第22話
翌日の昼、俺達は塹壕を掘りながら敵の監視をしていた。
停戦中とはいえ敵が攻めてくる様可能性もあり、監視は続ける必要性がある。
「いつまでこうしてりゃいいんですかね。そもそもこの戦争はどうなってるのか」
俺はエリアンに愚痴をはいた。
仕事の合間に仲間に弟のことを聞いて回ったりもしたが、結局情報はない。
西にいる、という情報だけ、だが探しに行きたくても目の前のクソ忌々しいデュッセルの連中と上官がそれを許さない。
状況が動かない……俺はそれがたまらなく嫌だった。
「……一等兵、ひどい顔をしてるぞ。そんでもって俺に八つ当たりされても困る。俺も立場はそれ程高くないんだからな」
「だったらアヌックが歌ってたとき、止めなきゃよかったじゃないですか。止めなくても立場が高くないなら、叱責されることもなかったでしょうに」
自分で言うのもなんだがガキの駄々だ。
「不貞腐れてるな、全く。そんなことなら、この情報も要らんな」
「この情報?」
その言葉に、気になった俺はエリアンの方向を見てみた。
エリアンはにやつきながら雑誌をひらひらと振っていた。
娯楽用に回し読みされてる雑誌だが……それがなんだというのか?
「見たいか? 一等兵」
「読んだなら早く回さないと、またひどい目に合いますよ? 他の隊では喧嘩になって銃殺された奴もいたとか」
俺の駄々もそうだが、エリアンのそれも大概だ。
たかだか雑誌一つに食いつくとでも思ってるのか?
「弟の写真が載ってると言っても、お前はこの雑誌を欲しがりゃッ!?」
先に言えってんだ。
俺はエリアンに飛びかかり、雑誌を強奪したあと中身をめくって見ていった。
そして一枚の集合写真に、俺は目を奪われる。
「せめて普通に取っていけ! 熊か貴様は!」
雑誌の集合写真には塹壕の中でネズミを捕獲したんだろうか?地面に大量に並べられたネズミと一緒に5人の兵士が写っていて、そのうちの1人が俺の弟だった。
「おーい、一等兵。聞いてるか?」
写真を撮った日の日付なんかがないものかと見てみたが……ない。
だが写真に写ってる弟はペンダントに入ってる写真よりも痩せてる。
戦地で生活してて太ることはほぼないから、少なくともペンダントの写真よりも新しいのは間違いないだろう。
「一等兵……頼むから無視しないでくれ」
あとは何か……場所を割り出すための手がかりは無いか?
と思って目を凝らしてみてみたが、写真の写りが悪くて詳しいところは見れなかった。
「弟よ……一体どこにいるんだ?」
「一等兵よ……一体俺への返事はいつするんだ?」
うっとおしい男だ。
「えーと……なんです軍曹殿?」
「迷惑そうな顔をするな。せっかく見つけてやったのに」
「手がかりが少なすぎる……これはいつ作られた物なんです?」
「先週作ったらしい。つまり最低でも先週までは生存していたのは間違いない。希望が出てきたんじゃないか?」
「……ええ、それは確かに」
エリアンの言葉に少しだけ安心した。
西には行けないが生存の可能性が強まっただけでも希望が持てる。
「会えるといいな。弟に」
「ええ……」
雑誌の中の弟を撫でながら思いを馳せていると……
「敵兵が接近してくるぞ!!」
敵陣地を観察していたモーゼスが叫び、俺達は一瞬で戦闘態勢に入った。




