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怪異のご相談は、夜間受付まで――退魔師協会・東部支所の日常  作者: 竜太郎


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夜勤表の空欄

東部支所の夜勤表には、翌月の一日だけ担当者が書かれていなかった。篠原澪は休憩室で気づき、事務担当の井波へ尋ねた。井波は眼鏡を押し上げ、机の引き出しから古い申請書を出した。

「空いているんじゃない。誰も引き受けられないの」

その日は支所の創設以来、記録庫の棚卸しが行われる日だった。年に一度、紙の報告書を出して照合する。電子化の終わった時代に無駄だと何度も言われたが、同じ番号を持つ報告書が二冊出る年がある。

「今年は三冊増えそうなの」

井波は未整理の箱を指した。箱の中には、誰が持ち込んだか分からない古い帳票があった。妖魔が報告書を書くはずはない。だが、古い現場から人間が手で書いたものが届くことはあった。

澪が当直を申し出ると、井波は一人で受けないよう言った。現場の危険とは違う種類の疲れがあるからだ。文書を読む者は、書かれた人間の失敗まで背負い込んでしまう。

井波は机の隅に温かい茶を置いた。紙の数字を追うだけでも、夜勤は長い。

井波は過去の棚卸し日誌を一枚めくった。失くした報告書が翌年に見つかった年もあれば、保存したはずの帳簿がいつまでも出てこない年もある。すべて怪異に結び付けると、単純な管理ミスを見落とす。そのため井波は、毎年まっさらな紙で数え直していた。

夕方、三崎が戻り、空欄に自分の名前を記した。「澪はその次の朝に来い。夜間は俺と井波さんでやる」。井波は反論しなかったが、三崎の代休を日程表に朱書きした。

澪は引き出しに戻された一枚の申請書を見た。表には『未帰還者の照合』とあった。氏名を書く欄は空白のまま、提出日は二十年以上前の日付だった。

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