第2話「神紫石」
※長編作品です
2人は向かい合うように再度座ると、エルナリアは自らのペンダントを外してテーブルの上にそっと置いた。
「最初にわたくしが話そうとしたことも、あの一味による行為も、全てこの―神紫石が関係しているのです」
エルナリアは視線を下げ、美しく光を反射する紫の宝石を見つめる。
「待って、まず最初エルちゃんが話そうとしたのは戦う術についてよね?それがこの神紫石とやらに関係があるの?本当に?」
エルナリアは頷くと、神紫石を指先で軽く叩く。
「―まずはこれに、触ってもらえませんか?」
セラは緊張した面持ちでゆっくりと手を伸ばし、指先で軽くつついたが―何も起こらなかった。
その様子に、エルナリアは少し安堵した表情を浮かべる。
「神紫石に触る際、熱くはありませんでしたか?」
「そんなことはなかったけど……」
「実は、悪意ある人が神紫石に触ると……まるで炎に直接手を触れたような火傷が出来るのです」
「―心配するのも分かるわ、私を試したのよね?」
「何も言わずに試して申し訳ありません、これから話すことはわたくしの安全にも関わることなのです」
セラは目を細めると微かに頷く。それを見たエルナリアは微笑むと胸元に片手を当てた。
「改めて自己紹介しますね。
わたくしはオリヴィアス王国の継承権第一席を賜る第一王女、エルナリア・イーツ・オリヴィアス。王国内で起きた侵略行為により危機が迫っていた時、両親がわたくしを逃がしたのです」
「……」
「その時、両親は言いました。この神紫石は謎が多いが決して裏切りはしない、帝国に向かい……封印された書物で謎を解き明かしなさい……と。ですが、わたくしはその言葉は道に迷わせないための遺言に過ぎないということは分かっているのです」
「……エルちゃんのご両親は優しいのね」
「自慢の両親でした。目的の無い彷徨う旅より目的のある芯ある旅をして欲しかったのでしょう―この神紫石はわたくしが何もしなくても身を守ってくれるのです。謎はまだたくさんあるようですが、今はそれだけしか知りません」
セラはペンダントを手に取ると、観察するようにじっと眺める。
「これを身につけて旅をしたら魔物に襲われても大丈夫ってことなのね……」
「はい、そうなります。ですが、万が一ペンダントを盗まれた場合……わたくしは何も為す術がありません」
「―刻まれてる紋章は?」
「オリヴィアス王家の紋章です」
「あの一味がこれを狙うなんて、よっぽど凄いものなんじゃないかしら?」
エルナリアは悩むように首を傾げる。
「わたくしには分かりません。ただ身を守ってくれるペンダント……という認識しかありませんので」
「いっその事渡すとか?」
冗談交じりに呟くと、エルナリアは微笑む。
「もちろん、わたくしも試しましたよ。だって命最優先ですから―ですが、1日経つと手元に戻ってきていたのです。それからは厄介なことに、わたくしも狙ってくるようになりまして、どうしたらよいのかと考えています」
「あら?でも悪意ある者が触ると大火傷するんでしょう?どうやって持って行ったのかしら?」
「あの一味は特殊な手袋をつけていました。どうやら炎に耐性を持つようですね」
セラはテーブルの上にペンダントを置き直すと、身を乗り出して言う。
「それじゃ、エルちゃんはこれからどうするの?」
「え、あ……街に行こうと思います、そこで情報収集と共に身を守るために鍛えつつ、旅をしようと思います」
「それならエルちゃん、魔法を習いたくない?」
「えっ?」
セラは椅子に座り直すと、コホンと咳払いをした。
「これでもね、私は数いる魔法使いの中でも結構強い方なの。それに、見た所適正もあるようだし―どうかしら?」
「それはとてもありがたい申し出なのですが、セラ様は大丈夫なのですか?」
「もしかして、あの一味がまた襲ってくるかもって?」
「はい」
「ふふっ、それなら安心して?既にここ一帯には結界を張ったから、あの程度の敵ならすぐ消えるわ」
「―では……その、少しの間ですがよろしくお願いします」
「交渉成立ね!私のことは師匠って呼んでちょうだい!何か質問はあるかしら?」
「―まず、魔法とは何ですか?」
セラは立ち上がると、外に出るドアに向かう。
「付いてきて」
そう言って外に出たセラを追いかけるように、エルナリアも同じように外に出た。
「魔法を使う人は主にニ種類に分けられるの。精霊使いと魔法使いよ」
「驚きました、この世界に精霊が存在するのですか?」
「そうよ、でも精霊使いは滅多に居ないわね。契約できる人は限られてるから」
「それならば魔法使いはどうなのでしょう?」
「活躍する人は多いわよ、大半は冒険者になるわ」
「ぼうけんしゃ?」
「あらあらあら、エルちゃんはかわいいわね―後で世界について書かれている書物をあげるわ、そこで大まかに知りたいことは知ることが出来るから。ちなみに、その書物は私が書いたから嘘はないわよ」
「ありがとうございます!」
「それにしても困ったわねぇ……思ったよりもエルちゃんは世間に疎いみたいだわ」
エルナリアは恥ずかしそうに目を伏せた。
「その、あまり知りたいとは思わなくて……普通に過ごしているだけで幸せでしたから……」
「ふふっ、いいのよ。教えがいがあってこれからが楽しみだわ」
……
エルナリアはその夜、セラに渡された書物を机の上で広げていた。
『冒険者について』
―まずは冒険者について説明するわね!
