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聖国からの使者


二日後の夕方、城に馬で到着すると、どうも城内が騒がしい。外門の近くにいたラウレンツを捕まえた。


「聖国の使者が、ちょうど到着されたところです」


礼を言って、すぐに内門へ向かう。


内門の中には、白い馬に乗った騎士がひとりいた。灰色の外套。目深にかぶった頭巾で、顔は見えない。裾に、細い金の縫い取りがひと筋だけ入っていた。


オズヴァルトが迎え出ていたが、騎士はそれを無視して、通る声で言った。


「アウレリア聖国より、アルダーン王へ」


抑揚のない声だった。


しばらくして、ジルヴェスターが早足で現れた。革の筒を受け取ると、騎士は一礼し、そのまま踵を返す。


「待たれよ。返書は」


「不要とのことです」


騎士は馬に手をかけ、それから、ほんの一瞬だけ、こちらを見た。


目が合ったのは、瞬きひとつぶんだった。灰色の、感情の読めない目だった。彼は何も言わずに馬へ乗り、門を出ていった。


`


「聖国の者は、めったに国を出ない。出ても、用が済めば水も飲まずに帰る。……昔からああらしい」


その冷たい目に動けずにいると、隣にいたルークが話し出した。


「聖女の血筋ですよ、あそこは」


「聖女?」


「八百年前、魔人と戦ったという。……あの国の連中は、生まれつき体に妙なものを溜め込む。マナを、外から取り込めるんです。僕らみたいに自分の中から出すんじゃなくて、周りにあるものを引き込んで使う。普通の魔法とは、根本的に仕組みが違います」


ルークが城内へ馬を進めながら続ける。


「それから、神殿とは別ですからね。あそこと聖国は、根が同じで、仲が悪い。神殿の総本山は帝国にあります。聖国は西の外れで、八百年前のものをそのまま抱えて動かない。……向こうから見れば、神殿は本家を出ていった分家です」


そのあと大きくため息をついて、「さて、すぐに軍議でしょう。支度をしたほうがいいです」と言い、さっさと馬を兵士に渡して去っていった。


クラリスも慌てて馬を下り、埃だらけの服を見て、急いで部屋に戻った。

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