第42話
俺達ペイル軍の攻撃が始まった。
毒ガス、準備砲撃、機関銃の援護、使える物は全部使い、アールス山の麓にあるデュッセル軍陣地へと塹壕を通って走る。
だが敵だって無抵抗ではない、のこのこ走ってくる俺達に向かってデュッセル軍は砲弾をぶち込んできた。
「分隊長!」
「もう死んでる! 走れ走れ! 前に出ろ!」
俺とアヌックが新しく配属された分隊、そこにいた分隊長が敵の砲弾を受けて四肢がもげた。
飛び散った血を頭から被り、巻き上げられた泥を被り、デュッセル兵の放った銃弾を潜り抜けてただただ前へと進んでいく。
「もうすぐ平地だ! 敵の機関銃に気を付けろ! 水たまりには入るなよ底なし沼になっちまってる!」
どこの分隊かも分からないが俺達もついていくことにした。
小銃を撃ちながら、走った。
「アヌック! 生きてるか!? 付いてこれてるか!?」
「問題なく!」
俺の少し後ろにはアヌックの姿、青白い肌を血と泥で化粧して必死に食らいついてくる。
もうエリアンが居た頃の分隊で生き残ってるのは俺とアヌックだけだ。
生きていてほしい、どこか適当な場所でその綺麗な歌声を聞かせながら安酒でも飲ませてほしい。
「一等兵殿、弟さんについていったらどうですか!? あっちに見えてます!」
「ああ!?」
こんな時によそ見が出来るのは大したもんだと思いながらアヌックが指さす方を見る。
砲弾が着弾した跡に出来た窪みの中に飛び込んで、味方の死体を盾にしつつ銃に弾を装填している。
血まみれだが確かに俺の弟、レンスだ。
「今なら誰も気にしません!」
「いやいい、レンスはこんな時でも俺に頼ったりしない。あいつの所に行くのは戦闘が終わった後だ」
それはそれとして援護はするが……
「うおッ!?」
レンスの向かう先に銃口を向けていたら鼻先を銃弾が通り過ぎて行った。
「よそ見しないでください」
「お前が言うな」
近くにあった窪みに2人で飛び込み、限界まで頭を低く……泥に自ら顔面を埋めるくらい低くして撃ってきている敵兵を探す。
……居た。
真正面にある塹壕の中からこちらに向かって弾をぶち込んできている奴が1人、枯れて半ばから折れた木の後ろに1人いる。
「アヌック、あの木の後ろだ。俺は塹壕の方を狙う」
「了解です」
照準を出来る限り合わせていく、俺は正直射撃は上手くないが、それでもやらないといけない。
俺が震える手で必死になって狙いを定めていると、アヌックが発砲した。
「倒しました! あとはそっち任せますよ一等兵殿!」
「あとはこっちだな。任せろ」
こっちも狙いはついた。
俺は引き金に指をかけ、そして撃った。
弾は見事に敵の首に当たり、ちょっとした血しぶきをあげながら塹壕に消えていく。
「よし行くぞ進め進め!」
「はいッ!」




