人それぞれの探し物
今日も学校からの帰り道。
あまり学校にはいたくない。
だからと言って家にだって帰りたくない。
いつものようにいつもの道を歩きながらいつもの探し物を探す。
他の誰も持ってない。
他の誰でも持っている。
それがボクの探し物。
周りから人の話声が聞こえることもあるけど、ボクには関係ない。
すぐに通り過ぎてまた静かになる。
この静かなのが好き。
なのに…
「蒼様っ!」
うるさいのが来た…
「今からお帰りなんですよねっ?だったら私もお供させてくださいっ!」
その子は剣道部の帰りらしく、肩から竹刀が入ってると思われる袋を担ぎながらボクの後ろをついてくる。
何故か妙に嬉しそうにはしゃぐから追い払うのもめんどくさい。
だから黙って道を歩く。
「あっ、そういえば知ってます?」
この子、川原 里美はボクが全く話さないのも関係なくまくしたてる。
「川原の向こうにある昔廃校になった学校があるらしいんですけど、そこに住み着いた人がいるんですって。」
その学校ならボクも知っている。
3年くらい前に火事があって校舎が焼け落ちたってくらいしか知らないけど。
「聞いた話によるとその住み着いた人は何か探し物をしてるらしいんですよ。」
里美はなおもボクに興味を持たせようと構わずまくし立て続ける。
でも、ボクはそんなのには興味もない。
「ねっ!これからそこに行って確かめてみましょうよっ!」
…はい?
さっきの話からなんでそう繋がるんだろう…
ボクが答えるより早く里美はボクの腕をとって駆け出していた。
どのくらい走っただろう。
あまり運動をしないボクにとっては結構つらかった。
一方の里美は目を輝かせたまま、目の前に建っている焼け落ちた校舎を眺めている。
話では住み着いた人がいるらしいのに…
危険だとか近づきたくないとか思わないのかな…
ボクが危険だからやめようと言っても、
「だ~いじょうぶですよっ!私がちゃんと蒼様をお護りいたしますってっ!」
と言って引き下がらない。
ちゃんと護るもなにも初めからそんな危険なところに連れてこないで欲しい…
ずんずんと校舎内に入っていく里美。
もちろんボクも里美に引きずられるように校舎内に入ることになってしまった。
校舎の上の方に削れてよく読めないがi…e…というふうに書かれていたのが見えた。
校舎の中は散々なものだった。
あちこちが煤け、目に付く物は瓦礫だけ。
どうやらコンピュータの学校だったらしくパソコンの残骸らしき物が沢山あった。
「ねぇ、蒼様?例のここに住み着いてる人って何を探してるんでしょうね?」
ふと里美がボクに問い掛けてきた。
探し物…
それにだけは共感が持てるかもしれない。
その人が探してる物はきっと元々学校にあったものじゃないかと思う。
でも、こんなことをこの子に話してみたところで結局理解しないだろう。
だから、
「…ボクに聞かれても困るよ。」
とだけ答えておいた。
里美は校舎内をうろうろしながら、蒼様でもわからないことあるんだなぁとか歌うように呟いていた。
カラン…
その時、横から瓦礫の一部が崩れたような音が聞こえた。
よく見るとその奥から人が覗き込んでいる。
「なっ、なんだ!?蒼様に指一本でも触れたら私が承知しないぞっ!?」
突然のことで驚いたのか里美が慌ててボクの前に立つ。
今にも肩の袋から竹刀を抜いてその人に飛び掛りそうだ。
そんな里美を押さえつけているとその人が口を開いた。
「君たち…ここに学校があったことを知ってるかい?」
何かを諦めたように寂しそうな声だった。
「ここにはかつて沢山の生徒達の夢があったんだ…。そして、私はその手助けをしていた。」
敵意がないのを感じとったのか、里美もその人の話を黙って聞いている。
かつての思い出。
昔探していた夢を見るためにここに住み着いたこと。
その人は上原と名乗った。
「引き止めて悪かったね…久しぶりに人を見たからつい嬉しくてね…。」
そう言いながらまた焼け落ちた校舎の中へと消えていった。
ボクと里美は何も言えないまま校舎を去ることにした。
帰り際に里美がボソリと呟く。
「探して…見つかるようなものなんでしょうか…。」
ボクには答えようがなかったけど…
それでも、ボクは諦めたくなんかない。
だからまだ探す…
ボクの探し物…
見つからなくってもいい…
探して見つかるものじゃなくても…
探さないと見つからないから…
END




