第13話
夜空に照明弾が上がった後も、暫くは戦闘が続いた。
まだ戦意のある生き残ったデュッセル兵を掃討し終わると、俺達の分隊は皆が集まる機関砲陣地へと急いだ。
多くの犠牲を出したその後……戦果を見届けるために。
「やったんだな……」
アールス山の頂上手前、無数の土嚢と堡塁で守られたデュッセル軍の機関砲陣地にはペイルの旗が翻り、デュッセルの旗はペイル兵によって燃やされていた。
デカい空薬莢の山の上にそれが灰になって燃えていくところを見た時、とてもスカッとしたよ。
「一等兵、モーゼス、アヌック、まだ敵が向かってくるかもしれない。油断はするなよ」
皆が喜んでいる時にエリアンは無粋なことを言ってきたが、まぁ、間違いない。
密集しているところに手榴弾を投げ込まれたりされたらたまったもんじゃないからな。
「一等兵」
「はい、何でしょう?」
「少しだけなら構わん」
エリアンは顎で一人の兵士を示した。
一体何のことかと思って示した方をよく確認してみるとその兵士の腕には黒い腕章が付けられている。
「こっちはこっちで警戒しておく。話を聞き終わったらすぐに戻ってこい」
「ありがとうございます軍曹殿!」
「失礼します。少々お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
俺は自分の分隊から離れ、腕章付きの男の所まで向かった。
土嚢の上に腰掛け、煙草を吸ってるそいつは、泣いていた。
仲間が死んだのかそれとも歓喜からかは分からないが……兎に角泣いていた。
「あの……」
「何だ? 一等兵」
「腕章付きの方ですよね? この男をご存じありませんか?」
話しかけてみると、その男はかなり不機嫌そうで周囲の兵士達とはかなりの温度差があった。
けど怯んじゃいられない、俺は懐からペンダントを取り出して腕章付きの男に見せた。
すると……
「レンス……レンス・フォン・ヴォスか」
「知ってるんですか!? こいつが今どこに居るのか教えていただきたい!」
「その前に一つ、お前はレンスとどんな関係だ?」
どこか懐かしそうな目でペンダントを見ながら、男は聞いてきた。
「俺の弟です」
その言葉を聞いた時、男は俺の方を見て一瞬だけ目を見開いた。
「そうか……お前が兄貴か。立派な弟を持ったな。こいつは今……西にいる」
「西? アールスの西部ですか?」
アールスの西部、そこは戦争初期から激戦が繰り広げられている場所で、唯一ペイルが確保できている高所の陣地がある場所だ。
そんな場所に俺の弟は居るのか?
というか俺の居る場所からかなりの距離があるぞふざけるな!!
「まさかお前、弟を探すために軍に入ったのか?」
「……ええ」
「馬鹿だなお前。どこに配属されるかもわからないのに、無茶な奴だ」
「たった一人の弟です。多少の無茶はやりますよ」
俺の言葉に男はがんばれよとだけ言って去って行った。
「がんばれ……か」
まるっきり違う戦線に送られて、頑張れと言われても……どうすりゃいいんだ?
ふてくされていると俺を呼ぶエリアンの声が聞こえる。
時間らしい。




