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  作者: 風矢
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4/7

里美奮戦記



 夢を見た日。


 楽しい夢を見た日は起きたくなかった。


 悲しい夢を見た日は早く目覚めたかった。


 いつも起きた時には忘れてしまう。


 そして今日もまた夢を見る。




「あとはここの部分を縫うだけ…っと、出来たーっ!」


 毎日徹夜で作った蒼様人形の完成だーっ!


 あぁ、この可愛らしさ…


 是が非でも蒼様にも見ていただきたいっ!


 もうそろそろ夕飯みたいだし、蒼様もお部屋にいらっしゃるよね?


 そうと決まれば蒼様のお部屋にれっつごーっ!(注:仕事中)


 廊下を蒼様人形を持って歩いていたら、メイド長さんにすごい顔で睨まれていたような気もするけど気にしない。


 なんだか蒼様のお部屋の前が慌しいなぁ。


 また脱走なされたのかな?


 よく見てみると、普段屋敷には帰ってこられないはずの旦那様も蒼様のお部屋の前にいた。


 なんだか苛立ってるみたいで怖いなぁ。


「ああ、里美か。ちょうどいいところに来た。」


 旦那様と話していた父さん(執事)が私を呼び止める。


「実はな…少々大変なことになってしまったのだ。」


 そう言って父さんは一枚の紙を私に差し出した。


 えーと、なになに?


脅迫状


 お前のところの娘は預かった。


 返してほしくば1億洩って同封してある地図の赤印のところまで洩って来い。


 追伸


 来るのは一人だけでないと泣いちゃうよ。


 ………


 持っての漢字間違えてるし。


 いやいや、突っ込むところはそこじゃない。


 って、蒼様がさらわれたーーーーーーーっ!!!???


 パニクってる私に旦那様は蒼様の重要参考人…じゃなかった救出隊員として出動するようにご命令くださった。


 蒼様、待っててくださいっ!


 今あなたの里美が参りますよーっ!




「え~っと、地図によるとこの辺だけど…」


 なんとか地図を頼りに歩いてきたところは港近くの廃屋だった。


 いかにもな場所だなぁ。


 さすがにもう夜なので人通りは全くない。


 まあ、人通りのあるところを指定する犯人はいないと思うけどね。


 この廃屋の中に蒼様が…


 なんて不憫な蒼様…


 こんなことをする犯人は蒼様救出後に絞めころ…いや、警察に突き出さないとっ!


 一応慎重に廃屋の扉を開ける。


 バキッ


 …あれ?


 ゆっくり開けたつもりだった扉は腐っていたらしくあっさりと崩れてしまった。


 本当にここなのかなぁ。


「あぁっ!なんてことするんだ。せっかく修理したばっかりだったのにっ!」


 廃屋の2階部分の方から叫び声が聞こえた。


 細長い顔にちょび髭で、アニメに出てくるような盗賊っぽい衣装の男が慌てて1階に降りてくる。


 そしてふと私の顔を見て、咳払いをひとつ。


 かと思えば鏡を取り出して髪を手で整えていた。


 こいつが蒼様をさらった犯人に違いない。


「蒼様はどこっ!早く居場所吐かないとどうなるかわからないよっ!」


 目の前の怪しい男に向かって怒鳴る。


 男はびっくりした様子で鏡を取り落とし、また咳払いをひとつ。


「1億は持ってきただろうな?」


 本人は凄んでるつもりなんだろうけど、それが全然似合わない。


 私は手にもったアタッシュケースを見せる。


 いいだろうと男が言うと、奥から同じような衣装を纏った男が数人蒼様を抱えて出てきた。


 蒼様は眠っているようで反応しなかった。


「どうだ?この通り人質はぶっ…!?」


「蒼様に気安く触れるなーっ!」


 目の前の男の台詞が終わる前に飛び膝蹴りを食らわせる。


 続いていつも持ち歩いてる竹刀を背中から抜き放ち、蒼様を抱えてる男達を叩きのめした。


 まだまだ殴り足りないけど、今は蒼様の救出が先だ。


 蒼様はぐっすりとお休みで持ち上げても起きる気配はない。


 あぁ、やっぱり蒼様って可愛らしいなぁ。


 待てよ…?


 犯人どもは叩きのめしたし、ここに人気はない…


 ニヤリ


「さっ、蒼様。私の愛を受け取って~。」


 ぱちり


 その瞬間蒼様の目が開いた。


 ………


 数秒の硬直。


 そして蒼様は脱兎のごとく走り去ってしまいましたとさ。


 とほほ…


 のちに蒼様より遅く屋敷に到着した救出隊員こと私に父さんのカミナリが落ちたのはまた別の話。





 今日の夢。


 明日の夢。


 きっとどれも違うはずなのに思い出そうとすると消えていく。


 それが悲しくて。


 それが寂しくて。


 今日こそはと願いながら夢を見る。


 うん、明日はきっと思い出せる。


 END

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