五番の見送り
灯籠を回収した網に付いていた布切れは、港湾資料館で洗わずに調べることになった。鷲尾は保管箱を運び、学芸員へ発見場所を説明した。布の『五』は数字にも見えたが、糸が欠けているため別の文字かもしれなかった。
倉庫長は祭りの片付けに参加しており、布を見て昔の作業着の一部だと言った。前後に長い縫い目があり、旗や灯籠の飾りとは違うらしい。学芸員は材質を調べ、持ち主を特定する試みはそのあとにすると答えた。
澪は港の主催者へ、調査のために祭りの記録を借りたいと申し出た。灯籠の申込名簿には個人情報が多く含まれる。名簿そのものは預からず、必要な年と人数だけ教えてもらうことにした。
青年団の代表は、祭りで怪しい光を見たと聞いても動じなかった。「毎年何かありますよ。風が吹いても、舟が遅れても」。澪はその言葉を軽く受け取らなかった。町の行事を続けるために、誰かがずっと小さな不具合を直してきたのだ。
夜、鷲尾は港の常夜灯の下に立った。倉庫のランプと同じ、帰ってくる人のための灯なのかもしれない。だが勝手な意味を与える前に、漁船の乗組員が安全に帰港できたか確認した。
資料館での作業を終えた鷲尾は、町の清掃班が浜辺で灯籠の紙片を集めているのを見かけた。潮で柔らかくなった紙は砂に貼り付き、簡単には拾えない。彼は道具を借り、少しだけ作業へ加わった。祭りを無事に終える仕事は、夜の灯が消えたあとにも続いていた。
乾いた砂が網から落ちた。
すべての船が戻り、巡回表が閉じられた。乾いた布切れは番号を付けて保存され、祭りは次の年の準備へゆっくり移っていった。




