四人目の切符
島岡から届いた二通目の封筒には、古い私鉄の乗車券が入っていた。日付の印字はほぼ読めないが、途中下車の穴が二つ開いている。交通費の台帳では四人が同じ駅を使ったことになっていた。ところが島岡は「迎えの男だけ、途中で一度降りた」と証言した。
古川律は廃駅の位置を調べた。駅は線路の付け替えでなくなり、現在は住宅地の広場になっている。過去の建物を確かめたいからと、住民の庭へ勝手に入るわけにはいかない。町内会を通して昔の航空写真を借りた。
途中下車した場所から木戸までは、徒歩なら一時間以上かかる。車に乗ったのか、別の道を通ったのか。三崎は「まず人間が通れた道を全部並べよう」と言い、道路台帳を広げた。古い運河沿いに、今は埋められた通路が残っていた。
澪が報告書と照らすと、その通路は河川橋へつながる別の水路を跨いでいた。地図の線だけでは結びつかない場所が、乗車券の穴二つで隣り合った。井波は新しい仮説を作ったが、古い資料へ勝手に結論を書き込まなかった。
仕事を終えた律は私鉄の駅前に立ち寄った。夕方の改札には定期券をかざす人が次々に流れている。二十年前の切符も、誰かが家へ帰るために使った一枚だったはずだ。
廃駅の跡地にはベンチと小さな花壇があり、近くの住民が交代で世話をしていた。律はかつて線路があったことを話すと、花壇を守る男性が昔の写真を見せてくれた。今の公園を調べるからと土を掘る必要はない。線路の位置を測り終えると、律は男性の水やりの邪魔をしないよう道を空けた。
島岡には切符を返すことになった。贈り物ではなく、長く手元に残していた私物だからだ。澪は封筒へ添える礼状に、借用した日時と返送方法を一つずつ書き入れた。




