一人を迎える橋
木戸の近くで、昔の迎え番に関する説明を聞くため、島岡が東部支所を訪れた。文具店の臨時休業を一日だけ決め、電車を乗り継いで来たという。井波は会議室へ茶を用意し、話せる範囲だけでいいと伝えた。
島岡は二十年前の任務について、初めて四人目が別の道を使った理由を語った。「木戸へ入る人が三人なら、戻ってきた人を受け取る者が要る」。迎えの男は怪異に詳しくなく、普通の地元住民だったらしい。
三崎が何を受け取ったのか尋ねると、島岡は紙袋を見せた。中には何も入っていない。「その時は空でした。でも戻ったあと、重くなった」。袋を開ける前に怖くなり、誰にも見せず燃やしたという。
澪は話を聞きながら、紙袋の話が今までの報告書にないことを確かめた。島岡は記載することに同意したが、『重くなった』理由は自分にも分からないと念を押した。紙袋が何かを受け取ったと決めつけるのは避けてほしいという。
会議が終わると、島岡は支所の売店で鉛筆を買った。文具店を営む者として、別の店の品を試してみたかったらしい。三崎はその普通の好奇心に少し笑った。
島岡の紙袋の話を聞いたあと、澪は封印とは関係のない質問を一つした。文具店は今、どのくらい忙しいのか。島岡は新学期前には一日中レジを離れられないと笑った。彼を二十年前の任務だけに縛り付けたくなかった。井波は面談の時間を短くし、最終の電車へ間に合うよう資料をまとめた。
帰りの切符は井波が時刻を確認していた。
島岡は帰る前、澪に言った。「あの男が無事だったかだけは、ずっと気になっている」。誰の名前も出せないまま、問いが一つ残された。




