蒼の小鳥
一つ夢が終わった。
目は本当に覚めたんだろうか。
覚めたなら次に目に映るのは現実?
それとも次の夢?
どっちかなんてわからない。
どっちでもかわりない。
結局それを生きるのみなのだから。
「あー、暇だなぁ。」
開口一番そんな言葉が飛び出す。
毎日ってわけじゃないけど、いつもやっている庭掃除。
庭掃除と言っても軽くほうきをかけたりする程度だけどね。
なんかこう、大事件でも起こらないかなー。
その時、バタバタと屋敷の方が騒がしくなってきた。
なんだろうと思い、私は騒ぎの中心と思われる屋敷に入ってみた。
ドンっ!
屋敷の扉をくぐった途端に誰かにぶつかり思わず後ろに倒れこんでしまった。
ぶつかってきた誰かはこちらを振り返ったかと思うと、次の瞬間ハッとした感じで走り去っていった。
って、今の蒼様じゃん!
こうしちゃいられない、すぐに蒼様を追いかけないと!
「待て、里美!」
すぐに立ち上がり、走ろうとした瞬間に後ろからぐいっと引っ張られる。
ちょっと首が絞まって苦しい・・・
「あれ?父さん。」
そこにいたのは蒼様の執事である私の父さんだった。
一体何があったんだろう。
父さんは険しい表情で口を開く。
「お前には、関係のないことだ。お嬢様のことはしばらく放っておいて差し上げろ。」
一瞬父さんが何を言ってるのか理解できなかった。
私は父さんの力が緩んだ隙に逆に掴みかかる。
「どういうこと?一体何があったの!?」
父さんはふと目を逸らした。
らしくない。
いつもなら私の方が後ろに投げられてるところだ。
「お嬢様の飼っておられた小鳥が死んだのだ。」
重々しく言う父さん。
「だから、一人にしてあげなさい。」
「だから、ってなに!?こういう時こそ蒼様を追いかけて慰めないとダメでしょ!?」
私は父さんを突き飛ばすようにして屋敷の外へ駆ける。
そのまま心当たりを片っ端から探したが、結局見つけることは出来なかった。
蒼様は一体どこへ行ってしまったんだろう。
ふと気が付くと私は近くの川の橋の下に辿り着いていた。
なんとはなしに川を眺めながら座る。
死んだという小鳥。
それは、ある朝に蒼様の部屋に迷い込んだ小鳥だった。
父さん達はすぐにつまみ出そうとしたが、蒼様がそれを庇ったらしい。
それからあまり日数は経っていないけど、蒼様にとってはかけがえのないものだったに違いない。
ふぅ・・・
こうしていても仕方がない。
また頑張って蒼様を探しに行かないと。
そう思って立ち上がろうとしたところに聞きなれた声が届いた。
「あ・・・里美。」
あれほど探して見つからなかった蒼様が目の前にいた。
その胸にはぐったりとしている小鳥が抱かれている。
「ちょうどよかった。少し手伝って欲しいんだ・・・。」
蒼様はそう言うと、そっと小鳥を地面に横たえてその横に穴を掘り始めた。
「あ、はい!喜んで!」
私は慌てて蒼様の掘っていた穴を両手で掘る。
出来た穴に蒼様が小鳥を静かに置く。
そして、その上からゆっくりと土をかぶせていく。
「この子はね、ボクにとって本当に友達だったんだよ。」
ポツリと漏らす蒼様。
悲しげな蒼様を見ているのは少し辛い。
「蒼様には!」
「私が、この里美がずっと側についています!」
そう言い放つ。
急に声を荒げた私に蒼様は少し驚いた様子だった。
だけど、すぐに表情を和らげてくれた。
ありがとうと聞こえた気がした。
また夜が来て、夢を見る時間がやってくる。
見たい夢が見られるとは限らない。
見たくない夢を見るかもしれない。
けど、夢はやっぱり思い出せない。
それでも幸せな夢を見た時は幸せなのだ。
今は、それだけで十分。
END




