第44話
教会の方角に向かって、俺達は銃弾をばらまき続けた。
空は橙色に染まり、これから夜になる。
その前に何としてでもケリをつけたかった。
「まずは1人目だ……くそ、うじゃうじゃいやがる」
「けど中隊規模ですね……塹壕の中にも殆ど敵が居ないように思えます」
俺とアヌックは小銃で狙撃を繰り返し、敵の数を減らしていく。
俺が5人仕留めている間にアヌックはその倍は仕留めている。
凄い女だよ。
「よし進め! 教会を制圧しろ!」
上官殿の命令で俺達は教会へと突き進む。
その頃になると殆どデュッセル軍は抵抗をしていなくて……
だから油断した。
教会の門を破壊して、中に雪崩れ込んだ俺達が見たのは夥しい数の負傷兵だった。
「救護所代わりにされてたんですね」
「奴等負傷兵が居たからここを守ってたのか。それにしたって数が少なすぎるが」
教会の中の衛生状況は塹壕内よりも酷いんじゃないかと思えるような状態だった。
ここに集められたデュッセル軍の負傷兵たちは世話をする人間が居ない、あるいは足りないせいか大小便が垂れ流しになっていたり、傷口がそのままになっていたりする者達ばかりだった。
よく見れば死体もそのままになっている。
「周囲に注意を向けておけ! まだ敵が残ってるかもしれん、油断するな!」
と、俺達の上官殿はそう言ってきた。
俺とアヌックは教会の外に出て、残っているデュッセル兵が居ないか探した。
石垣の他に外には崩れた倉庫もあった。
生き残りが隠れるとするなら多分ここだろう、俺はそう思って進んでいった。
「誰も居ない……か?」
倉庫の中を覗き込んだ、その時だった。
「かっ──」
銃声と共に、俺の後ろにいたアヌックがその場に倒れた。
「アヌック!!」
石垣の裏に隠れていたんだろう、1人のデュッセル兵が小銃を構えて立っていた。
「この野郎! ぶっ殺してやる!!」
デュッセル兵に向けて、俺も拳銃で撃ち返した。
だがその兵士は止まらない、俺の撃った弾も重要な臓器が詰まった腹や頭には当たらず、その結果俺はデュッセル兵に突進されて小銃の先に付いた銃剣を突き刺された。
「がぁぁぁっ!! クソッ! アヌック!!」
俺は脇腹に銃剣をもらい、その場に倒れながらアヌックの名前を呼ぶ。
痛い、ただただ痛い。
だが敵はたかが一撃で諦めることは無い、すぐに銃剣を抜いて、止めを刺そうと次は心臓目掛けて突き刺そうとしてくる。
「死んでたまるか!」
死ねない。
まだ死ねない。
弟と一緒に、たった1人生き残った分隊の仲間……アヌックも一緒に故郷に帰るんだ。
だからまだ死ねない。
「アヌック! 生きてるか!?」
突き出された銃剣を手のひらに突き刺して受け止めながら、俺はアヌックの方を少しだけ見た。
アヌックは顎に弾をもらってのたうち回っている。
あの分じゃ致命傷だ。
「退けよこのクソ野郎が!」
「死ねペイルの豚野郎!」
生きるか死ぬか、そんな時だった。
のたうち回っていたアヌックが立ち上がり、こっちに向かって突進してきたんだ。
「にげ……て」
俺に覆いかぶさっていたデュッセル兵に飛び掛かり、俺を助けてくれた。
でもアヌックだって持たないはず。
俺は距離をとって銃を構えようとした、その時に気が付いた。
アヌックの手に握られている手榴弾に……
「ま、待てアヌック!!」
何をしようとしているのか分かっちゃいたが、まず止められなかった。
最後に見たアヌックはデュッセル兵に何度も何度も銃剣で刺され、殴られながらも、血まみれの顔を俺の方に向けて笑っていた。




