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アールス~地獄に最も近い戦場~  作者: 田上 祐司


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第17話

 デュッセルの戦闘機は俺達がいる陣地に向かって爆弾を落とし、機銃を撃ってきた。


「一等兵! あいつらを撃ち落としてやれ! 『英雄』がどうやってできたのか思い知らせてやるんだ!」


 エリアンは俺にそう指示してきた。


 俺も上でハエのように飛んでいる奴らを今すぐにでも黙らせたくて、これには喜んで従った……脳裏には昨日殺された捕虜の顔がちらついていたが。


「ああくそ!」


 いつぞやの再現をしてやろうとして、俺は対空機関砲の所に向かった。


 だがあと少しというところで機関砲に爆弾が直撃、俺が目指していた場所は仲間の肉片と鉄の破片と丸い穴だけが残されていた。


 敵のデュッセル軍は奪取された陣地に存在する戦力、残された兵器の場所などを正確に把握していた。


 お陰でこの様だ。


「おおいまずい、まずいぞ! 全員撤退しろ! 毒ガスが漏れてる!」


 最悪は続く、デュッセルの奴等の攻撃で集めていた毒ガス弾が損傷しあたり一面に毒ガスを撒き散らしていた、ガスマスクを貫通し、まだ対抗策も練られていない新型の毒ガスが。


「撤退、撤退だ! 全員走れ!」


 上官殿もそう叫んだ。


 次第に強まる爆撃音に怯えながら、俺達は昨日来た道を辿って逃げることになった。


 仲間の死体を踏み散らし、走って走って走り続けふと後ろを振り返ると俺達がいた場所は炎が上がり、爆発した。


 集めていた弾薬がぶっ飛んだんだろう。


「走れ一等兵! あれだけな訳がない! 後ろから歩兵も来るぞ!」


 エリアンを先頭に、俺達は塹壕の中を走って山を下っていく。


 降り注ぐ爆弾の雨が終わったあとは、デュッセル軍の歩兵が突っ込んできて逃げ惑う俺達の背中に銃弾を浴びせてきた。


 あんなことすれば奴等も毒ガスでくたばることになるだろうに。


「がっ──」


 走り回っていると、俺達の前を走っていた別の分隊員1人が撃たれ、顔面から塹壕の泥に突っ込んだ。


 他の仲間はそのまま見捨てて先を急いでいく。


 止まれば死ぬからと、仕方なく。


「助けてくれ、助けて」


 腹から血を流してあえぐ仲間、俺達も無視して逃げようとしていた。


 だが俺はこいつが吐いた一言で、止まらざるをえなかった。


「助けて、家族を残してきた……死にたくない」


 爆弾の音に書き消されそうなか細い声だったが、俺にはしっかりと聞こえた。


「おい一等兵! どうした早く!」


「先に行ってて下さい!」


 俺はそこで立ち止まり、倒れた仲間を背負って逃げることにした。


 エリアンは必死になって叫んでいたが、今は命令でも聞けない。


「早く行け!」


 敵から鹵獲した回転式拳銃を抜きながら、俺はエリアン達にそう告げて仲間を背負う。


 その姿を見たエリアン達は舌打ちしながらも行ってくれた。


 ……それでいい、お前らまで付き合うことはない。


「あ、ああありがとう。ありがとう」


「うるせぇ黙ってろ!」


 背中で感謝の言葉を言ってくるが、黙らせた。


 鬱陶しかったからってのもあるが、傷に響かないようにするために。


「俺達の陣地に戻れれば医者が待ってる! それまで死ぬな! 残してきた家族に会うんだろ!?」


 背中に背負った仲間の表情は見えないが、きっと頷いてるだろう。


 ここで死なせてなるものか。


「ああクソ……遠い」


 俺は背中にデカイ荷物を背負いながら、味方の陣地まで急いだ。





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