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怪異のご相談は、夜間受付まで――退魔師協会・東部支所の日常  作者: 竜太郎


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閉じた道の番人

診療所跡は駐輪場になっていた。舗装の一角だけ古い石畳が残り、裏門があった場所に錆びた蝶番が埋まっている。相良は鉄道側の担当者と区の職員を呼び、旧踏切からここまでの通路を歩いた。

森崎には、折り畳み式の小さな道しるべを立てさせた。事故防止の仮設標識として許可されたものだ。いま安全に歩ける迂回路を矢印で示し、夜間でも見える反射板を取り付ける。

作業中、誰もいない踏切跡で鈴が二度鳴った。区の職員は風だと思ったのか帽子を押さえただけだった。相良は音のした方向を確かめ、昔の診療所跡と標識を見比べた。

「ここで待っている者が、向こう側のことを知らないのなら」

森崎の言葉は途中で途切れた。相良が標識の前へ古い時刻表の複写を置いたからだ。朝九時十二分の欄には、昔のように人の往来が戻ることはない。

夜、再び現場へ入ると、車輪に似た線が標識の手前で止まった。鈴は鳴らず、代わりに草を踏む小さな音がした。二人の姿は何も見えない。

仮設標識の費用は、鉄道会社と区のどちらが負担するか議論になった。相良は結論を待ち、作業を独断で進めなかった。翌日の現場確認には、両者の担当者が揃って来た。人間同士の取り決めが済んで初めて、標識は合法的にそこへ立てられた。

相良は翌週も点検するよう命じた。目に見えない番人が今夜だけ沈黙したとしても、交通安全の仕事は人間が引き受けなければならない。

翌朝、区から歩行者用の勾配表示を見直す連絡が届いた。森崎はそれを読み、帰り道の坂をゆっくり登ってみた。上りきったところで、初めて踏切跡の鈴が聞こえないことに気づいた。

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