四番目の署名
島岡が貸した乗車券と旧駅の職員写真を並べた井波は、削られた名字の末尾に似た文字を見つけた。印刷面の傷と筆跡の残りを専門家へ見せる必要がある。澪は拡大写真を見て、読みたい文字を先に思い浮かべないよう目を離した。
本部の資料には、二十年前の調査に参加した退魔師三人の署名が残る。三崎、島岡、そして故人になった調査員のものだ。四人目を記した欄は最初から設けられていなかった。だが必要な携行品の数は四人分ある。
井波は旅費の記録も調べた。切符代は四人分、宿泊費は三人分。どちらかが誤りかもしれないし、一人だけ当日に帰ったのかもしれない。帳尻を合わせるために架空の説明を付け足すことはできなかった。
井波は古い旅費伝票の数字を、会計担当に二度確認してもらった。字体の癖で三と八を読み違えていた箇所があり、合計額は見た目より小さくなった。それでも乗車券が四枚ある事実は変わらない。井波は一つ誤りが減ったことを喜び、残る空白へ安易な説明を埋めなかった。
会計担当は帳簿の裏表を確かめ、追加記入の跡がないことも記した。書かれていないことまで推測しなかった。
「誰かが書き忘れたとして、その人を悪者にしないでください」
島岡の言葉に井波は頷いた。行方を失った人よりも、残った人への責任追及が先に始まれば、証言は閉じてしまう。
夜、井波は保管庫の古い楔を確認した。温度は室温と同じ。箱の下に、小さな紙片が一枚落ちていた。そこには「迎」とだけ書かれ、誰が書いたか分からない。
井波は紙を拾い上げず、まず写真を撮った。文字の向きと落ちた位置を記録し、箱の施錠をもう一度確かめた。




