しの後悔もありませんでした。なぜなら、親は村の人達とすぐに揉め事を起こす私を嫌い、従順な弟だけを好いていましたし、気の置ける友など一人もいなかったからです。ちなみに弟も私を嫌っていました。当時の私は、なぜ弟にも嫌われているのか分かりませんでしたが、今考えると私のせいでいじめにでも遭っていたのでしょう」


チーノはアレイの話を相変わらず横に揺れながら、目を輝かせ大きく相槌を打って聞いている


「村の人達はプライドの高い人達で、自分たちの手で私を追い出すことは嫌がりましたが、自分から出て行ってくれるなら大歓迎だったためか、村を抜け出すことは入念な計画を立てた私が馬鹿に思える程、すんなりと成功しました。そのため、そこまでは大した冒険ではありません。抜け出したあとが大冒険だったのです。私は村の外の事をほとんど知りませんでした。知っていたことは、偏見で語られた村の外の人達の人柄や、お金を使う、などのごく一部の生活だけでした。それで、私の村は森の中にあるのですが、村を抜け出し、そして森を抜け出すと、ある一つの町がありました。そこに着くとすぐに、いくつかの猟奇的な視線を感じました。その時の私は、気のせいだと思って考えないようにしていました。そうしたのは、きっと外の人々は欲深く、私達の様な高貴な者を捕縛しようとする、という村の意見を否定したいと思っていたからでしょう。しかし、その日の夜、私は村の考えが一部正しいことを嫌でも認めることになります。村を出てきたばかりの私は、お金を持っていなかったため宿も取れず、その町を流れる小さな川に架かる橋の下で眠る事にしました」


アレイはちらりとチーノの様子を見ると、次の展開が楽しみで仕方ないという様子が伝わって来て、話の外枠は変えていないにせよ、設定を微妙に変えて話している事に多少の罪悪感を感じる。ただ、自分がエルフだとバレる訳にはいかないのでそのまま続ける


「そんな無防備な私は異様な気配に目を覚ましました。どうやら囲まれているようでした。そして、すぐ傍には、大体5ポライト先くらいでしたか、囲っている集団のリーダーと思われる男がメタルスパイダーの糸で作られた網を持って立っていました。その男は私が目を覚ましたことに気が付くと、慌てて私目掛けてその網を投げてきました。私は半覚醒状態の体で間一髪、それを避け、すぐに正確な状況把握に努めました。呼吸の数、足音の数から人数の把握をし、それが聞こえてくる方向から、各人の位置を把握しました。これらの情報から、一つの事実が判明しました。それは、逃げ場が結局どこにも無いということです。驚くほどの大人数に囲まれていたようです。しかし、目の前にいる網を外して明らかに動揺し、苛立っている男の後ろは人がいる気配は無かったので、そこから逃げることにしました。今ならそんな回りくどい事はせずに、町の外に逃げるために最も出口に近い場所にいる障害を吹き飛ばすでしょうが、その頃の私は自分の考えを否定されるのが怖く、村の外の人々をまだ信じようと思ったのでしょう、出来るだけ危害を加えない方法を選びました。少し横にずれ、角度を付け、生命魔法と風魔法を使い一瞬で男の背後を取り、その勢いのまま川沿いを進んで逃げました。後ろからは「アレー、追え」という声が聞こえてきました。私は誰にも名乗っていないのになぜ、私の名前が分かるのか怖くなりました」


アレイの華麗な逃走劇を想像し、チーノは口を大きく開け、驚嘆する





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