交換する当直
人手不足で夜勤が二日続くことになり、三崎は休暇の調整を申し出た。支所長は少し困った顔をしたが、現場で疲労のせいで判断を誤る方が危険だと認めた。
篠原澪は自分が代わろうとした。だが三崎は首を振った。「お前は昨日、病院へ行ったろう。術の後の熱を隠すな」。澪は自覚のないまま指先を震わせていた。低い熱が続いている。
休憩室では、井波が温度計と冷たい麦茶を用意していた。大きな事故が起きた時だけ労うのでは、誰も長く働けない。交代要員を探すことも、退魔師を守る仕事だった。
相良は巡回を一つ引き受け、その代わり翌週の資料整理を井波へ頼んだ。井波は日程表を見て、資料整理の仕事量が過大だと指摘した。結局、会議は普段より長くなった。
「なんだか、怪異と戦うより難しいですね」
澪が笑うと、相良は「人は勝手に回復しないからな」と返した。誰も異論を言わなかった。
帰宅途中に澪は薬局へ寄り、熱の測り方を確認した。大げさな対処より、今夜は眠ることが必要だった。
相良の代わりに資料整理を引き受けた井波は、窓のない書庫へ長く籠もらないよう時間を区切った。古い紙は湿気に弱く、人間は暗い場所で疲れやすい。勤務表を直すという小さな変更が、誰か一人の体調だけでなく資料の扱いまで変えていた。
帰宅した澪は、濡れた護符を箱から出し、次の勤務に備えて乾かした。机の上には路地の資料が積まれている。しかし今夜は開かないことにした。
朝、支所の電話が鳴っても、澪の携帯には通知が来なかった。夜勤表には別の名前が記されている。彼女は久しぶりに、窓から差す日差しで目を覚ました。




