↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異のご相談は、夜間受付まで――退魔師協会・東部支所の日常  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
135/240

船を降りる順番

相良が港の年配船員を訪ねると、彼は小さな食堂で昼食を取っていた。名前は湊川。子供の頃から船に乗り、五番荷役の最後の親方を知っているという。話を聞く代わりに、相良は食堂の混雑が引くまで待った。

湊川が語ったのは、嵐の夜に船を下りる順番の話だった。荷役の若い男が、足を怪我した仲間を岸壁へ先に運んだ。自分は最後に残り、綱を結んで船を離れた。その後の記録は別々で、男が戻ったという帳簿と、行方不明者名簿の両方に名が残る。

「どっちが本当ですか」

鷲尾の問いに湊川は箸を置いた。「俺は、その夜にはまだ生まれてない」。自分が直接見ていないことを、懐かしい話だからと事実にはしない老人だった。

湊川の話に出た怪我人の治療記録は、当時の病院では確認できなかった。戦災で失われた台帳が多いと病院史の担当者は説明した。鷲尾は行方不明者の名前を追う作業を続けるか相良へ尋ねたが、相良はまず資料の残る場所を調べ、遺族へ突然訪問しない方針を示した。

古い地図には船が着いた岸壁の位置が記されていた。しかし埋め立てで形は変わり、当時の海面は倉庫の下にある。相良は探査の計画を急がず、工事図面に残る地層の情報を取り寄せた。

食堂の主人が湊川へ熱い茶を出した。湊川は毎週ここで、亡くなった妻が好きだった魚料理を食べるのだという。鷲尾は質問を終えた。

港へ戻ると、新しい係船柱が一列に置かれていた。そこへ船を安全に結べるのは、今夜の仕事に出る人たちの方だった。

鷲尾は湊川が椅子から立つ時、膝へ手を添えるのを見た。長く船にいた身体には古傷も残る。食堂の主人は頼まれなくても低い椅子を引き、入口の戸を押さえていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。