第5話「冒険者登録」
※長編作品です
「セラ様!おかえりなさい!」
「セラ様ー!」
エルナリアは瞬きを繰り返す。セラと共に門の中に入ると、そこには大勢の民衆が歓声と共に鐘の音で出迎えたのだ。
「ふふっ、元気そうでなによりだわ」
「……これは、もしやお師匠様は人々から人気なのですか?」
「この光景を見てそうじゃないと言えるかしら?」
得意そうに鼻を鳴らす。道はセラのために開かれ、さながら勇者の凱旋のようだ。悠々と歩くセラの背を少し気まずそうに追いかける。
「星法の涙師……?」
「エルちゃん……それをどこで知ったの?」
ちらりと盗み見ると、恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「いえ、ちらほらとその呼び名が聞こえてきたので―お師匠様は元冒険者で2つ名がつくほど有名だったのですね?」
「有名……えぇ、少しだけね。何十年も前に引退したのにこうやって慕ってくれるのはそれだけ私達の功績が語り継がれてるのかしら……気恥しいわね」
「興味があります、一体どのような功績を……?」
「魔物に囲まれていたこの街を救っただけ……しかも結構前に……だからこうやって子供も私の名を呼んでるのは不思議で仕方ないのよね……」
「伝説は語り継がれる―正にその通りですね」
「あら、それは私のことを言ってるの?」
セラはその場に立ち止まる。
エルナリアも遅れて立ち止まると、上にある看板を見上げた。
「冒険者支部……ここですね」
「えぇ、行くわよ」
セラは躊躇いなく目の前の扉を開く。
「―元冒険者セラ、帰ってきたわよ!」
そう高らかに言うと、飲み食いしていた冒険者達は動きを止め……水を打ったように静まり返る。
「―セ、セラ……」
「セラさん……」
―次の瞬間、嵐のような歓声と拍手、笑い声が鼓膜を破りそうなほど場に響いたのだ。
「セラーーー!」
「帰っきたのかー!」
ワーッと盛り上がり、ほぼ全員がセラに群がる。
完全に蚊帳の外となったエルナリアは軽くため息をつくと周りを見渡した。
(……ここが冒険者支部……まるで酒場のようですね)
ふと目に止まったのは、カウンターの向こうでニコニコと肘をつきながら集団を見つめている女の人だった。
(あの人が受付の人っぽいですね……今のうちに終わらせましょう)
歩いている途中、後ろを振り返りセラを見る。
すると、セラはそれに気づき軽くウィンクを返してきたのだ。
(なるほど、お師匠様はこの時間を作ってくれたのですね)
前に向き直り受付の元まで向かうと、女性はヒラヒラと手を振る。
「ようこそ〜テビア街冒険者支部へ。お嬢さん、もしかしてセラちゃんの娘?」
「全く違います。セラ様はお師匠様です」
「なら、冒険者登録かな?」
「はい」
受付の女性は机の下から紙を引っ張り出すと、それをエルナリアに差し出す。
「これに名前と職種を書いてね〜」
(……名前、これは流石にフルネームは要りませんよね……職種は……魔法系―)
「エル……ナリアちゃんね、エルちゃんって呼ぶからよろしく〜」
「お師匠様と被ってますが大丈夫ですか?」
「あー……それはダメだね、ならリアちゃんって呼ぶから、あたしのことは気軽にアッちゃんって呼んでよ」
「アッちゃん……」
「そ、アッちゃん」
受付の女性―アッちゃんは印鑑を押すと、その紙を持って背後の扉に消えていく。
「ちょっと待っててね〜」
近くの椅子に座り、背後の喧騒に耳を澄ませる。
「もうさ、もうさ!セラったら何で急にいなくなったのさ〜!」
「秘密ね〜」
「ケチさ、本当にケチなんだ!」
「あらあら、全く変わらないんだから―」
―「おまたせ〜リアちゃんは無事に冒険者になったよ〜」
そう言ってカードを渡される。
それを受け取ると、エルナリアはバッグに閉まった。
「ありがとうございます。ところで質問があるのですが……」
「……なにー?」
「精霊使いの検査と魔力の検査はどこで出来るのですか?」
「どっちもここで出来るけど、精霊検査は予約でいっぱいだね、魔力検査はすぐここで、今すぐに出来るよ―この機械でね」
アッちゃんはその機械とやらに片腕を乗せてニヤリと笑う。
「どうする?」
「やらせて下さい」
「よぉし、ならこの機械の中にある宝珠に息を吹き込んで〜」
「それだけですか?」
「魔力の質と量は比例するんだよ〜つまり、質を検査するだけで量が分かるって訳」
「それは画期的なことで……」
息を吹き込む……すると、数秒もしないうちに色が変化した。
「これは珍しい、真っ白だね」
「どういう意味でしょうか?」
「ん〜とね、」
―魔力の質は宝珠に息を吹き込むことで分かるようになっている。
穢れなき白に近ければ近いほど魔力の質は極限にいい、それは即ち魔力量が平均より大幅に多いことを示す。
その白に穢れである黒が入るにつれて魔力の質は低下する。
「―あ、見っけ。黒いのあった」
「えぇっと、それはつまり魔力量は平均より多めという解釈で構いませんか?」
「待って待って、機械が今判断してるから…………よし、コレ見て」
渡された紙には『S』と書いてあり、エルナリアは首を傾げる。
―魔力量にはランクがついている。
上から順に
―S+―S―A+―A―B―C―D―E
となる。
「平均が大体Cだから、リアちゃんは多め。平均よりも大分多い、というかめっちゃ多いって感じかな」
「具体的に例を示すとどうなりますか?」
「んー……え、結構難しいこと言うね……ちょっと待ってねー……」
「―簡単でしょ?それはつまり、水たまりが平均だとしたらエルちゃんは湖ぐらいってことよ!」
「―お師匠様……!」
セラはエルナリアの肩に手を置き、挑発的な笑みを浮かべながらアッちゃんに言った。
「はい、私の勝ちね」
「セラちゃんったら私の言いたいことをすぐに言おうとするんだから」
「今のは完全に迷ってたわ!私が助け舟を出したのよ、感謝して欲しいわね」
「お師匠様、ここに来て大丈夫なのですか?」
「うん、皆と話せたから満足よ!」
少しお酒が入っているのだろうか、口調がいつもと違うようだ。
「それよりも、アッちゃん!精霊検査させてよ、お願い!」
「それをあたしに言われてもね……まぁ一応支部長に聞いておく、けどあんまり期待しないでね」
「ありがとねー!大好きよ、アッちゃん!」
アッちゃんは背後の扉に消えた。
セラはエルナリアの隣に座るとジョッキに酒を注いで飲み始める。
「検査できますかね……?」
「出来るけど、きっとしばらくはこの街に留まっていないといけないわね、それが条件になるだろうから」
「分かるんですか?」
「支部長とは長い付き合いだから、それに……」
目が合う。
「エルちゃんを手放したくないだろうね……なんとかしてこの街に留めようとするはずだから、まぁ気楽に行こう!」
―思ったよりもベロベロだ、あの清楚な魔法使いはどこに行ってしまったのか……きっと辺りを探しても居ないだろう。残念な目でセラを見つめる。
「安心してね、エルちゃん!いざとなればこの街から出ていかざるをえない理由を作っちゃえばいいんだから!あの一味を使ってね!」
「グラナディスです……」
エルナリアは、セラの言わんとしていることを理解し―曖昧に笑った。
『救済の運命が開花しますように』
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