↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異のご相談は、夜間受付まで――退魔師協会・東部支所の日常  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
116/240

路地の湯呑み

宮野の茶舗で、澪と三崎は島岡の話を伝えた。個人情報に触れる部分を除き、迎え番が木戸の外に立つ役目だった可能性を説明した。宮野は帳場に置いた古い湯呑みを見つめ、「父が一つだけ余分に洗っていたのは、そのせいかしら」と言った。

木戸の隙間は閉じ、踏石も乾いている。三崎は今回、術具をほとんど使わなかった。宮野が湯呑みを持って裏口へ出ると、彼は立ち止まるよう頼んだ。知らない何かへ差し出す行為が、安全だと確かめられていない。

宮野はすぐ引き返した。「お客に出すつもりで持ってきただけよ」。澪は湯呑みを受け取り、店の流しへ戻した。待つための儀式にしてしまえば、宮野の暮らしが木戸を中心に回り始める。そんなことは望まなかった。

午後、近所の人が新茶を買いに来た。宮野は客と茶の淹れ方を話し込み、木戸のことをしばらく忘れていた。三崎は通りの向こうから、その時間を邪魔せずに見守った。

帰り際、澪は店先で東雲を見かけた。男は茶葉の包みを一つ買い、代金を払っている。三崎が挨拶すると、東雲は木戸へ一度だけ視線を向けた。「今日は、通る人がいません」。それ以上は語らず、紙袋を持って歩き去った。

店へ来た常連客は、三崎たちが何者か知らずに新茶の味を尋ねてきた。宮野はいつもどおり茶葉を量り、急須の扱いを教えた。澪はその説明を聞き、湯の温度で香りが変わることを初めて知った。怪異のない話題を同じ場で楽しめることが、茶舗を訪ねる理由の一つになっていた。

澪は追わなかった。宮野が次の客を迎える声が店から聞こえ、木戸には夕日の細い影が落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。