冒険者は依頼を受けて報酬を貰う立派な職業!
各国には支部があって、本部は地図の中央にある小島にあるわ!
冒険者にはランクがあって、上から
S級―A級―B級―C級―D級―E級
S級
1人で国家軍隊並の実力を持つ、一騎当千の素晴らしい人よ!本部には数人、支部には1人いるかいないかのどちらかね!
A級
1人で精鋭小隊並の実力を持つ、皆が目指すクラスね!このクラスまでは国や貴族から直々に指名されたり依頼が来るわよ!
B級
1人で街を守れるほどの実力を持つ、街の人気者ね!ギルドではここのクラスの人達が多ければ強いってイメージがあるようだわ!
C級
1人で町を守れるほどの実力を持つ、力自慢の人達ね!ここからダンジョンに挑めるようになるわよ!冒険者として稼ぎたい人達はまずはここを目指すわ!
D級
1人で魔物に挑めるほどの実力を持つ、一般人よりも強い人たちね!基本的にはパーティを組んで依頼に挑戦することが多いわ!
E級
このクラスは一般人レベルね!まず冒険者になるにあたってこのクラスから始まるわ!依頼をこなして、クラス昇格を目指すのよ!
まずは冒険者支部に向かって、受付人に言うのよ!冒険者になりたい主旨を言うことで書類を書いて、カード発行―そしたら冒険者になれるの。
そのカードは冒険者としてとても大事な物、もし持ってなかったら冒険者として扱われないから注意してね!
次に職種。
冒険者になるにあたって、必ず『職種』が必要よ。これは併用も可能ね
戦闘系―魔法系―支援系―探索支援系―特殊系
これらの中から選べばいいわ、剣士なら戦闘系、治癒士なら支援系……のようにね。
『冒険職業……(魔法使いと精霊使いについて)』
魔法使いと精霊使いについて説明するわ!
まずは魔法使いよ。
魔法使いは主に二種類に分けるの。
―魔法書を用いながら戦う人『魔導師』
…詠唱を行うことで行わない人よりも高い威力を出せるわ。メリットは威力が高くてイメージ力が要らないこと、それに加えて魔法書が状況に合わせた魔法のページを開いてくれるから便利よ。
デメリットは多めに魔力を食うこと、それと成長しないと魔法の種類が増えない事ね。
大体の人は魔導師を選ぶわ、だって戦闘の際に一々イメージして魔法を扱うなんて面倒だから!
魔法書にも種類があるって知ってるかしら?
―攻撃用魔法書―支援用魔法書―
魔法書が契約者を選ぶんだけど、基本1冊ね。もし2冊に選ばれたらラッキーって思えばいいわ。
攻撃もできて守護もできる、攻守両立は素晴らしいわね!
―自らのイメージで戦う人『魔法師』
…魔法師は想像力がいるわ、それと咄嗟の判断力も必要ね!
メリットは魔法の消費を極限に減らせる、それと自分のイメージで戦えるから戦闘がとても楽しくなる!
威力は低くなるけどそれは応用次第でどうにでもなるわね!
デメリットは戦闘中頭をたくさん使うから疲れるわ!
ベテランさんが多いわね、魔導師に慣れたから魔法師をやってみようって人がたくさん!でも命を落とす人が多いからそこには気をつけてね!
―精霊使いについて
……精霊使いは選ばれた人だけが扱えるの。精霊召喚陣で祈りを捧げて反応があれば適性あり、なければ適性無し……簡単よね。もし適性があって召喚出来たらあとは契約。それからは精霊使いとして活躍できるわ!
希少な存在故に国からも重宝されて金に困ることはまずないわね……!
でもだからこそ奴隷商人に狙われやすくて危険な職業よ、そこは気をつけてほしいわ!
もし適性があるかどうか知りたい場合は、冒険者支部か神殿で、その主旨を言えばさせてくれるわ。ただたくさんいるから予約がおすすめよ―といっても予約できるかは運次第ね!
どう?分かったかしら?
魔法使いも精霊使いも適性が必要だけど、もし適性があったら是非選んで欲しいわ!
適性があるかどうか調べるためには指先に水滴をイメージしてみて!出なかったら残念だけど適性はないわね、ちゃんとした方法で調べたいなら冒険者支部で言えば調べてくれるからおすすめよ!
それじゃあ、次の本で会いましょうね!
―読み終わり本を閉じる。つづいてもう1冊の本を手に取った。
―『女神創紀』
それは世界に命が無かった時、現れた一粒の光……
始原の女神アストリアの創世の物語
『救済の運命が開花しますように』
ー
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