倉庫の最後の灯
台秤の盤面を洗浄した整備工場から、五番の印があると知らせが来た。鷲尾は写真を持って倉庫へ戻り、港の古い帳面と並べた。印の形は似ていたが、寸法は微妙に異なる。相良は同一の道具として扱わないよう注意した。
倉庫長は新しい検量器を据え付け、作業員全員に確認手順を教えた。塩袋の重量は朝と夕方に測る。誰か一人だけに責任を負わせないよう、二人一組で数字を書く方式にした。
夕暮れ、鷲尾が保管棚を巡回すると、一袋の口に結び目が二つできていた。封の紐は切れていない。誰かが内側から結び直したようにも見えるが、袋を扱った作業員は皆その形を知らなかった。倉庫長はその袋を売り場へ出さず、仕分け区画に残した。
相良は結び目の一つへ札を貼るだけにした。強く閉じれば、何かが別の袋へ移るかもしれない。ここで断じられるのは、人間が安全に働ける範囲を確保することだけだった。
夜、作業員の高齢の男性が倉庫長へ茶を差し入れた。『昔も帰りの遅い班には灯を残した』と話す。その言葉を聞いた鷲尾は、倉庫の片隅に昔のランプがあることを思い出した。電気は通っていないが、掃除されている。
倉庫長は夜勤明けの職員から、これまで使われていなかった休憩室の換気が悪いと相談された。相良は相談を聞くだけにとどめ、設備の点検は管理者へ任せた。古いランプを残すなら、そこで働く人の息苦しさも見落としたくない。翌週には換気扇を交換する日程が決まった。
倉庫長は最終点検後、そのランプのそばに常夜灯を置いた。塩の減り方はまだ分からない。しかし帰る作業員が暗い足場で転ぶことは、今夜から防げるようになった。




