密談
昼食は、東の翼の小さな食堂で供された。
大広間ではなく、窓が三つ並んだ、あの最初の晩餐と同じ部屋だった。給仕が二人と、扉の外にハーゲン。卓についたのはジルヴェスター、ヴィルス、クラリス、そしてユアンの四人で、ヴィルスの一行はすでに別室で食事を始めているという。
ユアンは最初、末席で恐縮していた。
「私は外で待ちますが」
「いていいよ。クラリスと話すのも久しぶりだろう」
ヴィルスがあっさり言うので、ユアンは肩をすくめて腰を下ろした。兄が相変わらずこの幼馴染を信頼しているのだと分かって、クラリスは少し嬉しくなる。
しばらくは雑談で過ごした。街道の様子、シェルナの両親の近況、姉たちに子が生まれたこと。
だが、料理が下げられ、給仕が去り、ハーゲンが中に入って扉が閉まると、それまで卓の上にあった和やかなものが、すっと引いていく。
ヴィルスが、卓の上で手を組む。
「では本題を、と行きたいが。クラリス、お前はもう部屋にでも戻って、好きにしていたらいい。兄様が恋しいのは分かるが、お前のような花がいる場所ではない。お前との時間は、あとで必ず作るから」
言いながら、隣に座るクラリスの髪に触れ、そこへ口づけを落とす。同じ栗色の髪の下から、完璧に配置された美貌の目が目に入る。久しぶりに間近に見る兄の顔はあまりに整っていて、クラリスは一瞬、言葉を失った。
「いえ、わ、わたし、いまは軍議にも参加しているんです。ぜひ入れてください」
ヴィルスは目を見張った。それから、驚いたことに、その大きな瞳でまっすぐにジルヴェスターを睨む。
「僕は、クラリスを大切に扱うようにお願いしたはずです。手はぼろぼろ、体は痩せて、そのうえ軍議にまで出しているとは、何事ですか」
珍しく、ジルヴェスターが返答に詰まった。
「そのことについては、申し訳なく思っている。ただ、クラリスにかすり傷ひとつ負わせないことは、約束する」
「すでに手はぼろぼろだ」
「兄様! これはわたしが好きで薬草をいじっていたからなんです。とにかく、始めてください。お願いします」
これ以上、山だの魔獣だのとばらされたら、アルダーンに迷惑をかけていると兄が心配しかねない。クラリスは慌てて会話を遮った。
ユアンは、そんな三人の様子を、面白そうに眺めていた。
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