第41話
俺達は最後の戦いに向かった。
アールス山の麓にあるデュッセル軍陣地、ここを確保する。
残された戦力は2個大隊、これでかたをつけようというんだからペイル軍は頭がおかしいと言わざるをえない。
俺は懐からレンスと俺の写真が入ったペンダントを取り出すと、それを握りしめて祈った。
神よ、どうか俺と弟を、そしてアヌックをお救い下さい、と……
「この戦いに全てを賭けるぞ! 勇気を振り絞れ!」
俺の分隊から少し離れた場所にレンス……俺の弟がいた。
周囲に集まった味方に渇をいれ、戦意に火をつけようと躍起になっている。
レンスはまだ生きている、アヌックも生きている。
仲間も家族も生きている、俺はまだ、まだ死ぬわけにはいかない。
必ず生きて帰ってやる、たとえペイルが負けたとしても。
「もう爆撃機もなければ戦車もない、砲兵もわずかだ。アヌック、祈りは済ませなくていいのか?」
冗談を投げかけてみたが、アヌックは鼻で笑ってこう返してきた。
「毎度毎度戦闘が始まる前には祈ってましたが……その結果が仲間の死です。もう祈るのはやめますよ」
「そうかい……」
エリアン……モーゼス……
2人ともいい奴だった。
いい奴ほど早く死ぬなんて言うが、だったら俺は最後の最後まで生き残るんだろうな。
レンスの為に分隊の人間をほったらかして逃げようとしてたんだから、なんなら今からでもレンスが心変わりしたなら連れて逃げようとしてるが。
「そろそろ戦闘開始か。弾は十分か?」
「十分ですよ。敵の砲弾にはかないませんがね」
泥を出来る限り落として弾倉の中に弾を詰め込んでいく、いざ足りませんでしたでは話にならないからだ。
弾は込めた、あとはもう何も出来ることは無い。
「……生きて帰るぞ。戦果を上げて、後方に帰って、その腹の傷を治すんだ。美味い飯をたらふく食ってな」
「それはいいですね……特に最後がいい……分厚い肉の塊が食べたいものです」
俺とアヌックが笑い合う。
それとほぼ同時、ペイル軍は敵陣地に向かって砲撃を開始した。
砲撃の音が続く中、俺は前方の塹壕の中にいる弟を……レンスを見つけた。
こっちに気付くでもなく、レンスは真っすぐに戦場を見据えている。
家族よりも国を選べる軍人の鏡のような男だ、俺は心底そう思った。
「砲撃終了と同時に突撃だ! いい戦果を期待してるぞ! ペイル万歳!」
上官殿の言葉に、俺達は気を引き締める。
「……一等兵殿、少し肩を借りてもいいですか?」
「アヌック?」
俺の肩にアヌックの手が触れる、体重をかけてきてはいるが殆ど重さを感じないが……
いよいよ限界も近いんだろう。
「突撃が始まるまで休んでろ。戦場でいよいよとなったら死体をかぶって休んでろ」
「弾丸が雨あられと飛んでくる場所でですか? 現実的じゃありませんね」




