休暇の土産
三日ぶりに出勤した相良は、休暇先で買った小さな菓子箱を休憩室へ置いた。森崎は礼を言いながら、橋の監視記録を差し出した。相良はすぐ開こうとしたが、三崎に止められた。「まず荷物を置け」。相良は苦笑して椅子へ座った。
休暇の間、橋脚下の音に大きな変化はなかった。案内板の修理は終わり、配達員への通行案内も滞りなく続いた。相良は安心した。自分の不在で困らなかったことを、寂しがる理由はなかった。
菓子は人数より二つ多かった。井波が箱を分けようとすると、相良は受付の二人へ渡してほしいと頼んだ。現場へ出ない職員も、夜中の連絡を受けて報告書を回している。支所が動くには、その仕事が要る。
午後、相良は橋の写真を一枚ずつ見た。森崎の作った記録は分かりやすく、異常がなかった日も丁寧に残されている。相良は今後の標準様式として使えるよう、本人に同意を求めた。
鷲尾は菓子を二つ食べようとして奈央に止められた。休憩室で小さな笑いが起こり、遠くの電話が鳴る。井波は席を立ち、いつもの声で名乗った。
相良が持ち帰った菓子の箱には、旅行先の古い橋が描かれていた。鷲尾は偶然だと笑い、奈央は相良らしい土産だと言った。相良自身は橋を選んだつもりはなく、店で勧められたものを買っただけだった。全員が同じものを見ても、それぞれ違う理由で笑える時間があった。
休暇中に見た海の写真も一枚あった。相良は鷲尾へ見せたが、仕事の資料にはしなかった。楽しい旅をしたというだけの写真だった。
窓の向こうでは、川の水位がゆっくり下がっていた。相良は湯を飲み終えてから、橋へ向かう鞄の留め具を確かめた。




