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第4話 冒険者(プレイヤー)との旅


前回までのあらすじ


sttela onlineの世界に入ってしまった凸砂ゲーマー、コウヘイは戦場で助けた女の子メルティア・マリィベルと冒険者酒場で再会した。

仲間の負傷により1人になってしまったというメルティアの提案でコウヘイはギルド(ギルド名保留)を設立したのだった…。


NPCのみが入れるギルドかん,


歩きながら、俺はこの不思議な現象に思いを馳せていた。


ギルドの設立自体はできた。


その後、近くで飲んでいた冒険者に声をかけギルドに入ってくれるという話になった。


早速。彼にギルド招待を送ったのだが、彼に招待は届かず他にも方法を試したが、結局ギルドに加入することは出来ず、彼とは冒険者酒場で別れたのだった。


システムによると、冒険者によるギルド加入が出来ないらしい。


つまり、ギルドを大きくするには、この世界で暮らしているNPCたちを仲間にする必要があるのだ。


「コウヘイ。まずはギルドに入ってくれる仲間を探しましょう」


今現在、メルティア・マリィベルは俺の横を歩いている。


「今のワタクシ達は言わば盾と後衛。前衛で戦う戦士系のクラス。そして味方を援護する回復系の仲間が欲しいところですわ」


「そうだなぁ…それにギルドハウスも欲しいな」


・ギルドハウス

ギルドが持つ機能の1つ。

ギルドメンバーのみ入ることができる拠点である。

購入するには大量のGが必要で、購入後も施設を成長させることが可能。

個室、製作室、レジャー施設など様々な部屋を増設することができる。

訪れた街に移動するワープ機能が使えるようにもなる。


「とんでもなく便利ですわね…」


「あぁ、だから俺たちの最初の目標は」


「ギルドメンバーを募集して、ギルドハウスを購入するためのGを稼ぐってところだな!」


「ですわね!ワタクシ楽しみになって来ましたわ!」


「おうよ!」


当面の目標が決まった俺たち。

オヨーテの街は冒険者が多い街だが、NPCは余りいないようだ。

俺たちは別の場所を目指し、旅立つことにした。


    ◇


・・・フィールド「テリウス平原」


俺たちはメルティアの仲間たちと別れの挨拶を済また後、彼らに見送られながらオヨーテの街を後にした。


目指す先は渓谷の谷間にあるという街「ガルディオン」。


草原地帯を抜けると、地面は少しずつ起伏を増していく。


やがて左右を岩壁に挟まれたボルライト渓谷へと辿り着いた。


ボルライト渓谷には常に強風が吹いていた。

少しでも気を抜くと深い谷底に落ちてしまいそうだ。


遥か遠くの岩場では、角の生えた小動物や猪のようなマモノが枯れ草を食べていたのが見れた。


仲間と共に渓谷を冒険をするなんて、幼い頃に遊んだRPGの主人公になったみたいで少し嬉しかった。


「アンタらもこの渓谷を抜けるのか?」


突然、声をかけられた。


振り向くと、そこには二人組の冒険者が立っていた。


一人は剣を腰に刺している、剣士風の男。

もう一人は両手で杖を持っている美しい女だった。


「あぁ、そのつもりだが?」


杖を持つ女

「でしたら良ければご一緒しませんか?私たちもそろそろ次の街に行こうかなと思ってて」


剣を持つ男

「でも俺たち2人だけだから、少し心細かったんだよな」


「そうだったのか、俺は構わないが。メルティア、お前はどう思う?」


「か…構いませんわ」


こうして、俺たちはボルライト渓谷を一緒に進むことになった。


剣を持った青年は<剣士>のトリス。

杖を持つ女性は回復術士でみぃちゃんだと紹介してくれた。

二人は現実でも友達で、1週間前にsttela onlineを始めたばかりとのこと。

マモノを倒し、力がついて来たので次の街に行く予定とのことだ。


俺よりも、装備の扱いやフィールドでの立ち回りに慣れているようだった。


みいちゃん

「たしかこの先、猪型のモンスターが出るんですよ。素材も美味しい肉が取れるんで、ちょうど狩りながら進もうと思ってたんです」


「ほ〜う、詳しいんだな」


トリス

「ええ。肉屋のNPCに話しかけると教えてくれましたよ!」


「なるほど…そう言うのもあるのか」


NPCから話を聞く事でマモノや素材についての情報が手に入るようだ。

色々と教わることが多い。


そんなわけで、俺たちは四人で渓谷を進むことになったのだ。


   ◇


4人での初戦闘は猪型のマモノ<ミートファング>だった。


1Mほどの体躯がある、攻撃は突進のみという比較的倒しやすいマモノだ。


突進の勢いはかなり強いため、俺たちが突進を受けると谷間に落ちてしまう可能性が高かった。


メルティアが突進を防ぎ、その間に俺とトリスが攻撃をする。傷ついたメルティアをみいちゃんが回復していった。


渓谷にはミートファングが多く生息しており、渓谷に入ってから1時間も経たないうちに4頭ものミートファングを倒していた。


順調に俺たちは進んでいく俺たちだったが、ここで大物に出くわした。


大きな牙を持つミートファングの進化個体<ビッグファング>である。




