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平凡転生者と寡夫のエルフ   作者: たこ足配線
ありがたい不自由
18/25

本気の狩りごっこ1

マッシュの開始の合図で俺は生命魔法を一瞬で発動させ、初めの踏み込みでほぼ最高速度に到達する。どうやらマッシュは、すでに最高速度に到達しているようだった。俺とマッシュの差が開始した位置から少しだが開いている。


(っち。俺が合図すればよかった)


そんな小さな後悔が頭をよぎるが、そんな後悔は風と共に、スラスラと疾走する俺の横を流れていく


開始から10秒ほど経過したが、俺とマッシュの距離は開く一方だ。それはいつもの事なので、焦りは一切ない。俺はマッシュが曲がるコースを地形的なヒントと経験から予測して、そのコースにショートカットする。そういう事を繰り返して1分が経過した


(流石に息が上がってきたな)


間違えなく、ショートカットをする事によってその一瞬は距離を縮めることが出来ている。しかし、その一瞬を過ぎてしまえば、四つん這いになっていたとしてもマッシュのスピードは俺より少し早く、また距離を少し広げられてしまう。そのため、全体的にみたらあまり距離は変化していない。

マッシュの表情はよく見えないが、たぶん、余裕の表情だろう

確かに、俺とマッシュ(四つん這いの姿)のスピードはマッシュの方が少し速いが、そこに大して差はない。けれど俺とマッシュには持久力という絶対的な違いがあり、それが、俺の勝利を絶望的にしている

でもその勝利可能性のあまりの低さは、何の小細工もしないでむやみやたらに追いかけ続けた場合だ。最近の狩りごっこは、普段の成筋トレの成果の確認と原点回帰をして、体力増加を目的にして行ってきたが今日は違う。俺の健康のためにどうしても外に出たいのだ


突然だが、人という生き物は「幸福を得る」という理由よりも「不幸を避ける」という理由の方が行動を起こす動機となりやすい。シュンもその一例に漏れることはない。シュンが小細工をしてまで勝とうとしたのは、今回の「ミネラル不足による健康被害が怖い」という理由と、「感染症が怖いから手をキレイにしたい」という理由の二つだけだ。その他にも、「剣が振れるようになる」といった動機もあったはずだがシュンはそのために小細工をしてまで勝ちたいと思うことはなかった。ポジティブな動機でストイックな行動に移せる人が成功を手にするものだ。だから、シュンは凡人なのである



(やっぱり、単純に追いかけるだけじゃ勝てそうにないな。それじゃあ、一つ目の仕掛けといきますか)


その先は小高い丘となっていてマッシュがカーブせざるを得ない地点まで追いかけ続け、マッシュが方向転換する一瞬を狙い、棒を持つ右腕に籠めていた力を一気に開放する

俺の胸の位置ほどの高さから投げ出された棒は、その高さを変えることなくマッシュめがけて高速で飛んでいく。しかしマッシュは「分かっていた」と言わんばかりに体を地面に伏せその棒を難なく避ける


(流石に当たらないか~)


これで勝てると思っていなかった俺は、小高い丘の斜面に突き刺さった棒を投げたと同時に取りに行く

マッシュは棒の行く先なんて気にせず、一瞬で体勢を四つん這いにして逃げる

今の作戦が失敗したことで、より距離が開いてしまったが気にすることでは無い

それは、鬼ごっこを思い出して欲しいのだが、限られた範囲内で行う場合どれだけ距離が離れたとしても、しばらく時間がたってしまえば、ある一定の距離に落ち着くからだ

俺は再び、ある一定の距離になるまでマッシュを追いかけ続ける

斜面に突き刺さった棒を回収してから、二分ほど追いかけ続けようやく一定の距離になった


(ちょっと疲れてきたな)


五分近く全力で走っているため、自分の中の疲労が見え始める

しかし、そう感じるのは俺だけのようで、一方のマッシュは(一応息が弾んでいるようだが)余裕であることに変わりはないようだ

その事実に動揺や落胆をしている暇は無いので、二つ目の仕掛けの準備をする。準備とは言っても、すでに仕掛けてある場所に誘導するだけなのだが。まあこれに関しては、開始した時点から狙ってはいるのだが、なかなかマッシュはその場所に行ってくれない

しかし、ようやくその付近にマッシュが近づいていっている。だが、このまま直線で走られてしまったら、罠を右にして通り過ぎてしまうので、少し進路を変えてもらう必要がある。そうしてもらうために俺は大きく左に膨らんで追う。マッシュが俺のことを確認したら、コースを少し右にズらすだろう


(完璧だ)


ついつい自分の完璧だと思える作戦に、にやついてしまう

しかし、にやついたのも一瞬で俺は徐々に焦りを感じてきている。なぜなら、マッシュは俺の方を振り向いたはずなのに進路を一向に変えないからである。


(やばい。罠にかからないかもしれない)


数秒後、俺の不安は見事に的中して、昨日俺が必死に掘った小さな落とし穴(もちろん草を被せてカモフラージュしてある)を右手に通り過ぎていった


(くっそ。けど距離が縮まったから良しとするか)


俺は作戦の失敗をポジティブに捉えることにする

だが、縮まったといっても5mで、まだまだ追いつけなさそうである事には変わりないのだが。しかし、膨らみながら追いかけたことで、結果的にショートカットすることに成功した


!!


そこで俺はある考えに達する


(これを何回も繰り返せば、罠に掛かるか、それか追いつけるかで勝てるんじゃね?)













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