異世界始めたてのあなたへ
落ちてきた紙をはねのけるようにして、仰向きからハイハイの姿勢に体勢を変え、俺の顔から発射されていった紙の方へ向かう
(こんな紙今まであったか?)
そう思いながら何も書かれていない紙面になっている紙を、落ちてくるときにちらりと見えた、インターネットサイトのしょうもない広告を彷彿とさせるような題名らしきものが、書かれている紙面へと変える。そちらの紙面には、やはり落ちてくるときにちらりと見えた、<異世界始めたてのあなたへ>という主題であろう太文字と、読めないというよりも理解できない、文字であろうものが一番上に書かれていた。
(大体題の隣にあるのは著者名だよな、、、)
俺はそこで神様の言っていたことを思い出す。
「一応名前はありますが、、、あなたたちでは理解できません。」
多分この紙は神様が書いたんだな。題名もうちょいひねれただろ
転倒した痛みへの怒りを、普段なら気にしないであろう題名にぶつけ、下に続く文を読み始める
まず、この世界はある神によって作られました。その神は今、メリスと言う名称でこの世界の人々に信仰されています。ち、な、みにその神は私の親しい友人です。そのため私の干渉も多少は許されています。その一例としてあなたはわたしの加護が受けられます。今、あなたが受けている加護はLv.1ですが、この世界で種族関係なく、「真っ直ぐな善意」を持ち、困っている個体または集団を助けたらレベルが上がっていきます。加護はLv.5が最大です。
そして、気になっているであろうステータスですが、メリス教の教会に行き、そこに置かれている水桶をのぞき込めば見られるようになっています。
さて、この世界はあなたがずっと憧れていた剣と魔法が支配する世界です。当選の時、あなたは異世界に行きたいということしか願っていなかったですから、テキトウな世界に送っても良かったのですが、当選者に「それは失礼ではないか」と思いまして、ちょうど親しい神もいたのでこの世界にしました
しかし、そういう世界には、ご存じかと思いますが「魔物」という存在がつきものです。私の加護がありますがLv.1だと精々、「風邪をひきにくい」とか「じゃんけんの勝率がほんの少し上がる」とかそのくらいです。そのため、死なない為に強くなる必要があります
あなたは無双やハーレムに嫌気が差していたようなのでそういったオプションは付けていません。ですから転生者だからといって初めから強かったり奇跡的にも生き延びたりとかはありません
(ちなみに、「奇跡的」が「必然的」になるのは加護がLv5に到達してからです)
強くなるための方法はいくつかありますが一つ以外は装備やアイテムに依存するので強くなるまで不可能です。そしてそれ以外の一つですが察していることでしょう「努力」です。それしかありません!
では、異世界生活頑張ってください!
「ふう~」
一息に読み終えた俺は大きく息を吐く。ハイハイの姿勢から再び仰向けになり、書いてあったことを頭の中でまとめる
まず、この世界が剣と魔法の世界であったことを喜ぼう やったね!
そして残念なことに、俺にはチート能力が与えられていないらしい。あ、でも、言語理解能力はチートっちゃチートか
あとは、やっぱ加護の話が気になるな。今の俺の加護、へぼすぎないか?「真っ直ぐな善意」を持って、困っている対象を助ければレベルが上がっていく、って書いてあったけどそういう抽象的な言い回しの基準ってどんなもんなんだろう?色々と探っていく必要がありそうだな。
しかしステータスって「ステータスオープン」とか言えば開くものじゃないのか?
(この世界での見方は割と面倒くさいな、、、)
何はともあれ、俺は必死に努力しないと死ぬって事は理解した。
でも、この体ではろくに動けはしない。
だから俺は幼少期の間はとにかく知識をつけることと、柔軟な体を作ることに励むことにした
そして月日はまた流れ
俺は家の本棚にある本を粗方読み終え4歳の誕生日を迎えた。前世の俺であったらライトノベル以外の本を読むなんて考えられないことだが、なんせ娯楽というか、暇をつぶせるものがそれしかない。てか、知識をつけないと自立した時に一瞬で死ぬ
寝る前にメアリは俺に読み聞かせをしてくれるが、大体読んだことあるやつなのですぐに寝てしまう
あ、でもそれが目的だからいいのか。でも一応心の中で謝っておこう
(メアリ、ごめんよ)
本からは動植物の知識や魔物の知識、剣の型、魔法の知見(これについての本を見つけた時はブヒブヒどころではなかった)、そしてこの村がいびつであることを学んだ。
まず、魔法のことだが大体の個体が使えることには使えるらしい
それでその過程だが、大抵7歳くらいになると大気中に含まれる「マナ」を無意識的に感じ取れるようになり、魔法に関する基礎的な学びによって魔法が使えるようになる。その後、魔法を使用した頻度や魔法に関する高次的な学びによって、人によって限界はあるものの、徐々に魔法練度が上昇していくようだ
それを知った時から必死にマナを感じようとしているが、今のところ感じ取れるようになる気配が全くない。
そして、やはり「詠唱」というものが必要らしい。この世界では、「言葉」という事物には「マナ」に干渉する力があり、最も効果的に干渉できる言葉が詠唱されている文字列なのだ
魔法を行使するためには、詠唱による「マナ」への干渉と、魔法の効果を具体的にイメージする必要があるのだ
もう、早く使いたくて仕方がない
それから、魔法の属性は大きく分類すると火(熱)・水・土・風(空気)・生命・光・闇・時間・空間の9種類に分類できる。そして、それらを組み合わせることで生まれる数えきれないほどの魔法がこの世にはあるらしい
ただ、個体によって使える魔法は限られており、一種類しか使えない個体がほとんどだそうだ。中には、数種類の魔法を使える個体が存在し、そういった個体が魔法の数を膨大にしている
しかし、個体によって魔法に関する差が生じる理由は未だにわかっていないらしい。そして、やはり魔法の中には階級がある。その階級は大きく分けて初級、中級、上級、聖級、王級、神級の六つに分けられる。
魔法のことはひとまずこの辺にしておいて、次にこの村がいびつであることだが、とりあえず、一応外部との交流はあるらしい
しかし、村全体で交流するのではなく村長一人だけが外部と交流を行っているようだ。そして、誰も村長の姿を見たことが無いらしい
この時点でそこそこいびつなのだが、それらのことに俺の両親はなんの疑問も持っていない。それは、この村ではそれが当たり前のことで、村長以外の村人にとっては、この村とこの村周辺だけが世界である、ということなのだ
それから、これは俺の推測なのだが、どうやら村長は外部との交流によって知識的なもの(技術や本)を取り入れているようだ
俺が読んできた本達は全部村長が執筆したということになっているし、俺の家にある本だけでもかなりの数なのに、それに加えてこの数の本が各家家にあるらしい。こんな膨大な数の本を一体どのようにして一人で執筆できるというのだろうか
そして、紙はどうしているのかというと、村で作っているそうだ
そういったことから「本や製紙技術を輸入している」と推測するのは極めて自然だろう
なにはともあれ、この村は村長に対する依存度が高すぎる。故にいびつだと感じてしまうのだ。
この村の歴史が気になり、そういった本があるはずだと思い、探してみたが歴史が書かれた本は見当たらず、村のシステムに関する本しかなかった。両親や祖父母、さらに曽祖父母に何気なくきいても生まれた時からずっとこんな感じだ、ということしか分からなかった。
(魔法のことといい、村のことといい気になることばかりだ。でも、もう家の本は全部読み終わってしまったからな、、、よし!体力をつけよう)




