第4話「崩壊を呼ぶ者」
※長編作品です
「おかえり、エルちゃん―どうだった?」
「2冊の魔法書がわたくしを選んでくれましたよ」
そう言って腕を上げて腕輪を見せる。
「2冊なんてラッキーね!もう契約したかしら?」
「お師匠様に教えて貰います、どのようにして契約するのですか?」
「名前をつけてあげたらいいのよ、そしたら心の中で名前をつぶやくだけで勝手に現れるんだから」
エルナリアは頷くと、外に出ようとする。
「外に行くの?」
「―名前をしっかりと考えたいので、外で少し……」
「あまり小屋から離れないようにね?結界から出るとあの一味が一気に襲ってくるかもしれないから」
「肝に銘じます」
―そう言って外に出た。
まだ日は高いからお昼時だろうか。爽やかに風が吹き……とても居心地がいい。
(名前……そう言えば、わたくしの庭園によく遊びに来ていた双子の子猫がいましたね……結局、名前もつけずに居なくなってしまいましたが)
近くに座ると目を瞑る。
(わたくしと、契約して頂けませんか?攻撃用魔法書様にはノワール……支援用魔法書様にはリワール……どうでしょう?)
ふと腕が軽くなっていることに気づいた。
目を開くと2冊の魔法書がページを開いて宙に浮いていたのだ。
「こちらがノワール様、こちらがリワール様ですね」
心の中で感謝を伝え、戻って欲しい主旨を伝えると一瞬で消え、腕輪に戻っていた。
(ノワール様、お願いします)
心の中で唱えると一瞬で現れて既にページを開いている。
「状況に合わせて適時開いてくださるんですね。―では、言います……―アクア!」
視線の先に水鉄砲のようなものが飛んでいく。エルナリアは満足そうに頷いた。
(視線の先に魔法は現れるようですね……!)
そこでふと疑問に思う。
(魔法の種類を増やすためには成長する必要があると言っていましたが、具体的にどうやって成長したらいいのでしょうか?それと、わたくしの魔力量がどれくらいか知ることは出来ないのでしょうか?)
―コンコンコン
音に気づいて目を向ける。どうやら、結界外からの客人のようだ。すると金髪の女性と目が合う。
「やっほーそこのお嬢さん、私の所に来ない?」
そう明るく言うと、もう1度叩く。
―コンコンコン
「誰でしょうか?」
少し離れながら言うと、女性は悩む素振りを一瞬だけ見せ、笑った。
「セラの親友!―今セラがどう思ってるかは知らないけどね!」
「……セラ様の親友なのは分かりましたが……」
女性の腕で存在感を主張する紋章を見て、エルナリアは後ずさる。
「何故その紋章を……?」
「……あんまりね、事を荒立てたくないの……セラにだって知られたくない……穏便に攫わせてくれない?お願いだから!!」
エルナリアは首を振って否定した後、首を傾げて問う。
「ひとつ聞きたいことがあるのですが、組織に名前はあるのですか?」
「……ん?もちろん、というか今まで狙われてて分からなかった?皆名乗ってなかった?」
「誰も名乗りませんでした……なので、あの一味と言うようにしています」
「正式名称はグラナディス、『崩壊を呼ぶ者』っていう意味だから!これからはグラナディスって呼ぶようにしてね!」
「グラナディス……覚えましたので、少し待っててくださいね」
エルナリアは慎重に小屋のドアに近づいて、セラを呼ぼうとドアを開こうとした。
「ま、待って!」
そう言われ、女性の方を見た瞬間―空気が大きく揺れる。
なんと、その女性は背負っていた大剣を横一閃に振ったかと思うと結界と小屋を横半分に綺麗に切ってしまったのだ。
エルナリアは何とかペンダントのおかげで無傷だが、セラは―。
「ちょっと!なにこれっ!」
悲痛の叫びが聞こえた。
どうやら無事なようで、エルナリアは安堵のため息をつく。
―バチンッ!
女性は急接近し、エルナリアに手を伸ばしたが―神紫石の力によって弾き返される。
それと同時にエルナリアを守るように新たな結界が張られたため、女性は迂闊に手を出せなくなった。
「これ、思ったよりも痛いじゃん!私ですら手を出せないなんて―っと、セラが出てくる!じゃあね、愛しのエルちゃん!」
―風のように消え去った。
「これがなかったらわたくしは一刀両断でした……本当にわたくしの生死はどうでもいいのですね」
「―もう、エルちゃん!どんな魔法を使ったの!こんなになるなんてびっくりだわ!」
「えっ!ち、違います!わたくしではありません!」
どうやらやらかしたのは全てエルナリアだと思っているようで怒り浸透の様子。これはダメだとさっきまでの経緯を説明した。
「……大剣を背中に抱えた快活な金髪の女性、ね……幹部の1人と見てもいいわ……ねぇ、エルちゃん。提案があるんだけど」
「……やはり、弁償ですか……?わたくしはこういうのはきっちりグラナディスに請求すべきだと思います。この光景を写真に収め、その女性を問い詰めたらいいと思うのです」
うんうんと頷きながら言うと、セラは笑いながら首を振る。
「違うわよ!エルちゃんの旅に同行させて欲しいって提案してるの!」
「えっ?それはもちろん、大歓迎ですよ!ですが、理由を聞いても?」
「その女性のことが妙に気にかかるの―あとは、会って色々問い詰めないとね」
寂しげに笑ったような気がした。
エルナリアはそれに気づかぬフリをして微笑む。
「これからどうします?」
「それはもちろん、街に行って冒険者登録をして―稼いで旅をするのよ。エルちゃんは運がいいわ、私がいることでたっくさん得をするんだから!」
「とりあえず今から行きましょうか、魔力と精霊使いの検査、成長の仕方を知りたいです」
「2人で頑張りましょうね、エルちゃん!」
「よろしくお願いします、お師匠様」
『救済の運命が開花しますように』
豆知識
コンコンコン、と何度も叩くのは結界の強度を確かめてます。
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