途中駅の時刻表
島岡が残した古い乗車券にある途中下車の穴を調べていた井波は、廃止された私鉄の小駅へたどり着いた。駅舎はすでになく、線路跡は自転車道になっている。昔の改札位置を示す石柱だけが残り、近くの菓子屋が地名を守っていた。
篠原澪と三崎は菓子屋の主人から、駅員が毎晩最後の乗客を待っていたという話を聞いた。終列車の時刻を過ぎても、誰かが坂を下りて来ないか見に行ったらしい。主人は「親切な人だった」と言うが、名前はすぐに思い出せなかった。
菓子屋の店主は、昔の駅で売っていた切符の形をした菓子を今も作っていた。子供が包み紙を集めるのが好きで、販売をやめなかったという。澪は昔の改札の話を聞く一方、店で働く若い女性が注文を数え、夕方の仕込みを進める様子を見ていた。
包み紙には廃線の色が小さく印刷されていた。菓子屋の主人は版を作り直さず使い続けている。
駅舎跡の掲示板には、路線廃止を惜しむ写真が飾られていた。その一枚に四人の制服姿が写り、うち一人の顔だけが光で白く消えている。三崎は写真の裏面を確かめたいと頼み、持ち主の承諾を得て額を開いた。
裏面には四人の名字が鉛筆で書かれていた。しかし三つ目と四つ目の間が削られている。澪は島岡の証言を思い出した。帰還者の数が合わなかった古い任務も、同じ沿線で行われた可能性がある。
井波へ電話すると、彼は照合を急がないよう言った。似た写真を一枚見つけただけで、別々の出来事を同じ事件にしてしまうのは危険だ。
菓子屋の主人が熱い饅頭を包んでくれた。店の前では自転車に乗った高校生が信号を待っている。廃線から続く道は、今では毎日の通学路だった。




