第14話
自分の分隊に戻った直後くらいだったか?
見ていて胸糞悪い出来事があった。
「こいつらには俺達の仲間をぶっ殺した責任を取ってもらう!」
「国をめちゃくちゃにしやがった責任もな!」
捕まえた捕虜に対してペイル兵達が一斉に私刑を加え始めた。
集団で殴る蹴るは優しいほうで、銃剣で目玉を突き刺したり吊し上げたりする奴もいた。
止めようとする奴もいるにはいたが……気持ちを分かってるぶん、強くは出られないんだろう、上官も見て見ぬふりをするかむしろ私刑を加える奴等を応援していた。
俺は捕虜にするべき人間をぶち殺した後だったし言えた義理じゃない。
「……煙草屋、一本くれ」
モーゼスも見たくなかったんだろう、俺に煙草をねだってきて、俺もこのときばかりはさっさとくれてやった。
「今日はただでくれてやる。アヌック、お前……は?」
せっかくだから皆で吸おうと思ってアヌックにも声をかけようとしたんだが居ない。
嫌な予感がした。
「おいアヌック、やめとけ」
焦ったエリアンが声をあげた。
「捕虜の虐待は条約で禁止されています。やめましょう」
抑揚のない声で、アヌックは捕虜に暴力を加えている人間に対してそう言った。
だが金髪の小娘の言葉なんかまともに聞く奴なんて居るわけがない。
「こいつらのせいで俺達はこんな目に遭ってるんだぞ! こいつらがこのクソッたれな戦場に俺達を縫い留めてるんだ!」
「ぶち殺してやらねぇと治まらねぇよ!」
怒り狂った奴がアヌックに唾を飛ばしながらそう言ってきた。
荒れそうだ。
「ちょっと待ってくれ。こいつの言ったことも正しい。ここはお互い引いたらどうだ?」
「はッ『英雄様』か。お前だって機関砲で戦闘機乗りを地面に叩き落した奴だろうが」
俺はこのままじゃアヌックも一緒にぼこぼこにされかねないと思って割って入ったんだが、反応は変わらなかった。
「お前には感謝してるよ。あの時戦闘機を叩き落してくれなかったらもっと被害が増えてただろうからな。今の俺達はお前と同じことをしてやってるだけだ」
「同じ?」
捕まってる捕虜をぶっ殺した覚えはないぞ。
「こいつらをぶち殺しておいて、後に出る犠牲者を少しでも少なくしてやるんだよ」
「一緒にするな。俺はあくまで向かってきた奴だけしか殺してない。戦意も糞も無い奴までは殺して──」
ないとは言えない。
「……まぁどうでもいいさ。おいさっさと殺しとけ!」
アヌックも俺も止めようと詰め寄ったが捕虜との間に作られた人垣に阻まれてどうすることも出来なかった。
「待て! 国に弟を残してきたんだ!」
捕虜の叫びに俺は動揺した。
「ま、待て!」
止めるのも構わず、捕虜は石で頭を潰されて殺されてしまった。
流れる鮮血と一切聞こえなくなった声に無力さを覚えながら、俺とアヌックはエリアンの所に戻った。
「こんなこと、神が赦しません」
「かもな……」
エリアンとモーゼスは黙って煙草を吸ってた。
見て見ぬふりをしていたんだ。
「軍曹殿、なんで黙ってみてるんです? モーゼスも」
「お前だってアヌックが出て行かなかったら助けなかっただろう? 今噛みついてきてるのはあの捕虜と自分を重ねたからだ。違うか?」
耳が痛い、だがその通りだった。
「納得できない気持ちは分るが、下手すりゃ俺達も殺される。俺はそんなの御免だね」
モーゼスもこの時はとても冷たかった。




