第43話
突撃を続ける俺達ペイル軍に対し、デュッセル軍は徐々に後退を始めていた。
数ではデュッセル軍の方が勝ってるのに妙だとは思ったが、俺達が傷つかないならそれはいいことだ。
「アヌック! 生きてるか!?」
「不思議と生きてますよ!」
とうとう俺達はアールス山の麓に存在する陣地を制圧することが出来た。
簡単すぎるとは思いつつも逃げていくデュッセル兵を見れば多少は安堵しても大丈夫なのではないかとも思った。
「レンスは……?」
俺はふと弟のことが気になって周囲を見渡した。
可能な限り弟の側で守ろうと尽くしたが途中ではぐれてしまっていたので気になっていたんだ。
「あそこにいますよ。見たところ負傷はしてないみたいですが」
アヌックが見つけてくれた。
負傷した兵士の側で何か手帳をもらってる、恐らくは遺書か何かだろう。
「どこもかしこも死体まみれだな」
「戦場ですからね」
デュッセル軍の陣地だったここは酷い有様だった。
砲弾で千切れた足が落ちていたり、まだ息のあるデュッセル兵が神に祈ってる。
……まぁそいつは下半身が消し飛んでたが。
「残党がいるかもしれません。気を付けて進みましょう」
「ああ……」
休む間もなく、俺達は先を急いだ。
山を降りた後は平原を行くのみだ。
元々は森があったそこは毒ガスの影響で腐って幹だけになった木が乱立する死の森と化している。
地面は沼を大量に形成していて、そのほとんどが足を踏み入れた人間を飲み込む底なし沼。
「敵は何処に行ったんだろうな」
「偵察した味方によるとここから少し進んだ先の丘に教会があるみたいです。周囲には塹壕も」
「そこにいるわけか」
アヌックは黙って頷くと他の仲間と一緒に歩く。
だが……
「アヌック、大丈夫なのか? 顔色が……」
アヌックの顔を見てみると今まで以上に酷い。
今にも死にそうな顔をしてる。
「余計な心配は無用ですよ。進みましょう」
「……ああ」
どのみち俺ではアヌックの怪我を治せない、どうにもできない。
「……見えてきましたよ。あれが敵の──」
アヌックがそこまで言ったあたりで周囲は悲鳴に包まれた。
突如として前方から銃弾の雨が降ってきたからだ。
俺達は慌てて身をかがめ、朽ちかけた木の後ろに隠れる。
前方に見えるのは一部屋根が落ちた教会と鐘塔、神がいるなら容赦なく罰を与えてほしいが……どうやら神様は不在らしい。
デュッセル軍の奴等の中には教会の屋根や鐘塔から狙撃をしてくる奴もいて、俺達は完全に縫い留められていた。
「この先に行かないと俺達は帰れない。やるぞアヌック。俺は腐っても30機の戦闘機を叩き落した男だ。お前は狙撃で敵の眉間をぶち抜ける女だ」
「やりますとも。生き残るために」