トリス

「こいつは…中々骨が折れそうですね」


こちらを見つけた大猪は、地面を前脚で引っかいている。


ミートファングを倒して来た俺たちに仲間の匂いがついているのか。


敵意剥き出しで今にも襲いかかって来そうだ。


メルティア

「先ほど同様、ワタクシが敵を惹きつけます!その隙に攻撃を!」


「分かった!」

「了解です!」


大猪は、俺たちへ突進してきた。


------------


コーヘイ

「メルティア!行ったぞ!」


「はいですわ!」


メルティアに向かって突進するビッグファング。


メルティアは大盾でその突進を受け止めた。


ミートファングの時とは打って変わってその表情は苦しそうだ。


「クロス斬り!」


トリスがビッグファングに切り掛かる。


2回の剣撃を受けたビッグファングの体には十字の傷が入った。


俺もビッグファングの頭めがけて引き金を引く。


しかしビッグファングの大きな牙は弾を跳ね返してしまう。


ビッグファングは、頭部への攻撃が通らないスキルを持っているのだろうか。


盾と牙がぶつかる音が、渓谷に反響する。


メルティアは、じりじりと身体が後ろへ押されていた。


数m先は谷底、落ちたらひとたまりも無い!


「メルティア!離れろ!」


「…大丈夫ですわコーヘイ。これしきの攻撃など…」


メルティアは足を踏ん張り、盾を強く握り直した。そして


「跳ね返して差し上げますわぁあああ!!」


盾を大きく振りかぶりビッグファングを宙に投げ飛ばした。


「ブモォォ………」


ビッグファングはそのまま谷底に落ち、俺たちは窮地を逃れたのだった。


    ◇


夜になった。


俺たちは渓谷の少し開けた場所で焚き火を囲んでいた。


ミートファングから取れた肉を食べることにした。


串に刺して火にかざすと、じゅうじゅうと音を立てながら脂が落ちていく。


香ばしい香りが辺りに広がった。



トリス

「いい匂いだ、もう食べていいかな!?」


みいちゃん

「もう少し待った方がいいですよ。中まで火を通さないと」


トリスの子どもじみた行動を、みいちゃんが笑っていた。


俺たちはミートファングの焼肉に舌鼓を打ち、今日は小さな洞窟で休むことにした。


しばらくの間、トリス、みぃちゃんと話した後で2人は姿を消した。


ログアウトをしたのだ。


2人を見送った後、俺とメルティアは大きめの葉を洞窟に並べて、その上に横になった。


焚き火の炭が、パチパチと音を立てていた。


「……ログアウト、か」


俺は小さく呟いた。


「コーヘイ?」


メルティアが俺の顔を不思議そうに見ていた。


「いや、なんでもないさ」


話を濁す目的もあって、俺はメルティアに質問をすることにした。


「メルティア。お前はなんで旅をしたかったんだ」


実際に気になっていたことだ。


メルティアの言葉遣いは気品があり、所作も洗練されていた。


俺からは、貴族のお嬢様にしか見えなった。



俺の質問に彼女は少しだけ目を伏せ、それから口を開いた。


「えぇ、ワタクシは貴族と呼ばれる地位の人間でした。…昔の事ですけどね」


静かな声だった。


「昔は…今はそうじゃ無いのか?」


「ワタクシが10歳の頃です。ワタクシ達の家はある者の策略にあい、貴族の称号を剥奪されました。家族はバラバラになり、家は没落したのです」


メルティアは苦しそうにそう話した。


しかし、今度は表情を明るくしてこう続けた。


「そのとき、ワタクシを助けてくださった方がいたんです。名も知れぬ彼女は奴隷に落ちたワタクシや、一緒に売られていた奴隷のみんな。全て解放し、救ってくださったのです!…ワタクシにとっての英雄ですわ」


「…英雄か」


「ふふっ、彼女がいなければワタクシは今こうしてコーヘイと出会うことは無かったでしょう。無銭で働かされているか…或いは娼婦になっていた事でしょうね」


彼女は、苦々しく笑った。


「でも、助けられた時思ったのです!ワタクシも彼女のように苦しむ人を助けられる人間になりたいと!…それがワタクシが旅をしている理由ですわ」


「…そうか」


俺は辛い目にあって来たメルティアに、何を言えばいいか分からなかった。

だから俺は、俺の思っていることをそのまま伝えることにした。


メルティアはあの戦場で最後まで仲間を見捨てなかった。

俺から言わせらば、あれは誰にでも出来ることじゃない。

メルティアは既にあの人の英雄になったとも言えるだろう。


「…お前ならなれるよ。その英雄にさ」


少し、照れ臭かった。


「…うるせぇですわ!」


このメスガキ…!

人の照れくさい励ましをなんだと思ってやがる!


「なんだとお!?」


俺はバッと体を起こしメルティアを睨んだ。


「ふふっ嘘です!ありがとうですわ!コーヘイ!」


起き上がる俺を見てメルティアは笑った。

…だから。


「…うるせぇ」


「なんですってええ!?」


俺はメルティアにやり返し、口論は加速していく。


その日は寝付くまでに、しばらく時間がかかった。


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