密談2
幸いなことに、ヴィルスは小さくため息をつき、話し始めた。
「まず、こちらで掴んでいることから申し上げます。リアンツァの件です。」
ヴィルスはじっとジルヴェスターを見て、話し始めた。
「この件を伝えたくて、今回はるばるアルダーンに来ました。私は幸いにもリアンツァの側近とは旧知の間柄でありますから、情報を得やすい。」
そこで一息ついて続ける。
「….もうご存知かもしれませんが、彼らは戦の支度を始めています。」
さらりと伝える兄に、クラリスは驚きジルヴェスターを見たが、彼は予想していたのか驚いた表情は見せず、「規模はご存知か」と聞いた。
「大きい。国境沿いの三つの領で、この三か月、徴発が続いています。糧秣、馬、金物。……あれは演習の量ではありません」
ジルヴェスターは、表情を変えなかった。ただ、卓の上の指が、一度だけ、静かに組み直された。
「想定はしてはいたが…戦の支度を始めているとは確定はできてなかったですね。情報を取ろうにも厳しかった。…どこへ向ける気だとお考えですか」
「常識で考えれば、こちらでしょう」ヴィルスは頷いた。「八百年の因縁がある。国境を接している。攻める理由には事欠かない。……ただ、私は少し、腑に落ちないのです」
「と言うと」
「支度が、遅すぎるかつ、最近は目立ちすぎる。」
クラリスには、意味がわからなかった。ジルヴェスターはしばらく答えず、目を閉じた。
「普通に考えれば、王と王太子の確執によるものでしょう。あの王太子は亡くなった王の兄の子で、王からは睨まれていることで有名だ。司令塔が二つに分かれ、意見が割れているか….」
少し考えてジルヴェスターは続ける。
「それとも、あなたは、わざとこちらに戦争の準備をしていることを勘づかせて、戦争を回避するか、開始を長引かせようとしている、とでも言いたいんですか?」
ヴィルスはじっとジルヴェスターを見つめたままだ。
「…わかりません。しかし可能性はあるかと。物資の調達の仕方が、とても隠しているようには見えない。しかも側近も隠すことなく、私に戦の準備について情報を漏らした。もちろん、季節は冬だったので準備がただ単に遅れた可能性はありますし、確定できるものではありません。」
ジルヴェスターは、少し考えたあと、「しかし、国王と王太子の間での確執による準備遅れが一番可能性としては高い」といった。
ヴィルスは返事をしなかったが、ジルヴェスターを見つめ、反論はしなかった。だが、何か二人とも腑に落ちない様子でいる。何か答えがあるのにそれをあえて口にしないようにも見える。
「それから、魔獣の増加は、アルダーンとリアンツァだけの話ではありません」ヴィルスは続ける。
ジルヴェスターの目が、わずかに動いた。
「シェルナでも?」
「うちは、ええ、多少。ですが問題はそこではなく——南の小国群、それから西の街道沿い。私の見た限り、この二年で被害の報告が三倍になっています。大陸のあちこちで、同じことが起きているようですね」
ジルヴェスターは何か考えるように口に手を当てた。
面白いと思っていただいたら評価とブクマお願いいたします!




