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転生者と寡夫のエルフ   作者: たこ足配線
中年エルフの旅
27/42

久しぶりの依頼達成

確かに、ダ・ビー駆除の最も一般的な方法は「大声を出す」という方法だが、実はそれ以外にも方法はある

そもそも、「大声を出す」という方法が好まれているのは、ダ・ビーは人間の顔くらいの大きさの割と巨大な虫なのだが、その大きさに反して人間の目では追えないくらいの速度で飛び回る。そのため、斬る、殴るなどで殺すのは一般人は勿論、並みの冒険者では骨が折れるし。そして、魔法で殺すにしてもピンポイントで狙い撃ちにするのは、斬る、殴ると等しく非常に難しいからだ

しかし、アレイはダ・ビーの羽音に勝れるほどの声量を出すことが出来ない。たとえ今の胸の内の哀しみを叫んだとしても、声が裏返って終わるだけだ

だからアレイは「大声を出す」以外の方法で、ダ・ビーを駆除する


スー、ハー。


目を閉じ、一つ深呼吸をしたアレイは巣とその周辺を飛び回るダ・ビーが氷漬けされるのを想像する

それと同時に頭の中にその規模の氷魔法(上級)の詠唱を紙に版画するように写し、それを体外のマナと調和させる



そして、アレイが目を開けるとそこには想像通りの光景が広がっていた


「ふ~」


一種の緊張状態にあったアレイだが、魔法の成功を確認し一息つく

その時、家の中から慌ただしい音が聞こえてきた。しばらくすると扉が開き、口髭を生やし、目の周りに隈が出来ている小太りの男が出てきた。その男は氷漬けにされた巣とそのそばに立つアレイを眠そうな眼で見るや否や、アレイの下に小走りで近づいてきた


「あれはあなたがやってくれたのですか?」


男は目を見開き、感激した様子でアレイに尋ねる


「はい。勝手にやってしまいましたが大丈夫でしたか?」


「もちろんですとも」


「そうでしたか。安心しました」


「いらぬ気を使わせてしまったようですね。しかし、今はちょうど妻が外出中ですので、妻の分までお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」


「いえいえ。では達成証明紙を貰っても良いですか?」


アレイは突然出てきた「妻」という単語に胸がキュっとするが、そんな胸中を表情に出すこと無く、ギルドに達成証明として提出する紙を依頼主に要求する


「あ、そうですね。少々お待ちください。今取ってきます」


男は思い出したように小走りで家の中に戻っていく。それから少しして、手に丸めた紙を携えて家から出てきた


「すみません、お待たせしました。ではこれが達成証明紙となります」


そう言って男はアレイに達成証明紙を渡し、言葉を続ける


「何より、これでやっと満足に睡眠がとれます」


男の本当に嬉しそうな様子にアレイは多少の達成感を感じる


「それは良かったです。では、私はこれで失礼します。ダ・ビー達貰っても構いませんよね?」


そう言ってアレイは氷漬けになっているダ・ビー数匹とその巣を風魔法で浮かせる


「ええ、全然構いませんよ」


男は驚嘆と困惑が混ざった声で答える


「ありがとうございます。あ、花の量は程々にしましょうね」


「はい気を付けます。本当にありがとうございました。お気をつけて!」


男は深々と頭を下げ、立ち去るアレイを見送る




一つ目の依頼を達成したアレイは、氷漬けになっているダ・ビー達とその巣を運びながら次の依頼達成に向かう

その間に町の人達に変な目で見られたのはアレイにとって少し恥ずかしいことだった


(虫の氷漬けを運んでたらそうなるよな~)


そんなことを永遠と考えていたら目的地である、エンビン大草原に到着した

エンビン大草原はアレイが冒険者再登録をした冒険者ギルドがあるアーチャの町のすぐ隣にあった

エンビン大草原に到着したアレイは、早速二つ目の依頼に取り掛かる、ということはせずに、運んできた氷塊を火魔法で溶かし始める


しばらくしてアレイは氷を完全に溶かし切り、地面に横たわって微動だにしないダ・ビー達に生命魔法と火魔法の混合魔法を掛ける

アレイが魔法を掛けた途端、ダ・ビー達は足をぴくぴくさせ、動き方を思い出したかのように慌ただしく翅を動かす。そうして、全部のダ・ビーが飛べるようになると、町で何か恐ろしいことがあったかのように、集団で町とは反対方向へ飛び去って行った


(これでよしと)


アレイは飛び去って行ったダ・ビーの集団を眺め、満足そうに頷く

エルフは種族として「自然第一」という思想を共通して持っている。エルフ社会に馴染めなかったアレイもその思想の大半は肯定している。ただ一部、自分と親しい間柄の人間達は自然と同じくらい大切だ。ナーシャやシラに関しては自然よりも大切だ

しかし、その一部を除いた有象無象達はアレイにとってどうでもいい。ただ、精一杯生きている人間をアレイは自然の一部として捉えている。生きるための生命活動は自然界の摂理であるからだ

アレイが許容しないのは、既に満たされている心を更に満たそうとし、自然に手を出す行為だ

例えば、腹を満たせるだけの食料に困っていないのにもかかわらず、美味だからと言って自然動物を狩猟して食べるという行為だ

だから、本来アレイにとってホーンラビット二頭の狩猟という依頼は受けるに値しない依頼であるのだが、今回は少し事情が違ったため、受けることにしたのだ


(では、ホーンラビット二頭の狩猟を行いますか)













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