第2話 イベント会場
前回までのあらすじ
社会現象を巻き起こしている次世代フルダイブ型MMORPG -sttela online-
凸砂ゲーマー、コウヘイはひょんな事からゲームを手に入れた。
そしてコウヘイは遂に、初ログインを行ったのだった。
◇
遠のいていた意識が少しずつ覚醒していく。
辺りからは叫ぶような声や、せかましい足音、幾多の騒音が聞こえていた。
ゆっくりと瞼を開けてみる。
ログイン直前、RPG定番の草原や街の中にログインするかと思っていたが、どうやらこのゲームはそうでは無いらしい。
俺がログインしたのは、激しい戦禍の中のようだった。
威厳を放つ男
『前衛、下がるな! 後衛の射線を確保しろ!』
杖を持つ男
『右側の部隊が崩れた! 援護を回せ!』
優しそうな女
『回復班、負傷者を連れて後退! 第二陣は陣形を維持!』
張り上げられた声が、爆音の合間を縫って響いている。
「うおお!?あぶねぇ!?」
何か大きな物が空から降ってきた。
それを間一髪のところで交わす事に成功した。
飛んできた物を見てみると、形状からしてトレーラーpvで見た飛空艇のようだった。
しかし飛空艇らしき物体はボロボロに大破していており、本当にこれが飛空艇なのかどうか、分からなかった。
「なんなんだここは…。俺は何処に来ちまった…?」
段々と視力がハッキリしてきた。
俺のログインしたこの一帯では、どうやら大きな戦いが起きているようで。
300人は超えているだろうか。
大勢の冒険者が無数のマモノとの戦闘を繰り広げていた。
一際目立っているのは戦場全体を見下ろせるほどの大きさを持つマモノだ。
戦闘力ランキングのニュースで見たことのある冒険者達も何人か視界に捉えることが出来た。
しかし、実力者が揃っているこの状況でも、あの大きなマモノを倒すことには苦戦している様だった。
「ったく、初心者に厳しすぎるんじゃ無いの!ハードモードを選んだ覚えは無いんだが!」
俺はゲームの難易度に不満を漏らした。
まぁ、焦っても仕方ない。
これはゲームだ。
万が一倒されても、生き返ることができる。
それに痛み等は、冒険者に感じないというシステムらしい。
と言うことで、やりたかったアレ。
早速やってみますか!
「ステータス!」
俺がそう叫ぶと、空中にウィンドウが表示された。
【STATUS】
名前:タカノコウヘイ
種族:人間
職業:無し
称号:無し
レベル:1
生命力:100
筋力:5
耐久:8
敏捷:3
知力:9
運:2
スキル:なし
装備:なし
所持金:0
おぉ〜いいねぇ…。
本来、戦場のど真ん中でやる事では無いんだろうがこういうのを見るとテンションが上がるものだ。
まだスキルも武器も何も無い状態ではあるが、これからの成長が楽しみである。
◇
しかし…ここにいては本当にいつ倒されるか分からないな。
マモノの攻撃を1度喰らっただけで、消し飛びそうだ。
「出口を探すか…」
俺は魔物に見つからないように、ゆっくりと戦場を移動する事にした。
右方向では爆発が起こっていたて左方向からは冒険者とマモノが戦っているのが見えた。
皆集中している、真剣そのものだ。
もしかするとこれは、大きなイベントの最中なのかもしれない。
約30分、マモノに見つからないように慎重に歩いていくと、遂に戦場の端に辿り着くことが出来た。
「ふぅ!なんとかだな」
俺は歩いてきた戦場を振り返る。
今現在も、戦いは続いている。
むしろ激しさが増しているようにも思えた。
「さて、では退散しますかね…。近くに街があれば助かるんだがな………ん、なんだアレは」
視界の端、俺の立っている場所から約1kmの場所。
俺の目に、印象に残る物が写った。
冒険者とは何か雰囲気の違う3人、いや4人組。
あの服装、恐らくNPCか。
NPC。
ノンプレイヤーキャラクターの略。
ゲームの世界に存在するプレイヤーでは無い村人や商人などの総称。
たしかsttela onlineのNPCはまるで実際の人間のようだと評判だったんだっけな…。
NPCである彼らが、何故あんな場所に。
それに…。
彼らは1体の大型マモノと戦って。
いや、逃げているようだった。
仲間の1人が足を失っている。
大きな盾を持った少女が仲間を庇うよう魔物の攻撃を防いでいるようだ。
周りに冒険者は多くいるが、戦いに集中しているためか、誰も気づいていないようだ。
その時、女の子の大盾がマモノの攻撃で遥か後方へと飛ばされた。
「っ!これ、まずいんじゃねぇか!」
魔物はニタついた笑みを浮かべている。
そして何かエネルギーのようなものが魔物に集まっていく。
女の子の顔は顔面蒼白で、後方の仲間達も泣きじゃくり叫んでいた。
これはゲームだ。
あそこでやられそうになっているNPC4人が死んだところで、実際に人が死ぬわけじゃ無い。
これまでだって、冒険者によるNPCの殺害は当たり前のようにニュースやwebサイトで見てきた。
だから、俺が助ける義理は無いし、必要もない。
だが…。
仲間を守る女の子は歯を食いしばり、涙を抑えながら、仲間を守って今、戦っている。
「黙って見殺しにするほど、俺も廃れちゃいないんでねぇ!」
俺はあの女の子を必ず助けると決めた。
「システム!クラス選択をさせてくれ!」
<…システム起動-クラスを提示します>
目の前に8つの職業が縦並びに提示された。
≪見ならい剣士≫
≪見ならい魔導士≫
≪見ならい盾兵≫
≪見ならい回復術師≫
≪見ならい盗賊≫
≪見ならい詩人≫
≪見ならい遊び人≫
≪見ならい銃士≫
「銃士を選択!武器を今すぐに!」
<シングルアクションライフルを装備します>
空中に出現したライフル手に取り、そのまま構える。
敵との距離約1km。
弱く東方向に吹く風
問題無し、射程内だ。
「さぁ…この一発に」
マモノの脳天にアイアンサイトを合わせる。
「全てを込めるぜぇ!」
コウヘイ
「ドォン!!!」




